2023年10月25日 (水)

第144回「海程香川」句会(2023.10.14)

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事前投句参加者の一句

選ばなかったオムレツの味人の秋 岡田 奈々
うなだれし喪服の姉や萩の雨 菅原 春み
唇は新酒の雫追ひかける 川本 一葉
そぞろ寒つい軽い嘘のつもりって何 桂  凜火
秋高し供華満載の島渡船 河田 清峰
コスモスや国境といふ導火線 岡田ミツヒロ
食細き猫の瞳や秋淋し 植松 まめ
星月夜プァオーと一声終電車 吉田 和恵
ぽぽと打ちぽぽと山彦をみなへし 佳   凛
曼珠沙華負けず遅れず彼岸花 時田 幻椏
別れ道鰯雲にも夜が来て 河野 志保
千々灯は宇宙の流灯紅葉す 十河 宣洋
針一本の乱れなき今日の月 川崎千鶴子
月もまた人に踏まれり吞んで寝る 銀   次
自分より飛び出す他人流れ星 野口思づゑ
敗戦と父言わざりきその墓洗う 野田 信章
地球時計屋なら虹のふもとだよ 三枝みずほ
化粧水しんなりなじむ今朝の秋 丸亀葉七子
雁渡る日やいつになく朦朧体 若森 京子
亀虫とわたし深夜のエレヴェーター 重松 敬子
青春の「あとがき」ばかり辿る秋 山下 一夫
探しものの途中かりがねに夢中 榎本 祐子
古バナナ父の父の父破れ襖 豊原 清明
<天龍寺にて>火の玉が飛び交わすかに秋あかね 田中 怜子
虫時雨足から石になりにけり 亀山祐美子
空よりも大地の好きな小鳥来る 藤田 乙女
いつのまに振り向くならい小鳥来る 新野 祐子
ほーほっほほー夜長のコタンコロカムイ 島田 章平
供物桃「海軍二等軍楽兵」 藤川 宏樹
さまざまな死因へそっと月が出る 松本 勇二
ためらいはいちじくの青妬心なお 大西 健司
深酒をして虫売りの鼾かな 津田 将也
満月の老斑ならむうさぎ逃ぐ 鈴木 幸江
みんな善人毬栗のとげとげにぶつかる すずき穂波
秋光やいつも前から来るチャンス 山田 哲夫
栗飯炊く調整終えし入歯かな 山本 弥生
鉄橋に焔の記憶まんじゆしやげ あずお玲子
さりげないピアスの奥の大花野 伊藤  幸
花なるや草にすがれる空蝉は 疋田恵美子
名月や白くなりいて西に去ぬ 三好三香穂
街角の黒板アート小鳥来る 柾木はつ子
整然と棚田にモザイク青田風 佐藤 稚鬼
霧の彫刻空へ緑へ土へ 薫   香
鶏頭に飛びつく光濡れていた 高木 水志
またや見んつまづかぬやう大花野 荒井まり子
間違ってゐるならごめん吾亦紅 柴田 清子
敗戦を終戦とうそぶく「神の国」 田中アパート
寝違えた梟そういえば居る 三好つや子
月白やひとに水面のありにけり 佐孝 石画
秋の夜の画集に蒼き馬眠る 稲   暁
侵略や見渡す限りカンナ燃ゆ 石井 はな
茄子の馬鏡に近くなりにけり 男波 弘志
にんげんは二度死ぬらしい秋薔薇 向井 桐華
八月の空や舞い散る願い事 小山やす子
実を地中に隠す忍術落花生 漆原 義典
肌寒し影とぶつかる叫びかな 竹本  仰
座禅組む先ずどくだみの近づきぬ 飯土井志乃
秋の朝城主に三毛を迎えをり 佐藤 仁美
プロポーズ成功しそうスーパームーン 松本美智子
今もゲルニカ愚かな戰の牛馬の叫び 増田 暁子
青滲む異国の切手小鳥来る 大浦ともこ
たまねぎや死は終わりじゃない周作忌 福井 明子
あのチーム蝉の権化の18年 塩野 正春
草を刈る無冠の力ありにけり 稲葉 千尋
赤とんぼ父の遺品にハーモニカ 増田 天志
綿菓子の雲繋がりし秋の暮 中村 セミ
十月ノフリコメサギノデンワキレ 淡路 放生
夕映えや溶け合うように河鹿鳴く 樽谷 宗寛
トルーマンのサル呼ばわりニッポンそぞろ寒 滝澤 泰斗
白湯飲んで体すみずみ月あかり 月野ぽぽな
繊月やデートリッヒの残像か 森本由美子
アトリエに転ぶ檸檬の青き影 風   子
十月や森の匂ひの頁閉づ 松岡 早苗
秋昼の木を積む遊び果てしなく 小西 瞬夏
釣瓶落し海を呑み干す赤ん坊 野﨑 憲子

句会の窓

増田 天志

特選句「肌寒し影とぶつかる叫びかな」。説明的な句には、詩情が、乏しい。この句には、意外性が、ある。読者も、想像力を働かせ、参加したいのだ。

小西 瞬夏

特選句「十月や森の匂ひの頁閉づ」。十月のある一日、森で読書をしたのだろうか。それとも家にいても、その本を閉じるとき森を感じたのだろうか。どんな本なのか、今の心の内はどうなのだろうかなど、想像が膨らみ、この一句の世界に浸っていた。

松本 勇二

特選句「秋光やいつも前から来るチャンス」。チャンスの来る方向を言い定めて皆を納得させた。真っ向からくるチャンスを受け止める人の幸と、見送る人のゆるやかな人生を思わせる。特選句「秋桜日にち薬は空から来(すずき穂波)」。日にち薬はどこから来るのか。思いも寄らぬところからやってきた。季語も良い。

風   子

特選句「秋光やいつも前から来るチャンス」。そうか、チャンスは前から来るのか。前を見て逃さぬように、と思うけどぼんやりの私には無理か。「コスモスや国境といふ導火線」。本当に国境が難しい。「秋の日の青年櫂に雲を掬ふ」。青年だから雲を掬う。若さだなぁ。

十河 宣洋

特選句「雁渡る日やいつになく朦朧体」。いつもと違う自分を感じている。晩秋の寂しいような気分が自分にも空の雁にも感じている。特選句「プロポーズ成功しそうスーパームーン」。スーパームーンに出合った。その気分のいい時間。これは今日のプロポーズが上手くいきそう。心弾むときである。結果を知りたい。問題句「トルーマンのサル呼ばわりニッポンそぞろ寒」。問題句ではないが問題。まだこのことを知っている人がいたかと思った。すべての始まりはこの思想の底にあるものから始まった。

岡田 奈々

特選句「釣瓶落し海を飲み干す赤ん坊」。スケールでか。こんな子供待っています。 特選句「さりげないピアスの奥の大花野」。ピアスの穴は花野のメビウスの輪の一部。ピアスの穴の中を覗いてみたい。「そぞろ寒つい軽い嘘のつもりって何」。嘘に軽い重いはありません。「つい」が余計腹が立つ。ぷんぷん。人を馬鹿にして。「月光や河原の石が語り出す」。月の灯りは全ての物に妖しく不可思議な力を授けるのです。「針一本の乱れなき今日の月」。本当に綺麗な仲秋の名月。「自分より飛び出す他人流れ星」。私と関わっている人は私の中を流れ彷徨う星のよう。回って来たと思うと去っていく。「釣瓶落し静かに響く地球かな(漆原義典)」。釣瓶落としは耳に聞こえ無いけれど、私達の心に感動という波動を伝えているのですね?「月白やひとに水面のありにけり」。白く輝く月光は間違いなく人の感銘という鏡に水を湛えます。「芒野や相思相愛というまぼろし」。相思相愛なんて、描いた餅。机上の空論。「白湯飲んで体すみずみ月あかり」。白湯は体に凄く良いと聞いています。月の女神の化身とか。以上。

樽谷 宗寛

特選句「コスモスや国境といふ導火線」。止まない戦。国境といい導火線が心に刺さります。コスモスが色を添え、安らぎを頂けました。コスモスのような世界がはやく天地に訪れますように。

塩野 正春

特選句「コスモスや国境といふ導火線」。人間の性か神の仕業か戦争が頻繁に起こっていますね。しかもその多くが国境をめぐっての争い。目には見えない国境もあり、国民を守るようでいて攻撃の対象にもなる。国が変われば言葉もかわる、文化も変わる。宗教も。それらがいずれも紛争の導火線とは・・コスモスよこの素晴らしい地球を守り給え。特選句「空よりも大地の好きな小鳥来る」。 私たち人間から見れば煩雑な地上よりも広大な空にあこがれます。ところが小鳥たちにはそうでない。空は単なる通行の手段で、エサが多い、人間が多い地上がいいらしい。戦争も気象変動もなんのその、電線に停まってピーチクパーチクしゃべりあってる。ほんとの平和を感じさせる。

月野ぽぽな

特選句「さまざまな死因へそっと月が出る」。生きとし生けるものに必ず訪れる死。死に目を向けることはつまり生に目を向けることになります。死、というだけでは見えず、死因、ということでその生の姿が想像できることに気づかされました。一読、人間を思いますが、読むうちに、犬や猫や馬や牛、鳥や魚や虫、といった動物の姿も見えてきます。そっと月が出る、の表現から、どのような道を生きるどんな命にも注がれている大いなる慈悲、宇宙の摂理を感じました。

三枝みずほ

特選句「白湯飲んで体すみずみ月あかり」。月あかりが浸透していく体へ白湯が心をほぐしてゆくのだろう。そして月は傷を癒し命を繋いでいる。

豊原 清明

特選句「ぽぽと打ちぽぽと山彦をみなへし」。二枚の句会の原稿を読み、今月はこれが良いと思います。分かりやすくていいなと思わされます。問題句「夕映えや溶け合うように河鹿鳴く」。夕焼けではなくて、「夕映えや」が印象に、残りました。河鹿の声が聞いたことがない、物知らずの我を恥じる。

疋田恵美子

特選句「さりげないピアスの奥の大花野(伊藤 幸)」。奥の大花野、成る程登山者はこの景に出会うことで山の虜になります。「にっぽん百名山」を楽しみにみています。若者のさりげないピアスいいですね。特選句「愚も鈍も隔世遺伝もみじもみじ」。隔世遺伝が良い。娘の子供の頃と、息子の孫がそっくり内心とても嬉しいです。

藤川 宏樹

特選句「プロポーズ成功しそうスーパームーン」。プロポーズ、確かに成功しそうですね。・・・来世は告るスーパームーンの下・・・羨望のマドンナゲットに挑みましょう、次の世で。

柴田 清子

特選句「ためらいはいちじくの青妬心なお」。心中のどうしょうもない迷いを、無花果の青をもって一句にしている所、特選です。特選句「寝違えた梟そういえば居る」。この梟今一つ理解に苦しんだが、特選を外すわけにはいかない。私には、魅力ある一句です。梟です。

川本 一葉

特選句『青春の「あとがき」ばかり辿る秋』。秋という季節と、青春が遠い現在、あとがきと辿るという表現に膝を打ちました。年取ると答え合わせのように解決できたりできなかったり。時間はとても優しいものです。反省とも後悔とも違うこの微妙な感情。とても素敵な句です。ありがとうございました、と思わず言ってしまいます。

若森 京子

特選句「草を刈る無冠の力ありにけり」。長い人生において無冠の力が99%だと思う。草を刈る行為を無冠の力と表現した上手さに感心した。特選句「繊月やデートリッヒの残像か」。繊月の繊細な少しエキセントリックな光と形象を懐かしい女優デートリッヒとした喩の感性に惹かれた。

滝澤 泰斗

特選句「釣瓶落し海を呑み干す赤ん坊」。海なし県で生まれ育った私が始めた見た海に沈む夕陽は新潟県の鯨波・・・それ以降、海に沈む夕景が好きになり、折々にその夕景の中に身を沈めた。夕景の句は数多あるが海を呑み干す赤ん坊とは、斬新。特選句『青春の「あとがき」ばかり辿る秋』。古稀を越え、7回目の干支を過ぎると、若いころ、ちょうど、学校を卒業したあたりの事がしきりに思い出される・・・秋はまたそんな思いに添うにはピッタリの季節。私の「あとがき」は、後悔しきりな話と若気の至りの恥ずかしい思いばかりだが、新鮮に受け止められた。「コスモスや国境といふ導火線」「鉄橋に焔の記憶まんじゆしやげ」。仕事柄、イスラエルやウクライナを旅してきた。有刺鉄線の軍事境界線に平行して造られた哨戒道路の一触即発の緊張。ヨルダンとイスラエルの国境のアレンビーブリッジは侵入を防ぐためのアップダウンにうねる道の高台で銃眼がこちらを狙っている恐怖を味わいながら・・・そんな道すがらに野のユリは何もなかったように風に戦いでいる。「今もゲルニカ愚かな戰の牛馬の叫び」。東京駅丸の内側北口のOAZO(オアゾ)に原寸の「ゲルニカ」がある。その向かいのスタバは家路につく前のクーリングダウンの場所だ。しばし、お茶を飲みながら思うのは、戦乱止まない愚かな人間の営み・・・戦争。「アトリエに転ぶ檸檬の青き影」。今月は句に即発された思い出が蘇った句が多かった。南フランスのエクサン・プロヴァンスには、セザンヌのアトリエがある。宗左近氏の名著「私の西欧美術ガイド」に詳しくそのアトリエの事が詳しく載っているが、訪れる前の宗氏の解説は何を言っているか全くわからない状態だった。しかし、行ってみて、再読して、漸く、セザンヌの凄さが分かったことを掲句で思い出した。作者の言うアトリエとは違うかもしれないが、ガラス窓を透す光と静物の影、そよぐ窓の外の木々の空気感そのもの・・・旅情を味わいました。

松岡 早苗

特選句「ほーほっほほー夜長のコタンコロカムイ」。「ほーほっほほー」の擬音、「コタンコロカムイ」の「こ」の音の重なりが心地よいリズムを生み、秋の夜の静けさを際立たせているようです。今夜も神様は高い木の上から、シマフクロウの姿で見守ってくださっているのでしょうね。特選句「鉄橋に焔の記憶まんじゆしやげ」。戦火によって焼けただれ湾曲した鉄橋でしょうか。平仮名の「まんじゆしやげ」からは、犠牲になった幼い子どもたちの姿も想起されます。あかあかと立つ曼珠沙華が切ないです。

大西 健司

特選句「敗戦と父言わざりきその墓洗う」。戦前戦後をひたすらに生きて来た、その父の生きざまを作者は重く受け止めているのだろう。噛み締めるように墓を洗う行為が沁みてくる。ただ下五の「その墓洗う」の座りがあまりに悪いのが気にかかる。もう一手間かけても良いのでは。問題句「十月ノフリコメサギノデンワキレ」。カタカナ表記が効果的で好きな句です。ただ上五が気にかかる。十月のじゃないだろう。ここは「や」としたい。「や」が嫌なら「神在月」とか「神無月」ではと思わないでも無い。同じく「秋の夜の画集に蒼き馬眠る」。も「秋の夜や」としたい。それから「少年になりたい少女林檎噛む」。「林檎噛む」じゃなく「齧る」ではなどいろいろとうるさく言いたくなるのは秋のせいだろうか、困ったものだ。

津田 将也

特選句「秋扇また声掛かる退職後(野口思づゑ)」。私の妻は国の役所に勤め、定年を全うして退職しました。その後は、前職業務の「重ねる問い合わせ」「業務に関連する支援」「各種行事への参加」など、頼られる日々が多く、妻に退職者としての「余裕ある生活」が訪れるようになったのは、4~5年もの後のことでした。特選句「十月ノフリコメサギノデンワキレ」。ほんに怖い世の中になりましたな。昨今では、メールやファックスなども頻繁に届きます。

福井 明子

特選句『供物桃「海軍二等軍楽兵」』。霊力を持つという桃を供える、その墓碑には、海軍の等級が刻まれてある。戦時中でなければ、音楽に心を添わせ一生を終えたかもしれぬ。漢字連なりの一句の中に、軍楽兵という文字が、ことさら、人のこころのしなやかさへの束縛を表して、胸に刻まれました。

男波 弘志

「間違ってゐるならごめん吾亦紅」 秀作。今、世界の指導者に必要なことは政治を動かすことではない。ささやかな花の揺れに耳を澄ますことだろう。花鳥風月に心を解き放つことの意味を噛みしめている。人は人間だけに執着すれば必ず行き詰まり、誰かを憎み、そして民族同士の軋轢に発展する。この不完全な人間の所業だけを信じていれば不完全な思考に振り回されることになる。だからこそ、花鳥風月有難きかな。

あずお玲子

特選句「深酒をして虫売りの鼾かな」。思わず笑ってしまいました。この虫売りは如何ほどに大きな鼾をかくのでしょう。虫もさぞびっくりでしょうね。俳諧味溢れる一句。特選句「寝違えた梟そういえば居る」。夜明け前に動かない首を動かそうとしている作者。それを窓越しに見つめる梟。静かな闇に気配を感じ、梟と目の合う作者。梟は何してんの?とまん丸の目で問うているかもしれません。

河野 志保

特選句「月白やひとに水面のありにけり」。ひとに水面があるというのはどういう事だろうか。いろいろ考えたが、動かない水面を想像し表情の静けさと受け取った。そしてこれは作者自身のことではないかと思った。月で白んでいく空を見る時間、作者の心は整い澄んでいくのだろう。

山田 哲夫

特選句「コスモスや国境という導火線」。作者の、国境が「導火線」だという比喩による認識をすばらしいと思う。ウクライナもパレスチナもミャンマーもその他の国々の様々な紛争も多くはこの「導火線」に関わるところから発生し、当事国だけでなく、地球全体の平安を揺るがす事態が生じている。国境を隔てなく咲き誇るコスモスを想うとき、人間の営為の愚かさが気付かされてくる。特選句「さまざまな死因へそっと月が出る」。「死因」という言葉が気になってどんな死因があるだろうかと類語辞典を開いてみたら何十もの死因が出ているので呆れて途中で数えるのを止めてしまったが、何とも様々な死因があるものだと感心すると同時に「生死はなはだ尽き難し」の念いが湧いてきて愕然とさせられた。生きとし生けるものの何れは直面せざるを得ない死という現実に対して、自然は冷淡なほどに淡々として存在し、どんな死因も受け入れられて自然の中へ回帰されてゆく。「そっと月が出る」とは、なんとやさしい同情的な素敵な受け取り方だと作者の心根に同感すること頻りである。

桂  凜火

特選句「白湯飲んで体すみずみ月あかり」。白湯ってこんな感じがする飲み物だとしみじみ実感しました。さりげなさに好感がもてました 月あかりもいいですね。

野口思づゑ

特選句「コスモスや国境という導火線」。下5 の導火線がとても巧みです。導火線が点火され紛争があちこちで起こっている現状を冷静に句にされている。

森本由美子

特選句「さまざまな死因へそっと月が出る」。太古より人間が月に寄せてきた思いは計り知れない。無機質な岩と土らしきものから成り立っている映像を見せつけられても、人間の月に対する思いは変わるまい。また月の人間に対する思いにも言い知れないものがある。死に関わる思いやりを含めて。

中村 セミ

特選句「さまざまな死因へそっと月がでる」。月も人の死に方に心を寄せてくれているのだろうか。月は喋りもしないし地球から近いといっても、遠い。月は海の満干をつかい、人を死に導くこともあるだろう。とにかく人が死ぬ時は,ある意味微力ながら、月は手伝っているのだ。物理的に。そう勝手に読みました。

稲葉 千尋

特選句「秋の夜の画集に蒼き馬眠る」。画集に描かれた「蒼き馬」どこの馬だろうか想像させる。そして、それが駆け出すのが見える。夢のある句。

伊藤  

特選句「秘密基地に飛べ母の一機空高し(竹本 仰)」。お母様は亡くなられたのであろうか。在りし日に作られた紙飛行機がテーブルの上で「飛びたいよ」と叫んでいる。お母様しか知らないお母様の秘密基地。「さあ飛びなさい」と優しい息子(娘)は秋の空に向かって思い切り飛ばしてあげるのだ。

増田 暁子

特選句「月白やひとに水面のありにけり」。人には水面がそれぞれにあるのか。その通りで納得しました。特選句「白湯飲んで体すみずみ月あかり」。中7下5の透けるような感覚。心身に突き刺さる月あかり。感激です。

河田 清峰

特選句「たまねぎや死は終わりじゃない周作忌」。そうでありたいと願うばかり。

鈴木 幸江

特選句「秋深し土瓶の蓋の穴から湯気(山田哲夫)」。つい最近までは、庶民の家に土瓶が必ずあったものだ。いつの間にやら日本茶等を飲むことが少なくなった我が家からも消えてしまった。土瓶には市井の人の逞しさが宿っていた。今は松茸の土瓶蒸しぐらいだろうか。民族の生活の変化と共に失われてゆく道具は文化も連れて行ってしまう。作者は悲しくて怒っているのか。穴から吹き出る“湯気”に共鳴している姿が、なんともユーモラスでとても味わい深く伝わってくる。私も土瓶が欲しくなった。

漆原 義典

特選句「曼珠沙華よりはじまる吾の記憶かな(銀次)」。曼珠沙華と記憶がよく響き合っています。曼珠沙華は彼岸花とも言い、遠い昔を思い出させてくれます。素晴らしい句をありがとうございます。

佳   凛

特選句「鉄橋に焔の記憶まんじゅしゃげ」。二次大戦の折の広島を詠んでおられるのでしょうか?嬉しい記憶は時には、忘れる事があるが、悲しい記憶は忘れる事は難しいと思います。その記憶に咲くまんじゅしゃげの色も、又悲しみを増幅させる事でしょう。とても切ないです。特選句「間違つてゐるならごめん吾亦紅」。人は自分が間違っている事に、気付いてもなかなか謝れません。この句のように、素直になる事が、平和への第一歩かも知れません。とても、難しいですが。私も、素直になります。

淡路 放生

特選句「地球時計屋なら虹のふもとだよ(三枝みずほ)」。この句、時計屋がいい。精密機械のチクタクで地球のおもしろさが感じられる。虹のふもとが妙になつかしい。思いきった発想が生き生きと読む者につたわる。

川崎千鶴子

特選句「そぞろ寒つい軽い嘘のつもりって何」。相当いらだっているのが伺われます。これからドンパチか、怒って席を立つか。 臨場感あふれる場面が浮かびます。「何」が利いて素晴らしいです。『青春の「あとがき」ばかり辿る秋』。青春の思い出を言われているのでしょうか。文学的表現で奥が深いです。「コスモスや国境といふ導火線」。コスモスと導火線の斡旋が見事です。もしかしたら国境もコスモス的かもと。

田中 怜子

特選句「敗戦と父言わざりきその墓洗う」。父親が学んできた考え、自負心等と、父親と話をできなかった悔いと。ざっくばらんに喧々諤々話し合えない日本人の心性。変えたいですね。特選句「十月や森の匂ひの頁閉づ」。森の針葉樹や湿気を帯びた菌類の匂いが感じられた、清潔感とこの方の生活の在り方がにじみ出る様です。

吉田 和恵

特選句「ほーほっほほー夜長のコタンコロカムイ」。アイヌの神が夜通し歓談している情景が眼裏に浮かびます。ところで、山の奥深くまで重機が入る昨今、山の神様達はいかにおわすことでしょうね。特選句「あちかじぬたてぃば ふぃちゅいにぬすらに<和訳:秋風の立てば 一人寝の旅の空>(島田章平)」。高らかに方言の復活を!

佐藤 仁美

特選句「みんな善人毬栗のとげとげにぶつかる」。善人と思いたいけど、気が付けばトゲに刺されることがあります。中の栗の実は美味しいのに・・・。このトゲは自分が持っているのかもしれません。特選句「星流る点滴という宇宙食(三好つや子)」。点滴が宇宙食と例えるとは!闘病にユーモアが寄り添ってます。

松本美智子

特選句「唇は新酒の雫追いかける」。我が家にもお酒が大好きな人がいますが・・・酒飲みの「新酒を一滴も逃すまい」とする様子が伝わってきます。おいしい新酒を呑みたくなりました。選句しませんでしたが「十月ノフリコメサギノデンワキレ」。が気になりました。実は実家にも詐欺電話かかってきて母がだまされました。それが十月でした。この句は季語がなぜ十月なのか、他の月でもいいのではないか?いわゆる「季語が動く」問題があると思います。十月に詐欺が多いわけではないでしょうが、私も母の詐欺について句を詠もうとして断念した記憶があり今度挑戦してみたいと思います。季語は何がいいのか・・・難しいなあ。

野田 信章

特選句「いつのまに振り向くならい小鳥来る」。中句にかけてのさりげない修辞の表白と「小鳥来る」との配合が美しい。初老の自覚かと思える。このことを受け入れて生きている自己客観の視点の確かさが「小鳥来る」との出合いかと読んだ。

榎本 祐子

特選句「ぽぽと打ちぽぽと山彦をみなへし」。鳴り物をぽぽと打つと、山彦もぽぽと応える。自然の霊との交歓。「おみなへし」もさりげない風情で素敵です。

重松 敬子

特選句「十月や珈琲豆の爆ぜる音(向井桐華)」。暑さもやわらぎ、食卓にもほっと感がよみがえりました。我が家でも幸せなひとときです。特選句「秋光やいつも前から来るチャンス」。作者の明るさにエール!!

高木 水志

特選句「ためらいはいちじくの青妬心なお」。いちじくの甘酸っぱい味や独特の食感は妬心に通じるという発見がおもしろいと思った。

新野 祐子

特選句「みんな善人毬栗のとげとげにぶつかる」。「みんな善人」がおもしろい。毬栗にとげとげがあるのは当然ですが、この世の中みんながみんな善人とは言えませんから。「敗戦と父言わざりきその墓洗う」。生前のお父さんの姿が見えてきます。そのお父さんに反発しつつも尊敬していた息子(娘ではないですよね)も。

岡田ミツヒロ

特選句「プロポーズ成功しそうスーパームーン」。やった!プロポーズ成功だ。心は躍り、天にも昇る。夜空のスーパームーンが煌々たる光でやさしく全身を包み込む。遠い日の感動が思わず蘇った。

石井 はな

特選句「八月の空や舞い散る願い事」。八月は重い月です。平和の願いも舞い散らせてしまう不安を感じます。

植松 まめ

特選句「侵略や見渡す限りカンナ燃ゆ」。パレスチナの争いの事か?緋色のカンナが戦火の拡がりを暗示しているようだ。特選句「月光の海断崖のトランペット(岡田ミツヒロ)」。映画の一シーンのような句。美しい。

柾木はつ子

特選句「ぽぽと打ちぽぽと山彦をみなへし」。とてもリズミカルで思わず暗誦したくなる句です。特選句「少年になりたい少女林檎噛む(月野ぽぽな)」。この少女の気持ち分かります。また少女になりたい少年もいるのでは・・・どちらの数が多いか興味のあるところではあります。

竹本  仰

特選句「少年になりたい少女林檎嚙む」。中学生になった時、制服で男子と女子が遠く隔てられた、あの時の感じを思い出した。それは生き方を指示されたくらい重要なことだったと思う。そういうことに強烈な違和感を思い、その背景にはたらく力を感じた時、「なぜ」と思ったことがある。そういう矛盾の原点を衝いた句だと思った。昨日のジャンヌ・ダルクはいつだっている。聖書の中のアダムとイヴじゃないけれど、誘わずに林檎をがぶっとやっちゃうイヴだっていていいのだ。特選句「秋の夜の画集に蒼き馬眠る」。誰の画集だろうか。昔、友人の下宿を訪れた時、キャンバスがあり、ゴッホの「夜のカフェテラス」を描いている最中だった。絵を始めたという事だった。その時に感じたのを言葉にすると、まさに「蒼き馬眠る」だったろう。夜の彼の背中を感じてしまった。痛々しくもまっすぐな何か。有島武郎の『生れいづる悩み』を連想する。青春、その何かに縋りつきたい匂いがするのだ。特選句「十月や森の匂いの頁閉づ」。読書の楽しみの一つは、そういう嗅覚なんだと思う。嗅ぐというのが五感の中で一番鋭い。そういう匂いに引き寄せられて、肉体として感じてしまう読書。内田樹さんは、カミュを原語で読むと、肉感がいきかえるという。つまり、ページを越えて引き寄せ肉体をよみがえらせるものがあるという。そう感じた時、引き返せないくらいの濃い対話があることに気づいたりする。そう、何度でもそこへ帰りたい森の匂いがあるのだ。ところで、この句、読んだ後のことを言うのか、読んでいる途中のことを言っているのか。多分途中の事なのでは、と思う。引き返せないくらいの濃い出会い、しばらくページを閉じて味わっていたいのだ。以上です。♡先日、偶然時間が出来て、カカオ句会からお知らせのあった新大阪でのリアル句会に出ました。そのとき、「選句がいちばん楽しい」という言葉がいつまでも耳に残りました。私にとって、どうだったか?みなさんは、どうです?たしかにとてもありがたい機会に恵まれているんだなあと、振り返りました。俳句の中身ではないこんな周辺の声から、妙にぞわぞわと鳥肌が立ちました。時々、選句しながら、こちらのツボを痛く刺激するものに出あうと、大変楽しくなります。感謝、感謝です。野﨑さん、そしてメンバーのみなさん、あらためてよろしくお願いします。

飯土井志乃

特選句「花なるや草にすがれる空蝉は」。しっとりした秋の風情の中で、いのち果てしものに再びの美を感じとる一句かと思います。大好きです。

向井 桐華

特選句「コスモスや国境といふ導火線」。ウクライナ情勢やガザの子どもたちが重なった。コスモスというたおやかな、優しさの象徴である花から、導火線へと持って行くところが見事だと思いました。問題句「古バナナ父の父の父破れ襖」。古い記憶のことなのか熟し切ったバナナを前にして詠んだ句なのか、ちょっとわかりにくい。

三好つや子

特選句「コスモスや国境といふ導火線」。日ごと激化するイスラエルとハマスの戦況に思いを馳せました。破壊される街のなか、追い込まれていくガザの人々の姿が浮かびます。事態の沈静化を祈らざるにはおられません。特選句「にんげんは二度死ぬらしい秋薔薇」。人が死に、その人がいつしか忘れ去られることを、二度目の死という。エッセイやラジオのDJなどで目や耳にするこの言葉が、少し翳りのある秋の薔薇の風情と重なり、心に沁みました。「ほーほっほほー夜長のコタンコロカムイ」。村の守り神が降臨する夜、焚火を囲み、飲んだり踊ったりしている村人たち。遠い時代の光景にほっこりとしたアニミズムを感受。「白湯飲んで体すみずみ月あかり」。透明感があり、かつ誰かをさりげなく誘っている雰囲気も。そんな蠱惑的な詩情に惹かれました。

時田 幻椏

特選句「ためらいはいちじくの青妬心なお」「秋風の猫と丸まっても傷む(三枝みずほ)」。言い様の無い心模様の朦朧とした気分、なのでしょうか?『ゐのこづち「遊びませふ」と戦ぎをり』「ぽぽと打ちぽぽと山彦おみなえし」。ゐのこづち と おみなえし 草の選択の妙。

山本 弥生

特選句「深酒をして虫売りの鼾かな」。酒好きの初老の虫売りが、今日は虫がよく売れたので屋台で深酒をしてつい寝てしまった。大きな鼾をかいているが周囲の人も皆そっとしておいてあげている姿が目に浮かぶ。

荒井まり子

特選句「今もゲルニカ愚かな戰の牛馬の叫び」。覚束ない記憶だか兜太先生は「社会性とは態度の問題」と、どこかで話されたと思う。長引くウクライナ。今のイスラエルとパレスチナ、先の見えない今、情報も操作されている現在。平和という言葉が虚しい。今も戦時中だと思うと、人類の進化がどうなるのか。せめて眼を逸らさない事しか出来ない。「今もゲルニカ」と「牛馬の叫び」が欠片となり痛々しい。

稲   暁

特選句「鉄橋に焔の記憶まんじゆしやげ」。誤読かも知れないが、焔の記憶とは戦災の記憶だと読んだ。人は忘れても鉄橋は今も忘れていない記憶があるのだ。特選句「侵略や見渡す限りカンナ燃ゆ」。 ウクライナの野一面にカンナが咲いている光景を詠んだのだろう。侵略の2文字に満腔の怒りを込めて。

大浦ともこ

特選句「白湯飲んで体すみずみ月あかり」。白湯の語感と中七下五の「体すみずみ月あかり」が豊かな詩情を伴って実感として伝わってきます。特選句「秋昼の木を積む遊び果てしなく」。幼い子供の遊びは実に果てしなく、そして可愛いです。優しいまなざしが感じられて好きです。

銀   次

今月の誤読●「秋風の猫と丸まっても傷む」。秋の日が暮れかかろうとしている。そろそろ夕飯の支度にかからなければならない。だがわたしは立つことができず、ひたすら横になって眠りと目覚めのあいだをたゆたっている。抱いている猫がニャーと弱々しく鳴く。そうだね、おまえもお腹が空いたんだね。でももう少し、もう少しだけこのままでいさせておくれ。すきま風がどこからか入ってくる。背中がひんやりとしてくる。抱いた猫の温かみがほんのりとお腹のあたりにひろがる。「あのこと」があって以来、わたしはずっとこんな調子だ。悲劇は人を強くする、なんてことをいう。そうかもしれない。だがそれはもともと強い人のことだ。わたしはそうではない。人一倍弱く、女々しい人間だ。はじめっからそうだった。それを思い知らされたのが「あのこと」だった。そのときわたしは打ちのめされた。そののちしばらくは泣き暮らした。それからまたしばらくして「あのこと」を糸をたぐるように反芻するようになった。そのたびにつらさがよみがえり、胸のあたりをナイフでえぐられるような感じがした。忘れようとしたができなかった。そしてある日のこと、ふいに思い至った。わたしはこうしてつらさのなかにいることが、好きなのではないかと。それは恐ろしい気づきだった。だがこころのうちをまさぐっていくと、確かに悲哀のなかに甘やかな感情が流れている。猫が引っ掻いた傷をなめて甘いと感じるような感覚だ。だからといって、そこから抜け出せたのではない。抜け出すにはあまりにも心地いい陶酔感がわたしを支配しているからだ。こうして今日もまた「あのこと」を取り出してはそっと撫で、甘美な悦楽の闇のなかに身を横たえる。猫とともに。

菅原 春み

特選句「コスモスや国境という導火線」。いいえて妙な現在の状況を無駄なことばを一切使わず、言い切っている潔さ。季語に密かな希望を託しているのだろうか?特選句「少年になりたい少女林檎噛む」。林檎噛むところがなんとも爽やか。あまり考えすぎずに男の子より活発で元気な少女を想像した。

亀山祐美子

特選句「青滲む異国の切手小鳥来る」。エアメールが届く。印刷が悪いのかはたまたポストまでの途中で雨に会ったのか切手の青が滲んでいる。「小鳥来る」の季語が付き過ぎのような気もするが、懐かしさをより増幅させ「青滲む」の不安感を期待感に変える働きを見過ごせない。余計な感情を持ち込まない分小さな「青滲む異国の切手」が読者の想像力をかき立てる秀句。

丸亀葉七子

一読をし、たくさん良い句があるのですが、集中力が無くて選べませんでした。発見があるのに季語がう~ん。言葉が饒舌だったり。次は元気になって本腰を入れて選句をさせていただきます。

山下 一夫

特選句「少年になりたい少女林檎噛む」。中七まではありがちかも知れませんが、季語がアダムとイブを連想させるところやその甘酸っぱさが効いて、シンプルで印象的です。ところで少年と少女の順序は昭和半ばの生まれとしては違和感はありませんが、令和の世では逆でも十分説得力がありますね。特選句「整然と棚田にモザイク青田風」。青々とした棚田に風が吹き、稲穂がそよいで色合いが変わった一瞬を映像のモザイク処理に見立てられたと受け止めました。清々しい動きのある伝統的な風景が現代的なテイストで処理されていろところがまた清々しい。問題句「ぽぽと打ちぽぽと山彦をみなえし」。メルヘンチックな「ぽぽ」のリフレインが「山彦」や「をみなえし」と良いアンサンブルをなしていて好きな世界です。しかし「ぽぽ」は、例えばパソコン等のキーボード打音のようなあえかな音かと思われるだけに「山彦」では大げさに過ぎるかとも。だからと言って「反響」や「返答」では台無しなので悩ましかったです。

藤田 乙女

特選句『青春の「あとがき」ばかり辿る秋』。自分の今の心境そのもので、とても共感しました。同じ思いの方がいらっしゃることに友を得たような感覚でした。特選句「いまぼくがここに居ること林檎食む(野﨑憲子)」。青春の輝きと息づかい、希望を感じるような素敵な句でした。

薫   香

特選句「月光の海断崖のトランペット」。月光に照らされて一人海に向かってトランペットを吹く、映画のワンシーンのようで素敵です。特選句「アトリエに転ぶ檸檬の青き影」。どんな絵を描こうとしているのか、想像が膨らみアトリエと作者が目に浮かびます。

野﨑 憲子

特選句「千々灯は宇宙の流灯紅葉す」。<千々>とは、数が非常に多いこと。変化に富んだ人類の灯が<宇宙の流灯>へと昇華されてゆく。旭川に住む作者は、秋の早い地で紅葉の中掲句の世界を幻視されたのではないだろうか。ふっとジョンレノンの言葉を思い出した。「今までに読んだ詩の形態の中で俳句は一番美しいものだ。だから、これから書く作品は、より短く、より簡潔に、俳句的になっていくだろう」。長引く戦争は、飛び火している。今こそ、宇宙の中に生かされている人類(宇宙人)として、世界へ向かって、ここ「海程香川」から、言霊の幸ふ日本の愛語の俳句を、熱く、そして、猛烈に発信して行かねばならないのではないだろうか。

(一部省略、原文通り)

袋回し句会

言の葉が遊びたがつて秋の皿
野﨑 憲子
一枚を割って雨月の皿屋敷
島田 章平
八冠に王手皿に栗羊羹
島田 章平
デルフトの皿の生成りに柿の朱
大浦ともこ
ナオミ手を皿に林檎を四等分
あずお玲子
澄む
空澄むや寝ころんでいる羅漢さま
増田 天志
梟と目の合ふ森の星澄める
あずお玲子
水澄む世界で私はどうかしら
薫   香
沈下橋あまたある街水澄めり
大浦ともこ
空澄むや大観覧車にてデート
増田 天志
水澄めり水切り石のつーつーと
柴田 清子
ああ掻き回したし澄むや水
銀   次
「実はね」に興味なさそな月澄みて
岡田 奈々
水澄むやぼくらはみんな宇宙の子
野﨑 憲子
水澄むや乱世に祈る世界地図
増田 天志
水澄んで独りの夜の皿洗ふ
島田 章平
別れとはたとへば水の澄み始め
島田 章平
鉄塔は無敵に闊歩まんじゅしゃげ
増田 天志
サヨナラは野辺一叢の曼珠沙華
大浦ともこ
秋遍路
足早の秋の遍路となりにけり
柴田 清子
米粒に目鼻書かむや秋遍路
増田 天志
秋へんろ土蔵の窓は高きかな
増田 天志
強力な晴れ女いて秋遍路
岡田 奈々
讃岐路に天志ありけり秋遍路
野﨑 憲子
大津から阿波へとひとり秋遍路
野﨑 憲子
影を連れ足の重たき秋遍路
島田 章平
果てしなき戦の報や秋遍路
増田 天志
彼岸花
人柄の凡句に出でり彼岸花
藤川 宏樹
一輪だけの彼岸花私ここに
薫   香
曼珠沙華まつげエクステしてみたり
岡田 奈々
草影に沈み名残りの曼珠沙華
柴田 清子
渦の果て無一文なる曼珠沙華
増田 天志
ちょっと待てそこから先は彼岸花
島田 章平
世界地図燃え上がる報まんじゅしゃげ
増田 天志
花嫁の打ち掛けの裾に赤き蟹
銀   次
生身魂真っ赤に生きて真っ直ぐに
島田 章平
彼岸花真っ赤芸術は爆発だ
島田 章平
縁側に足踏みミシン赤とんぼ
増田 天志
おにぎり全部夫に食べられ赤まんま
岡田 奈々
赤こんにゃくあの少年はどこに居る
野﨑 憲子
赤坂も赤羽も好き赤とんぼ
大浦ともこ
その案山子わたしと同じ赤ジャージ
あずお玲子

【句会メモ】&【通信欄】

今月も、大津から、増田天志さんが「鉄道開業150年記念切符」でご来高。事前投句の合評と袋回し句会の合間に、今月末の「海程香川」山形吟行に因んだ「芭蕉翁の梵我一如」の続編の熱弁で句会を大いに盛り上げてくださいました。天志さん、遠路、ありがとうございました。

コロナ禍のようやく緩む中、今月二十八日からの「海原」全国大会参加の後、久し振りの「海程香川」吟行です。念願の山形へ! 少人数ながら山形の新野祐子さんと、ご参加の方々と共に存分に楽しんでまいります。

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