2022年1月26日 (水)

第124回「海程香川」句会(2022.01.15)

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事前投句参加者の一句

                        
狼ト娘スクラムスクランブル 藤川 宏樹
轍残る秩父往還寒の雨 大西 健司
十六夜や君の横顔美しと見し 佐藤 稚鬼
夕霙まだ伸びしろのあったはず 松本 勇二
春風や檻に千里の虎の夢 松岡 早苗
コロナ禍の風に飽いたり初着物 中野 佑海
お正月俺はイヌだと悩む犬 鈴木 幸江
ガス燈に雪舞ふ影は待ちぼうけ 増田 天志
雪庇父の書架には父の跡 福井 明子
身の内の轍は消えず阪神忌 若森 京子
哀愁の昭和ブルース冬銀河 植松 まめ
懐かしき赤い鳥なる女の子 中村 セミ
娘の添いて父の髭剃る漱石忌 吉田亜紀子
惚というまぶしき一語鳥渡る 野田 信章
「ひとりはいい」嘯く母の雪催い 滝澤 泰斗
白南天この世のものとして産湯 伏   兎
冬晴れや笑顔のままのデスマスク 小山やす子
私から私を引いて冬夕焼け 野口思づゑ
冬の芽のとっぺん吾は鬼っ子 伊藤  幸
限りなくプアよ自由よ寒鴉 豊原 清明
気立てという美しき言の葉冬日向 新野 祐子
補聴器の調整室や街師走 山本 弥生
新年の設計図焼くオミクロン 川崎千鶴子
画用紙に太き直線年始め 重松 敬子
石臼の番して永遠越冬者亡母 すずき穂波
二杯目の珈琲冬を深めけり 柴田 清子
朝の雪音を吸ひ込み蒼きまま 佐藤 仁美
散骨の海辺遠くに焚火ある 榎本 祐子
寒茜人恋しさの引火点 山下 一夫
廃船の朽ちゆく運河冬の雨 稲   暁
家重くなり底冷えの掃除機 久保 智恵
廃仏毀釈のおしくらまんじゅう 荒井まり子
言の葉の雫あつめて初茜 三好三香穂
梅固しサッカー少年走る奔る 高橋 晴子
母の歳二十も超えて日向ぼこ 寺町志津子
古本に赤線多ししずり雪 飯土井志乃
八頭未来のわたし座してをり 稲葉 千尋
比叡に飛雪迦陵頻伽の声がする 樽谷 宗寛
雪女おまえ薄情で美しい 島田 章平
木を抱いて欝の冬本に抱かれけり 淡路 放生
濡れてゐる白き兎を森に返す 小西 瞬夏
円空仏の微笑をもらう雪道来て 津田 将也
いもやしもやけやきいもかゆい 田中アパート
おばあちゃんになっちゃってまあ冬の滝 桂  凜火
回文を唱へて眠る二日かな 野澤 隆夫
向き合うて今年はじまる遺影かな 谷  孝江
いい人と言われて日暮や藪柑子 増田 暁子
束の間の陽にさんざめく寒雀 田中 怜子
雪を踏むわたしの中の子どもたち 夏谷 胡桃
取説を読まぬ女の年新た 塩野 正春
ドレス焼く少女せつせつと脱皮する 十河 宣洋
風花やわが存在の頼りなさ 銀   次
蜜柑剥く重要なのは車坐です 河田 清峰
母に逢う七種粥の明るさの 月野ぽぽな
初雪や人のつくりし魔よけ札 菅原 春み
行進曲の手拍子そろう明の春 松本美智子
折紙でつくれぬものに秋の風 男波 弘志
忘れない冬の菫と生きた人 河野 志保
冬木洩れ日の紙飛行機に母がいた 竹本  仰
凍蝶や曲がりくねった国境 石井 はな
人待ちの冷たき石を離れをり 亀山祐美子
木枯しが呼び捨てにする影の僕 高木 水志
鬼遊び冬木は息を継ぐところ 三枝みずほ
女郎蜘蛛にゆくてはばまれつつあるく  兵頭 薔薇
玄白の腑分けのように冬の虹 佐孝 石画
寒晴れや家族の中にいる孤独 藤田 乙女
餡雑煮讃岐に生きし日本史  漆原 義典
オリオンの終着駅から赤ん坊 野﨑 憲子

句会の窓

松本 勇二

特選句「母に逢う七草粥の明るさの」。七種粥に明るさを見た感覚の冴えや凄し。倒置法も決まっている。

小西 瞬夏

特選句「画用紙に太き直線年始め」。シンプルであるゆえの力強さ。これから何かが始まる予感。ミニマルアートのようで、ここから読者の創造力が無限に広がります。

増田 天志

特選句「濡れてゐる白き兎を森に返す」。 哀切の情あふれ抱き締める因幡の素兎。ボエジ―だなあ。

福井 明子

特選句「散骨の海辺遠くに焚火ある」。生き死にの目線が熱く深いです。彼方へのまなざしに祈りと願いを感じます。特選句「ショパニスト反田の髭や漱石忌(吉田亜紀子)」。ショパンコンクール2位の、あの若き反田恭平さんの容貌が目に浮かびます。そしてなぜか、漱石忌がしっくり馴染んでいます。

塩野 正春

特選句(特選中の特選)「折紙でつくれぬものに秋の風」。秋風は気持ちいいですね。一度折ってみたい気持ちよくわかります。特選句「ドレス焼く少女せつせつと脱皮する」。ドレスの着替えで脱皮を表現するのは初めて見ました。ただ女性向きの句かな? 男性の脱皮は有るのかな?問題句「散骨の海辺遠くに焚火ある」。散骨の風景、ちょっと寂しいし寒い海。そこに焚火があると温もりが伝わります。この風景どこかで見たような、見ないような。散骨されたのはご自身でしょうか?

正月に久保智恵さんと若森京子先生宅に伺ったところ、三人で俳句をしようということになりました。面白いですね。しかも師匠が一緒ですから勉強になります。そこで野﨑様が代表をされている「海程香川」を紹介されました。野﨑さんのお名前は三田の句会で存じ上げていましたので親近感があり、しかも香川県の句会ということで即入会を決意しました。香川県はうどんだけでなく、おそらく藩の移動(国替え)とかで東北とも交流があって、武士の奥様達、女房たちが味を伝えた・・と聞いています。懐かしい味が残っています。そんなわけで、俳句もさることながら機会を見つけて訪れたいと思っています。 

若森 京子

特選句「廃仏毀釈のおしくらまんじゅう」。明治初年の仏像排撃運動とおしくらまんじゅうとのからみ合いが上手い。字足らずの流れもこの最短詩の中に人間同志の複雑怪奇なからみを見る。特選句「ドレス焼く少女せつせつと脱皮する」。蝶の脱皮の様に見事に美しく成長する少女。しかしそれ迄の過程として「ドレス焼く」の措辞が色々な想像をかきたてる、「せつせつ」も効いている。

稲葉 千尋

特選句「身の内の轍は消えず阪神気忌」。あれから何年たつのだろう小生の胸も覚えているあの揺れ、轍は消えません。特選句「冬晴れや笑顔のままのデスマスク」。私の見たデスマスクは憲兵に拷問されて死んだ人の写真でした。笑顔のデスマスクが見たいです。♡オミクロン株凄い勢いですね、又句会が中止に!あきらめですね。寒さに負けずカラ元気で行きましょう。

小山やす子

特選句「向き合うて今年はじまる遺影かな」。私の夫もさよならも言えず12月に他界しました。この句に出会って遺影であることの悔しさが身にしみました。→ 心からご冥福をお祈り申し上げます。コロナが収まり暖かくなったらまた徳島から句会においでください。お待ちしています。

田中 怜子

特選句「比叡に飛雪迦陵頻伽の声がする」。あの比叡延暦寺は雪に包まれ人気がない。耳をすますと雪の精のごとく迦陵頻伽の声が。美しいですね。そのような世界に身を浸したいですね。普段でも、意識的に耳を澄ますとひそやかな生き物の声が聞こえてきますね。

樽谷 宗寛

特選句「身の内の轍は消えず阪神気忌」。忘れることの出来ない阪神忌。主人の実家の家が倒壊しました。現地に行くと微震が続き無表情の人達、いまも脳裏にこびりついています。お作者の思いがひしひしと伝わってきました。

夏谷 胡桃

特選句「コロナ禍の風に飽いたり初着物」。本当ですね。おしゃれしてお出かけしたいです。風がまた強くなってきました。風はコロナと世間の風潮を表しているのでしょうか。特選「補聴器の調整室や街師走」。聞えないというのは孤独になります。だんだん耳が遠くなり、家族の会話にも入れない。町の喧騒も聞こえない。心の中でお喋りしているようです。

鈴木 幸江

特選句評「娘の添いて父の髭剃る漱石忌」。句に漱石が登場すれば子規との出会いを思わずにはいられない。この頃人生誰と出会うかが、勝負だとよく思う。そして、漱石にはなぜか、鏡の裏側のようだが家族の温みがよく似合う。私も入院中のまるで子どものようになった父の髭を剃ったことがある。漱石の髭が父親の象徴のように目に浮かんだ。

佐孝 石画

特選句「私から私を引いて冬夕焼け」。「私から私を引くと」いうこの発想と表現は初見だ。茫然自失という言葉はあるが、私からわたしを引いて残るものは「無」。冬夕焼けの美しさに打ちのめされ、胸奥に潜む様々な面影が霧消していく。冬夕焼けに包まれ同化していく「放心」の風景を、実に柔らかくポップに仕上げた名句だと思う。

津田 将也

特選句「夕霙まだ伸びしろのあったはず」。霙は、雪が空中でとけて半ば雨のようになって降る状態のもの。特に夕べの降霙(こうえい)は、この地域が限定的だ。霙が降ったことを持ち出し、話題にしても、時には否定されることがある。主眼は、この霙の様子を見るにつけ「まだ伸びしろがあったはず」などと、作者が、「伸びしろ」に着目したことだ。特選句「八頭未来のわたし座してをり」。八頭(やつがしら)は、里芋のこと。茎の地中部が肥大して塊茎(かいけい)となり、これを掘り上げ煮て食べる。作者は、たぶん女性であろう。、肥満化した自分の先の姿を八頭に見越し見ているのだ。余計だが、茎も食べられるが、昔は、芋茎(ずいき)と呼ばれ廓(くるわ)の性具としても重宝された。特に、肥後芋茎が有名だ。

菅原 春み

特選句「新藁へ横たひ逝けり被曝牛(稲葉千尋)」。痛ましい句。せめても最後に新藁へ横たわれたことが救いなのでしょうか? これも人の作ったもので被曝した健気な牛の句です。特選句「白南天この世のものとして産湯」。この世に生まれてはじめて体感する産湯。白南天の白が活きています。無垢で清楚な命。

中野 佑海

特選句『「ひとりはいい」嘯く母の雪催い』。一人は寂しい。だけど、一人は自由で気楽。本音を言ってしまえない母の心模様。特選句「朝の雪音を吸い込み蒼きまま」。雪が蒼いのは地面に捨てられた音達の鎮魂歌だつたんですね。「断腸の海より一転の初日」。いったいどんな悲しい事があったのですか?年が変わって良い一年になってくれることを海よ叶えておくれ。「絞首刑いい湯極楽北一輝」。毎夜のいい湯は本当に極楽。ただ楽しみも過ぎると一変桑原桑原。「夕霙まだ伸びしろのあったはず」。夕方の霙には遭いたくございません。まだ、諦めないで踏ん張って。「白南天この世のものとして産湯」。この世のものとなるために産湯を使っているのですね。聖なる冠とるために。「火の鳥の匂いの夕日紙風船」。夕日は実は火の鳥に拾われた可哀相な紙風船だったんですか。「私から私を引いて冬夕焼け」。私の抜け殻を探しています。「自らを厚く纏ってクリスマス」。かと思ったら今度は色んな自分を拾って来て忙しい事だね。脱いだり着たり。「二杯目の珈琲冬を深めけり」。珈琲を二杯飲んだら、やっと人心地がついて、本当の自分に戻れたよ。♡今月も面白いけど難しさも抜群。

大西 健司

特選句「寒晴や家族の中にいる孤独」。家族の関係が希薄になりつつあるこの頃、家庭でも孤独を覚える。ましてやコロナ禍のいまは特に深刻である。晴れたわたる空が限りなく冷たい。

月野ぽぽな

特選句「木枯しが呼び捨てにする影の僕」。「木枯しが呼び捨てにする」の詩的表現が、木枯しとの豊かな関係・・・厳しくも親しい関係・・・を示唆すると共に「影の僕」は「光の僕」を予感させ、木枯しの持つ巨大なエネルギーも手伝って、大きな根元的な場所へ向かう内面からの強い力・・生命を感じます。♡新年のお慶びを申し上げます。海程香川新句会、読み応えのある句が満載でとても楽しかったです。いつもありがとうございます。2022年が憲子さんそしてご参加の皆様にとって健やかで幸せな年になりますようお祈りいたします。→ありがとうございます。ぽぽなさんにとりましても、幸せの光に包まれた一年になりますように心からお祈り申し上げます。

淡路 放生

特選句「向き合うて今年はじまる遺影かな」。うっかりすると読み落してしまいそうだが、しみじみいい句だと思う。「向き合って」と言う動作から一気に、遺影と作者を淑気にまで持っていった。新年のことほぎを感じられる。「ひいらぎの花や宅急便に印」。「宅急便」に印を押す日常が「ひいらぎの花」によって、さり気ないときめきのようなものも句に表現されている。「娘の添いて父の髭剃る漱石忌」。昭和の家庭の一場面であろう。「漱石忌」がいい。有名な漱石の写真が目に浮かぶ。インテリで頑固で優しくて・・・。娘と父だけでなくそれを見守る私(妻)までキチンと詠まれている。「二杯目の珈琲冬を深めけり」。「二杯目の」この一語によってコーヒーの黒くて深い味わいと、しずかに立ち上る湯気に音楽を聴いているような至福を感じる。そう思わすのは、「冬」であろう。「鬼遊び冬木は息を継ぐところ」。「鬼遊び」が一瞬「冬木の息を継ぐところ」を納得させてくれる。幼児の遊びでもいいし、男女のイタヅラでもいい。

すずき穂波

特選句「寒茜人恋しさの引火点」。寒茜、人恋、引火点と、絵柄的、心理的にどちらもぴしっと決まっている句で頂きました。ちょっと決まり過ぎ?予定調和?という声も聞こえそうですが・・・礼儀正しい句も拝見したく特選です。

柴田 清子

特選句「初日待つようにわたしの日も来るか(淡路放生)」。今年一年、神頼みではなく、自分らしくいる事が出来るか、どうかくり返し問い迷う作者に、ほんの少しの初日が差すことを願いたくなる。自分に読み手に語りかけるような、呟きのような淡い佳句である。特選句「雪を踏むわたしの中の子どもたち」。雪踏みの雪遊びの子供達の存在の表わし方が特異であることに、魅せられました。「わたしの中の子どもたち」が、読み手の心の中で生々としています。

十河 宣洋

特選句「雪女おまえ薄情で美しい」。北海道は雪女の出るかもしれないシーズン。こういう女性は魅力的である。一夜の出会いならという気分がある。特選句「鬼遊び冬木は息を継ぐところ」。 鬼ごっことは限らないが、鬼遊びの途中の一息。追いかけられている者、追う者の目の中にある一つのポイントである。メルヘンの気分があり楽しい。

川崎千鶴子

特選句「木を抱いて欝の冬木に抱かれけり」。もしかしたら亡くなられたらリュウジさんのお句かと思いました。間違いでしたらお許し下さい。つくづく凍り付く内容だと思います。「初春寄席のビラがはためく枯野駅」。初春寄席のビラがはためく枯野は荒寥感に満ちている。素晴らしいです。

佐藤 稚鬼

特選句「画用紙に太き直線年始め」。これは好きですね。単純明快だけど、年始めの新たな気持をシンプルな直線が言い切っている。

藤川 宏樹

特選句「玄白の腑分けのように冬の虹」。一読で「玄白の腑分け」に掴まれた、腑分けのような虹って?そして玄は黒、「玄白」は言わば「黒白」。腑分けの肉の鮮やかな赤と抜ける冬空の虹。天上の虹の軽さと腑分けの肉の重量感とは決して似つかわしくないが、それだけによけい印象的な句になった。

男波 弘志

「惚というまぶしき一語鳥渡る」。おおらかなエロスが飛翔している。人間はもっと正直にならねがならない。正直さとは社会性以前の自己存在の謂いである。「濡れている白き兎を森に返す」。   手に負えぬものは全て造花に委ねるべきであろう。兎にエロスがあるとは誰も気が付いていないことだろう。そこに新しみの花がある。「忘れない冬の菫と生きた人」。冬、そこに一切が包蔵されている。一点の灯り、それを頼りに誰もが生きている。もうここには居ない人なのだろう。冬の菫になってしまったのか。いづれも秀作です。宜しくお願い致します。

松岡 早苗

特選句「冬の芽のとっぺん吾は鬼っ子」。冬木の芽は黙って寒さに耐え、来たるべき春の芽吹きや若葉の茂りのためのエネルギーをしっかり蓄えている。ありのままの自分を受け止めてもらえず叱られてばかりの子どもは、自分は鬼っ子かと時に悲しくもなるが、冬木の芽のように自分らしさを着実に蓄え、やがてみごとな花を咲かせるのだろう。理解してもらえない孤独の中にも成長や希望を感じさせる「冬の芽」の好配がしみじみと心にしみる。特選句「鬼遊び冬木は息を継ぐところ」。冬でも元気に走り回っていた子どもの頃を思い出した。はあはあ息を吐きながら冬木にタッチして、その表面の冷たさも、内側の温もりも瞬時に吸収していたような気がする。寒さの中、冬木の瑞々しい生命や温かさが伝わってきて好きな句。

寺町志津子

特選句「轍残る秩父往還寒の雨」。一読、兜太師への思いがふつふつと蘇りました。兜太師が歩まれた俳句道。兜太師の力強い背も見えるようで、その轍を真摯にたどっていかなければと、決意を新にさせられる句です。

桂  凜火

特選句「火の鳥の匂いの夕日紙風船(十河宣洋)」。すこし怖いような 不吉なような「火の鳥の匂いのする」美しい風景の毒に紙風船の頼りなさがよくあっていて心惹かれました。

高木 水志

特選句「白南天この世のものとして産湯」。生まれたばかりの赤ちゃんの表情が仏様のように感じる。白南天を取り合わせたことで、赤ちゃんの周りにたくさんの人も愛しく思えて大きな愛を感じた。

野口思づゑ

特選句「初雪や人のつくりし魔よけ札」。そういえばその通りです。でも神様から授かったように大切にするのは、幸いな事なのでしょう。

滝澤 泰斗

特選句(二句)「新藁へ横たひ逝けり被曝牛」。戦争を体験した人達がどんどん減って行く。実際の戦争を体験した人の言葉ほど説得力があるものはないが・・・その人たちが消えてゆく。ならば、戦争を知らない第二次世代は、戦争を体験した人達が語った言葉をどのように残し伝えてゆくか。掲句はその状況にあった人の句として受け取るが、仮にそうではなくても、こういう句は貴重な句として注目する想いで特選とした。「身の内の轍は消えず阪神忌」。あの時の地震が起きてから27年目の1月17日が来る。災害を詠った作品もしっかり残し、後世に伝えてゆくべきものと思う。共鳴句「冬山の箴言白く白く遠く」。冬山に限らず、夏山もたくさんの言葉を示唆してくれますが冬山の厳しさには敵わない。遭難した、植村直己さん、森田勝さん、長谷川恒男さん、そして、近くは、2018年35歳で亡くなった栗城史多(くりきのぶかず)さん等が遺した言葉はまさに箴言だが・・・遠い遠い冬山の雪面に無垢な言葉で残っている。「ドレス焼く少女せつせつと脱皮する」。成長過程の表現はいろいろあると思うが、ドレス焼くは新鮮。「正論は未だ苦手雪国に雪ふる」。勝手な解釈だが、何かの事情で雪国へ赴任したか、転勤してきたか、はたまた結婚したか・・・しかし、なかなか雪国の正論とやらに慣れないでいる。様々な物語が想起でき楽しい一句ながら、その陰もまた・・・。「引き留める阿修羅の目線雪が降る」。こんな感覚、阿修羅の目線に確かにあるなと・・・引き止められたり、押されたり。「寒晴れや家族の中にいる孤独」。人間はなかなか厄介な生き物。世界が広くなるほどに孤独を意識するものだが、人間関係の最小単位「家族」にあっても、「自分」という本質的な孤独を感じる事はままある。

野田 信章

特選句「木を抱いて欝の冬木に抱かれけり」。「木を抱いて」には人と木との相性の然らしめる親近感がある。そこのところを軽く反転させて見せる手際のよさに現代的な諧謔性を覚える。人としてのわが内なる鬱との交感あっての一句として読める。なお、句の底には生気を秘めた樹霊の本姿が踏まえられている一句として読みたい。

三枝みずほ

特選句「母に逢う七種粥の明るさの」。七種粥の明るさの中に母への想いがあふれている。普段無意識な感情や想いが何かのきっかけで浮かび上がる。その瞬間を捉えており共鳴した。問題句「木を抱いて欝の冬木に抱かれけり」。例えば、この句にゴッホの≪刈り込んだ柳のある道≫の世界観を感じるのだが、鬱をことばにしてしまうと単語で終わってしまわないだろうか。その内実に迫っているか、大いに考えさせられた魅力的な一句。

野澤 隆夫

特選句「限りなくプアよ自由よ寒鴉」。鴉への作者の賛辞、オマージュかと。プアではあるが自由だと!面白いです。特選句「玄白の腑分けのように冬の虹」。岩波文庫の短編、菊池寛の「蘭学事始」を思い出しました。冬の虹に肺だ、脾臓だ、五臓六腑だと指し示す作者が絵になります!

飯土井志乃

特選句『「ひとりはいい」嘯く母の雪催い』。人生の表裏をそれなりに経験されて来られたであろう母上の言葉の裏に感応し嘯く母を感じられた作者のそこはかとない淋しさを背景の雪催いが包み込む。

吉田亜紀子

特選句「雪庇父の書架には父の跡」。「雪庇」とは、雪の積もった屋根から雪がせり出したもの、または、山の急な傾斜面にできる雪の庇のことを指す。私は雪国出身ではないので、誤りがあるかもしれないが、この句の「雪庇」は、今はもう家主のいない家の屋根ではないかと感じた。この「雪庇」は、除雪をしなければ、どんどんと大きくなってしまうとか。危なくて暗い。そんな雪が積もった家に入ると、父の書斎がある。父の書架がある。それはとても確実で、父好みの本がきっちりと並べられている。父の気配も空気もまざまざと感じる。しかしながら、入院などされ別のところで暮らされているのであろう。「雪庇」という言葉で少し暗さを感じ、「父の跡」で、その場所にいない父の存在の大きさを私は感じました。特選句「新年の設計図焼くオミクロン」。変異ウイルスオミクロン株への嘆きや怒りがスッキリと表現されている。「設計図」は、土木・建築・工事・機械製作などの計画にとどまらない。生活の設計図もある。旅行や行事などといったあらゆるものが、この変異ウイルスによって振り回されている。「焼く」と表現されたところに強い怒りが一気に噴き出されており、清々しさも感じられた一句でした。

久保 智恵

特選句「忘れない冬の菫と生きた人」「玄白の腑分けのように冬の虹」。二句共に、心の底に沁みた句です。好きな句です。

伏   兎

特選句「おばあちゃんになっちゃってまあ冬の滝」。水が涸れ、岩が顕になった寒々しい滝に、自らを投影しているのかも知れない。シリアスな内容だけれど、口語体にしているところが救い。特選句「取説を読まぬ女の年新た」。文章がやたらと長く、おまけに文字が小さい。そんな説明書を無視し、自分流に家電を使い、ボヤいている姿が浮かび、共感。入選句「私から私を引いて冬夕焼け」。 言葉のひねりが若々しい、魅力的な境涯句。入選句「八頭未来のわたし座してをり」。子孫繁栄の願いが込められた正月野菜、八頭をうまく表現している。

山本 弥生

特選句「木枯しが呼び捨てにする影の僕」。自分の名前を呼び捨てにしてくれた親族や幼友達も鬼籍の人となり変って木枯しが影の自分を身内の如く呼び捨てにして励ましてくれた。

豊原 清明

特選句「<細谷喨喨氏の誕生日に>良き女友達のいて出羽人よ淑気かな(田中怜子)」。今、個人的に女友達を求めていることもあり、女友達の淑気に惹かれました。個人的寂しい孤島から一票。問題句「気立てという美しき言の葉冬日向」。「気立てという美しき言の葉」に惹かれました。言葉は女性的?ことばは女性的?どっちかな?漢字なのか?ひらがなか?言の葉だから、どっちもこの作者にとっては気立ての良い女性なのだろうと読む。

石井 はな

特選句「身の内の轍は消えず阪神忌」。消えない心の傷とか思いとかは、ふとした時に顕わになる事が有ります。この方は阪神大震災で辛い思いをなさったのでしょうか。

植松 まめ

特選句「補聴器の調整室や街師走」。耳の不自由だった義母も補聴器の不具合で雑音が入るとよくお店に行った。この句雑音が溢れる師走の街と補聴器の調整をする室、いい題材と思う私にとっては苦労の多かったであろう姑を思い出させる句だ。特選句「寒晴れや家族の中にいる孤独」。 この歳になるとこの気持ちが分かる。家族が居ても仲が善くても、ふと感じる孤独。若い頃にはなかった感情だ。季語の寒晴れが効いている。

漆原 義典

特選句『「ひとりはいい」嘯く母の雪催い』。私の母は1月16日が命日で、三回忌を執り行い母を偲びました。私は母の句が好きでよく詠みます。ひとりはいい、いつも強がりを言っていた母と重なりました。心にしみる句をありがとうございます。

伊藤  幸

特選句「白南天この世のものとして産湯」。新春早々とこの世に生を受けた赤子を詠った句であろうか。新型コロナ等々数々の問題を抱えたままの令和四年ではあるが、寅年の強い生命をフルに発揮して新しい未来に大きく羽ばたいて欲しいと心から願う。縁起が良く薬用としても用いられる白南天のみずみずしさが掲句を引き立てている。特選句「餡雑煮讃岐に生きし日本史」。吾が郷土では雑煮は醤油仕立てであるが餡雑煮も悪くない、雑煮を食しつつわずかながらも日本の歴史の一ページを創っているのだという実感、作者の自負そして郷土人としての誇りが伝わってくる。絶えず努力を惜しまず日々を懸命に生きている作者だからこそできる句であろう。

新野 祐子

特選句「木を抱いて欝の冬木に抱かれけり」。抱いて、そして抱かれる、それも欝の木に。今まで感じたことのない不可思議な境地にいざなわれました。入選句「円空仏の微笑をもらう雪道来て」。「雪道来て」が決まっています。問題句「ショパニスト反田の髭や漱石忌」。一月四日の朝日新聞に、反田恭平さんのインタビュー記事が載り、大変興味深く読みました。そして反田さんに魅かれました。作者に、なぜ漱石さんなのか、お聞きしたいです。

作者の吉田亜紀子さんから・・質問を頂けるとは嬉しいです。句の理由の件ですが、夏目漱石の髭が気になって、調べておりました。たまたま、ショパニストの反田恭平さんのピアノがテレビで流れていて、艶っぽいなぁと手を止めて聞き惚れていました。反田さんも、髭を生やしています。漱石とは違う髭です。カイゼル髭は、漱石の時代に流行りました。反田さんの髭も、カイゼル髭とまでの目立つ特徴のある髭ではないですが、今の時代に似合う髭で、小説と音楽との違いはあれど、どちらも艶があり、魅力的だなぁと感嘆し、この句となりました。

増田 暁子

特選句「円空仏の微笑をもらう雪道来て」。雪道での円空仏の微笑み 厳しさの中に出逢う微笑みに感動しました。特選句「裸木に聞かされている物語(柴田清子)」。裸木が語るのは若芽からの物語なのか、木の周りの人間の物語なのか。実は裸木は老いた人間なのか、思い巡らす句ですね。「凍蝶乾く太陽は低きまま」。下5の低きままが凍蝶に戻りますね。「夕霙まだ伸びしろのあったはず」。中7下5の伸びしろのあったはずで、霙の雨でも雪でもない状態がぴったりです。『「ひとりはいい」嘯く母の雪催い』。寂しさ、いたわりが伝わります。「濡れてゐる白き兎を森に返す」。句の情景が浮かび、童話の世界のようで好きです。「指添わす父のぐい呑み闇深雪」。お父さんのぐい飲みで飲んでいる作者。父恋いの思いが伝わります。「木枯しが呼び捨てにする影の僕」。僕の影に惹かれます。僕では無いのですね。

河田 清峰

特選句「八頭未来のわたし坐してをり」。八頭に自分の姿をみているのが面白い。

河野 志保

特選句「折紙でつくれぬものに秋の風」。独特の視点に引き込まれ納得。「秋の風」だからこその一句だと思う。

谷  孝江

今月の特選句は、「私から私を引いて冬夕焼け」です。一読どきりとさせられました。齢を重ねる度引き算ばかりが多くなりました。作者はまだ「冬夕焼」という美しいものをお持ちです。羨ましいです。だれしもが一つづつ齢を重ねてゆくのです。恥ずかしい事ではないのです。身の回りの美しいものを見付けて楽しく生きてゆくことは大切なことと教えて頂きました。ありがとうございます。

竹本  仰

特選句「私から私を引いて冬夕焼け」。私って何だろう?そこから発した句であろうか。私がこの世からいなくなって、どうなんだろう?という問い。「〽アカシアの雨がやむ時…」的な。そんなことは縁起でもない?葛原妙子に〈他界より眺めてあらばしづかなる的となるべきゆふぐれの水〉という名歌があります。これと近い所に立ったものかと思います。もしこの世から私がいなくなったとしたら、その後には夕焼けはもっと奇麗なんではなかろうか?〈見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ〉きっといい夕焼けなんでしょうね。その心根が憎いと思わせる句でありました。特選句「向き合うて今年はじまる遺影かな」。何かとてもうらやましい。そこまで対話ができるということが。常々思うことだが、遺影は変化する。それはない、という方は、大きな見落としがある。日々変化する私たちに見られる遺影が変化しないはずはない。そのあたりをきちんととらえられている方ではなかろうか。古代ギリシャには2つの時間のとらえ方があったという。単純にすすむ戻らない時間クロノスとピンポイントで何度も帰ることのできる時間カイロスと。この句はカイロスの句かと思う。こうありたいものだと思った。特選句「鬼遊び冬木は息を継ぐところ」。冬木の役割を遺憾なくとらえている。この鬼ごっこでは、鬼となっても、鬼に追われるものとなっても、冬木のもとでなら、素顔との接点を持てる。これは、冬木なら風よけともなり、つねに安らぐことのできるはぐくみの場であり、けものがけものとしての存在を獲得できる場であるからだ。そういうところが見事に見出されている。何なんだろう、この接点は。とても面白い句であると思った。以上です。

このところ、とても忙しく、とうとう今年は年賀状の返信を見送ることになりそうです。もし、該当の方がおられましたら、申し訳ありません。あー、生きるってめんどくせー、というような自分がいますが、まあ、そんな自分とうまく付き合うしかないのでしょう。どうか、本年もよろしくお願いいたします。

藤田 乙女

特選句「抱きしめてほしいみつめる冬の鹿(夏谷胡桃)」。孤独な魂と温もりを求める心の叫びがひしひし伝わってくる句でした。とても共感しました。

重松 敬子

特選句「気立てという美しき言の葉冬日向」。その通りですね。褒め言葉として余りつかわれなくなりましたが、時代が変化しても、人の本質はあまり変わらない。気持ちのいい句だと思います。

荒井まり子

特選句「いもやしもやけやきいもかゆい」。二物衝撃の面白さと、表記の楽しさ。

山下 一夫

特選句「一汁一菜キラキラと冬の肉体(若森京子)」。粗食である一汁一菜からの飛躍が心地よいです。いろいろに読み様があるでしょうが、年配者が若い人の体を賛美している構図が浮かびます。特選句「裸木に聞かされている物語」。裸木に人格を感じるのは類型的かと思いますが、聞かされていると踏み込んでこられているところに新鮮味を感じました。ちょっと耳が痛いところのある物語なのかな どと想像が膨らみます。問題句「正論は未だ苦手雪国に雪降る(伊藤 幸)」。後句は前句の実例でウイットやイロニーが効いていて好きです。ただ二十音でリズムに難があるのが惜しい気がします。正論は苦手なり雪国に雪、というのは・・言わずもがなの正論ですか。「家重くなり底冷えの掃除機」。底冷えの日は床に粘りついているような寒気を掃除機で吸い取ってしまいたくなります。「梅固しサッカー少年走る奔る」。上五はまだ固い梅のつぼみということでしょうか。サッカーボールとシンクロし、エネルギー無限将来性無限の少年の暗喩とも。

亀山祐美子

より心情的なものが横たわる一句を選びました。内省的で静かなマグマを憤りを感じました。特選句「梅固しサッカー少年走る奔る」。には未来を感じました。梅の固さとサッカー少年の情熱の呼応を勢い付ける「走る」「奔る」の漢字の使い分け上手い一句です。 皆様の句評楽しみにしております。

中村 セミ

特選句「濡れている白き兎を森に返す」。僕がこんな詩を、書くとしたら、ひとつの何か大事な事が終わった時、したかった仕事をやめざるを得なくなった時、こう言う事を心の整理のひとつとして、書くように思う。もう森に返してやろうと、それでいいんだ。そう言うように強く切なく思うだろう。

佐藤 仁美

特選句「寒空にイルカ跳ねたりみな笑う(野田信章)」。寒空の中、演技させられているイルカ。その演技を見て、喜ぶ私達。私も楽しんでいる側でした。ドキッとしました。特選句「気立てという美しき言の葉冬日向」。「気立て」という言葉を久しぶりに見ました。私達は、美しい言葉をたくさん持っていますね。美しい言葉、美しい心、時々は触れたいものです。

榎本 祐子

特選句「白南天この世のものとして産湯」。誕生とともに世界を賜る赤子。生まれ落ちた宿命をも感じさせる。白南天の白と産湯が響き合い、無垢な命を寿いでいる。

田中アパート

特選句「家重くなり底冷えの掃除機」。情に訴えることなく即物表現。問題句「雪女おまえ薄情で美しい」。雪女は薄情なのか。雪女を抱きよせたのか。雪女と共に死ぬもよろしいかと。

高橋 晴子

特選句「オリオンの終着駅から赤ん坊」。オリオン、執着駅、赤ん坊、何か今から始まるものを予感させ面白い発想。

稲   暁

特選句「お正月俺はイヌだと悩む犬」。そんな事もあるかも知れないと思わせるユーモラスな一句。不思議な可笑しさに強く惹かれた。

松本美智子

特選句「木枯しが呼び捨てにする影の僕」。木枯らしの吹きすさぶ音の激しさを「呼び捨てにする」としたところがおもしろいと思いました。「影の僕」と木枯らしやそこにあるだろう枯れ木などと対比されて心細さを表現されていると感じました。

三好三香穂

特選句「断腸の海より一転の初日(島田章平)」。昨年は何かあって、マイナスの決断をした。さあ、心機一転、初日を拝み、新たな年へと突入。ダイナミックにして潔い句。

野﨑 憲子

特選句「舞い降りて生きよ生きよと冬の蝶(小山やす子)」。まるで亡き人が冬蝶になって、現世の恋人の前に現れたような一句。兜太先生は、他界と現世は繋がっている、魂は死なない。と話されていました。恋人の分も逞しく生きて行ってください。特選句「忘れない冬の菫と生きた人」。淡々と書かれているが、「冬の菫」が眼目。「冬すみれ」には、一面の枯野のなかで健気に咲き、宇宙と交信しているような不思議な雰囲気がある。「生きた人」にリアリティ有り。冬菫のような佳人が見えて来る。。問題句「いもやしもやけやきいもかゆい」。平仮名表記で余計に痒そうに見える。面白すぎて気になる作品。♡ コロナ第六波襲来で、感染者が激増し、遠出のままならない生活が続いています。厳しい寒さの中、体調不良の方が何人かいらっしゃいます。皆様、御身くれぐれも大切にご自愛ください。♡ 庭の梅の花も一輪一輪と花を咲かせています。春は、そこまで来ています。句会は、言の葉の「お祭り」です。皆様の毎月のご投句を糧に、一回一回の句会を大切に、より熱くふかく渦巻いてまいります。♡「たかが句会、されど句会!」最小単位の句会だからこそできる大いなる何かがあると強く感じています。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。皆さま、ますますのお元気を‼  

(一部省略、原文通り)

袋回し句会

ゲーム
火葬場の時わかち合うゲームなり
淡路 放生
かたちよきをのこ火をとこ福笑ひ
藤川 宏樹
紅白
紅白にマツケンサンバ強炭酸
藤川 宏樹
紅白の餅色ものより食いにけり
佐藤 稚鬼
地軸
マスク下げ思い切り吸う地軸
藤川 宏樹
火の鳥や地軸の傾きで笑ふ
野﨑 憲子
春よ来い地軸伸び切ったところから
柴田 清子
七階の畳の部屋に鮫待たす
柴田 清子
星の眼のらんらんとあり鮫泳ぐ
野﨑 憲子
補陀落渡海に鮫いる冬スミレ
淡路 放生
小正月
小正月昭和一桁生まれです
柴田 清子
どん底を蹴飛ばしてゆく小正月
野﨑 憲子
女正月漬物石を両手で持つ
淡路 放生
自由題
言の葉は神の手のひら初句会
野﨑 憲子
風花を踊って渡る河口の橋
淡路 放生
どこに居るんだあの寒雷の赤き眼の
野﨑 憲子
水鳥は水の都合を熟知して
柴田 清子

【通信欄】&【句会メモ】

◆訃報◆本会のメンバーだった小宮豊和さんが、かねてより病気療養中のところ、昨年12月28日、82歳で永眠されました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。一昨年、「海程香川」発足10周年記念アンソロジー『青むまで』の企画にご参加くださり、「太平洋戦争幻視」の名吟を発表してくださったのが昨日のことのようです。あの時も、ご自身の俳句への熱き想い、そして拘りに、深く敬服し憧れました。群馬県在住だった小宮さんとは「海程」秩父俳句道場でよくお目にかかっていました。ご子息様一家と生活する為に高松へ転居され、2017年4月第72回句会より高松での句会にご参加くださっていました。これからは、金子兜太先生のお傍で、他界句会のメンバーとして活躍されると存じます。「海程香川」も他界句会に負けないよう頑張ります。    合掌

再びのコロナ感染者急増の中、サンポートホール高松へ猛者7名が集い句会を開催しました。直前までうなぎ登りの感染者数を睨み開催の有無を思案していました。事前投句の合評も、袋回し句会も熱く楽しい時間でした。因みに、袋回し句会に関しましては作者の意向で不掲載の句が多々あります。句会の連衆のみぞ知る・・です。(^_-)-☆  次回が、今から楽しみです。

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