2019年1月30日 (水)

第91回「海程香川」句会(2019.01.19)

赤富士.png

事前投句参加者の一句

            
身の中の水冬雲の一つ也 中村 セミ
正月よわたしは紙ヒコーキだからね 田口  浩
着ぶくれて傷心というかたちかな 新野 祐子
老人の脱皮秘かに冬の虹 小山やす子
あきらめたときにレモンが浮いてくる 三枝みずほ
東京や墓のマンションに初明り 寺町志津子
実南天たし算だけで生きてます 吉田 和恵
横抱きの郷愁空に凧 松本 勇二
栗鼠と僕のテレパシー橋駆け抜ける 桂  凛火
平然と伸びし睫毛や冬の鹿 高木 水志
寒月や拡散A4にびつしりと 小道 清明(豊原清明改め)
晩柑や師の言魂の陽の雫 野田 信章
雲低きあをのゆらぎの寒の海 亀山祐美子
讃岐人あん餅雑煮で歳重ね 漆原 義典
着ぶくれの母を引っ張る短パン児 中西 裕子
寒満月遠い日の海辺にいたり 柴田 清子
父の忌の寒九の水を享けにけり 高橋美弥子
鍬置いて大地に記す兜太の句 稲葉 千尋
流星群岬へ放馬青を帯び 大西 健司
新春なり隣の内儀若作り 小宮 豊和
ちぢむ肉叢初荷のように労りぬ 若森 京子
初御空柏手まねし幼子ら 佐藤 仁美
手の初動北斗七星掬うかな 鈴木 幸江
幸先の種を蒔きます初日記 野口思づゑ
冬すみれ木洩れ日に読む福音書 増田 天志
原曲は冬木を通りすぎる風 月野ぽぽな
せせらぎから人体をゆく枯野 竹本  仰
棒針のマフラーわたし風の人 重松 敬子
手枕のしばしの仮寝雪しまき 菅原 春み
節分会沖で豆かむ音のする 矢野千代子
山に住む小さな家族冬に入る 河野 志保
朝練はコーラなビート麦芽吹く 中野 佑海
風花や夫へ語らぬスープ膜 藤川 宏樹
凍てる夜の星が零れてきはせぬか 谷  孝江
凍星の明滅ことばにかわらぬよう 男波 弘志
竹馬の夢の醒めては独りぼつち 島田 章平
義歯ぽろりシンクに落ちて除夜の鐘 野澤 隆夫
冬満月微笑っているよう泣いているよう 伊藤  幸
鉛筆と姉とひとつの冬寝床 河田 清峰
競艇場の水面ぺたりと淑気かな 榎本 祐子
もう家へ帰れぬ患者窓に霜 銀   次
美ら海を汚し殺めし我が国や 田中 怜子
一・一七忌記憶の咳が止まらない 三好つや子
冬銀河過去も未来も飲み込んで 藤田 乙女
餅焼くや希林に春恵、悦子もか 高橋 晴子
地球とふ風の器よ冬すみれ 野﨑 憲子

句会の窓

若森 京子

特選句「原曲は冬木を通りすぎる風」素直な発想と感性に惹かれた。特選句「天上の水音(みおと)ちりばめ七草粥(三好つや子)」日本人の伝統行事の〝七草粥〟をこの様な角度から詠まれているのは初めてだ。きらきらと輝く美しい詩に昇華して いる。

増田 天志

特選句「正月よわたしは紙飛行機だからね」ええっ、紙飛行機って。人生の軽さなの。肉体のはかなさ。無常感かなあ。とにかく、貴方は、いつまでも、屋根瓦の上に、とまったままね。

河野 志保

特選句「競艇場の水面ペタリと淑気かな」意外な視点から新年の静けさが伝わる。驚きと、なんとも言えない心地よさを感じた。競艇場という選択が抜群。刹那に賭ける熱気と喧騒の場ゆえに、ペタリとした水面の静寂が際 立つと思う。

小山やす子

特選句「風花や夫へ語らぬスープ膜」何気ない夫婦の日常を優しい眼差しで句になさった。特にスープ膜のくだりに好感が持てます。

野澤 隆夫

特選句「冬すみれ木洩れ日に読む福音書」穏やかな冬の一日。静謐な時間を過ごす作者が浮かびます。特選句「むらぎもに梅がちらほら青鮫忌(若森京子)」追悼の句でしょうか。逝去されて1年がたち、やっと作者の気持ちに平常心が 取り戻せたという感。問題句「重ね着てジアゼパム百錠の樹海(高橋美弥子)」おどろおどろしい世界に足を踏み入れた作者。ホラーの世界です。

中野 佑海

特選句「正月よわたしは紙飛行機だからね」今までは、子や孫を待って、三が日はお節、お屠蘇、お雑煮と何日も前から用意して。と、もういいでしょう!私は良くやったよ。紙飛行機の様に身軽になって好きな所で、好き なキャラで居させて!「特選句「実南天たし算だけで生きてます」冬最中、赤い実たわわに、葉も良い色出して、前向きに闊歩してます。格好良い私。すっぱりしていて、気持ち良いです。目指す所です。

藤川 宏樹

特選句「元旦の厠詰まるるめでたさよ(河田清峰)」初句会のふじかわスタヂオは年末にトイレをリフォーム。子や孫ら親族一同、厠が詰まるほどにぎやかな正月を過ごしました。トイレにめでたさを着想するとは素晴らしい!句会では 鈴木さんから拙句「風花や・・・」へ特選でほくそ笑み、袋回しでも選が入り、よき年の始めとなりました。俳句三年、より発想を広げたいと思います。→素敵なスタヂオで句会ができて幸いでした。これからも、どうぞ宜しくお願 い申し上げます。貴句、楽しみにしています!

稲葉 千尋

特選句「元旦の厠詰まるるめでたさよ」いやいや懐かしい光景。これこそ元旦のめでたあり、お見事。特選句「餅焼くや希林に春恵、悦子もか」名女優三人に餅焼いて合掌している。この季語はゆるがない。

銀   次

今月の誤読●「鉛筆と姉とひとつの冬寝床」。カリカリカリカリ。冬の寝床で腹ばいになって、さっちゃんはノートになにかを描いている。姉のみち子が云う。「さっちゃん、もう寝なさい」「うん、でも、もうちょっとだ け」。カリカリカリカリ。しばらくしてさっちゃんが小さく叫んだ。「できたー」。うとうとしかけていたみち子が「なにが?」と問う。「これ見て」と差し出したノートには拙い絵が描かれていた。「あら、これってお嫁さんね」 「うん」「この人って、さっちゃん?」「ううん、お姉ちゃん」「でもあたし、こんなに目が大きくないし、キレイじゃないわ」「でも、お姉ちゃん」「そう、ありがとう」。みち子はなんだか嬉しくなってその絵にじっと見入った 。そのうち少し悲しいような気がして、枕元のランプを消した。なんだろう、この気持ち? さっちゃんは胎児のように丸まって、みち子の寝間着の襟元をつかんだまま寝入っている。スヤスヤというさっちゃんの寝息がみち子を余 計に悲しくさせた。たぶんさっちゃんは、こうしてひとつ寝床で抱き合って寝ることが永遠につづくと信じているのだろう。だがみち子は、成長という時の流れが止められないことを知っている。そしていつかは、それぞれが別々の 人生を歩まなければならないことを。みち子は、さっちゃんの手に握られていた鉛筆をそっと抜いてノートに挟んだ。どうやら外は雪らしい。障子の底がぼんやりと白い。みち子はさっちゃんをキュッと抱いた。そして、寝た。

伊藤  幸

特選句「天土の水音ちりばめ七草粥」平成最後の七草粥ですね。皆様の殆どが昭和、平成そしてもう一つの時代を生きる事となるのです。こころ新たに神聖な気持ちで新しい時代を迎えたいものです。そういう意味でも、こ の句はぴったりです。

漆原 義典

特選句「新春なり隣の内儀若作り」です。中7の「隣の内儀」が大正、昭和のロマンを感じてうれしいです。平成が終わりまもなく新しい年号となりますが、古きよき時代を大事にしておきます。下五の若作りもまた新春に 良く合っています。新年早々楽しい気分にさせてくれた作者の感性に感動しました。ありがとうございます。

谷  孝江

特選句「枯枝で描いた円を抜け出せず(三枝みずほ)」は、頭だけで無く、全身で受け止められるような句です。円の中より抜け出せません。故人となられました書の先生より教えられました事は「円」とは全世界全宇宙のことであり、善 も悪も、人も動物も木、草に至るものすべてが、この円相の中に収まっているのだと・・・。教えて頂いた五十年前は、軽く受けておりましたけれど年と共に少しは深く身に沁みてくるものがあります、どうしょうもない円の中で生 かされているのだと。「父の忌の寒九の水を享けにけり」も、骨太で好きな句です。父の忌、寒九の水、で重く受けとる事が出来ました。良い句をたくさん見せていただきました。ありがとうございます。今年もよろしく御指導くだ さいます様に。

田口  浩

特選句「実南天たし算だけで生きてます」句の一刀両断ぶりがこころよい。〈たし算〉と断定することによって、〈実南天〉の何かが浮かんで来る。さらに、〈生きてます〉と置かれると、もうこの実南天は、作者が自在に 演じるままにままに踊らされる。そこで何が見えるか、何を演じているか、そこまで解釈する親切はいらない。読者の思うまま感じるままでよいのだが、しいて言えば、作者の生きざま、こころ根であろうか。いや、そう真正面から 居直るより、ヤセガマンと斜に読む方が、一句に色をそえるやも知れない。

中西 裕子

特選句「山に住む小さな家族冬に入る」山にすむ小さな家族ってなんでしょうか、虫なのかな、哺乳類なのかな想像するのが楽しい。冬支度も万全なんでしょうね。

竹本  仰

特選句「流星群岬へ放馬青を帯び」わからないことがある、たとえば、なぜ、その時、人々は走り出したのか。そういう或る時代の、或る瞬間でなければわからないことがある。というか、人は、世は、そうして動くものな のではないか。たとえば、定家の明月記に、彗星の記述が長々と出ているが、あれなどは、そんな予感というか、空気というか、そんなものに押し出されるようにして現れたものではないか。かの歌人は恋愛経験など一つも見当たら ぬ堅物だったそうだが、「春の夜の夢の浮橋とだえして・・・」との大きな落差に、むしろ、彗星に釘づけになっている姿との整合性で考えてみて、やっとわかる種のものなのではないか、そんな類想で、読みました。特選句「冬す みれ木洩れ日に読む福音書」聖書の読まれ方が、こんな風であったとは、四人の使徒さえ感じることもなかったのでは、とふと思った。福音書はナゾだらけだなあと思い、そこが魅力であり、その思うところがまた何かのヒントにな ってゆくような、ある意味、人間の堂々巡りが予感されてのものだったのかとも。この句の木洩れ日が、何とはなしに、ささやかな平和に支えられた斜め読みの姿のようにも思え、冬すみれに小市民のさりげなき笑いを見たりと、何 とはなしに浮かぶそんな自画像めいたものに、興味をひかれたのです。特選句「凍星の明滅ことばにかわらぬよう」この間、テレビで、禅の大家の様な方が、人間が純粋になるには、とにかく、言葉を消し去らねばならない、と仰っ ていたのを思い出しました。そこで、やっと「いま」がありのままであらわれてきて、それに同化することが大切だとも。この句の魅力は「ことばにかわらぬよう」です。「いま」に向かい合う、そういう潔さを感じ、この句境、い いなと思いました。つまり、これこそが、ことばに向かう基本かなと、そんなことを思ったので。特選句「地球とふ風の器よ冬すみれ」:「風の器」というとらえ方に、鋭さと同感とを覚えました。冬すみれが風の器であるように、 地球の自転、公転の、そんな音まで聞こえそうな。小生は昔、といっても十代のころでしたが、地球の自転の音がうるさくて眠れないといった不思議な経験を数日したことがあり、寝入りに聞こえ出す、その石臼をひくような音に、 眠いからだで抵抗していたことがありました。で、この「風の器」ですから、思わずポンと膝をたたきたくなり、何だかうれしさを感じました。そうなんですね、そう感じれば、そよ風の眠りに、冬すみれのようにくたっと安らかに 笑いながら寝入ったように思います。いやはや、ありがとうございました。以上です。 今年、淡路島吟行が、どこか頭の片隅にあってか、「日日吟行」、この「ヒビギンコウ」が、ずっと心のリズムになっております。日日吟行、このすがたで行きたいなあと、思います。2月7日に、野﨑さん、中野さんとともに、吟 行コースの下見をいたします。お忙しい中、お二人にはご足労願いますが、楽しみにしております。皆様、本年も、よろしくお願いいたします。

田中 怜子

特選句「讃岐人あん餅雑煮で歳重ね」あん餅を食べて、おだやかな保守的な讃岐人を現わしていると思います。

高木 水志

特選句「初御空柏手まねし幼子ら」初詣の風景と思われる、清々しい景が見えてくる。初御空と幼子らの対比が効いている。類想感はあると思うが、実感がある。

榎本 祐子

香川句会の活気に刺激を頂きたく、今年より参加させていただきます。宜しくお願い申し上げます。特選句「老人の脱皮秘かに冬の虹」今日が終わり、明日が始まる。人は常に脱皮を繰り返しているようなもの。若い時の見得を切るようなエネルギーはなくとも、老人も静かに脱皮を繰り返す。「秘かに」に、時間を重ねてきた人の行儀の良さがあり、「冬の虹」には生の華やぎと切なさがある。特選句「追っているものを忘れて息白し(高木水志)」目標とするものに向かって日々努力をする。激しく自身と向き合えば周りの景色は遠のき、身体と意識のみが際立つ。追っているものさえ視界より消えた。今は、命の証の己が息を恃むばかりだ。問題句「新春なり隣の内儀若作り」:「内儀」という時代がかった言葉が気になった。お隣の奥さんの頑張りすぎた新春の装いを、茶化してのあえての言葉と読めば、ふだん馴染みのない言葉も生きてくるが・・。

矢野千代子

特選句「鍬置いて大地に記す兜太の句」大地は祖とも母とも言われますが、そこへ師の一句をー熱い思いが満ちてきます。

寺町志津子

特選句「原曲は冬木を通り過ぎる風」作者が「冬木を通りすぎる風が原曲」と認識された音曲はどのような旋律なのだろうか?揚句の詩情豊かなフレーズに、微かに幻想的な音曲も聞こえてくるようで、理屈抜きに好きな句 である。そして、眠れぬ夜や、夜中に目が覚めてしまった時に聞いている「ラジオ深夜便」で時折耳にする「景色の見える音楽」が連想された。それは、ご存知の方も多いと思われるが、作曲家守時タツミ氏による「波音、風音、鳥 の声など自然の音に思いを重ねて生み出す独特の音楽」。実に繊細で幻想的。かつ美しく、優しく、真に心癒やされる音曲である。揚句を読んだとき、その音曲感が再生され心に深く響いた。

三好つや子

特選句「耳打ちのよう足裏に春の潮(矢野千代子)」 耳朶のように柔らかな足裏を持つ若い女性が、波打ち際で戯れている。そんな光景を詩に昇華させた、健康的で官能的な作品だと思います。特選句「原曲は冬木を通りすぎる風」森羅 万象そのものがメロディーなんだ、ということに気づかせてくれる句。クラシック、ジャズ、シャンソン・・・作者は、冬の風にどんな曲をイメージしたのでしょうか。入選句「内臓をぶら下げている雪女」妖しく漂っているだけの 雪女が、ユーモラスな形容により、人間臭いものに感じられ、とても面白いです。

小道 清明

名前に筆名をつけました。豊原清明から、小道清明に変わります。よろしくお願いします。特選句「着ぶくれて傷心というかたちかな」かたちにならない感情を上5で具体化されている。今、選者が傷心気味で心惹かれた。 問題句 「着ぶくれの母を引っ張る短パン児」 短パン児の響きが可笑しかった。「着ぶくれの母を引っ張る」だが、響きが妙だ。

男波 弘志

特選句「横抱きの郷愁空に凧」いつも運んでいるもの、飄々としつつ、必死に離さぬもの、離れぬもの、そこにあるのは、青と肉、だけだろう。特選句「平然と伸びし睫毛や冬の鹿」鑑真の睫毛もそのように描かれている。 意味はどうあっても、ただ在る世界。

藤田 乙女

特選句「母の知らぬ我が三十年よ雑煮椀(高橋晴子)」母親への深い思いや愛情がとても心に響き、共感しました。自分の亡き母を思い出し感謝と切ない気持ちでいっぱいになりました。受け継がれて来たであろう雑煮椀のあたたかさも 感じられ、心に深く染み入る句でした。

大西 健司

特選句「冬すみれ木洩れ日に読む福音書」頭が凍蠅のようで働きません。そこで特選なしです。と、そんな気分ですが、あえてこの句を。静謐な時間の流れが好ましい。全体に余分な言葉が多いのでは、もっと省略をと思い つつの選句。

月野ぽぽな

特選句「一・一七忌記憶の咳が止まらない」:「記憶の咳が止まらない」に今も癒えることない痛みを思いました。今回はいつもに増して力のこもった作品が多かったと思いました。

鈴木 幸江

特選句「風花や夫へ語らぬスープ膜」:「スープ膜」自体が謎である。この頃、私は分からないことは心に深く秘めつつそのまま放置しておくことが多い。いつか新しい発見が到来することを期待して。さて、謎の物体「ス ープ膜」!牛乳を入れたスープの脂肪膜か、それとも、腐りかけた証として現れたあの膜か?私も捨てる場合もあれば、そのまま頂く時もある。丈夫な夫だったら大丈夫と思ったり、きっと脂肪膜だと思ったりして。しかし、私はこ の句をそんな日常句としてだけではなく、暗喩の句として鑑賞したい。「風花」という季語の働きがそこにはあるのだ。晴天に舞う雪に、儚さに感応する日本の美意識がある。解釈にそれが入り込んで来るのだ。そうなると、俄然、 「スープ膜」が夫婦の何か秘密めいてくる。夫も気づいている(かもしれない)が、口には出さない。なにか差し障りのあることは、夫婦の絆が深ければ深いほどあるものだ。これは、是非とも、美しい夫婦愛の句として鑑賞させて いただきたい。

中村 セミ

どれもこれも良い、というか面白いというか、とてもいいので全部選んでもいいくらい、一杯いいのがありました。特選句は「内臓をぶら下げている雪女」この句は病気か、病的な人だろうと思いますが、老いの境地か、ど こか果ての地を旅するようなところがあり、僕は面白いと思いました。

菅原 春み

特選句「原曲は冬木を通りすぎる風」原曲ということばの斡旋がおもしろい。発想の妙味。特選句「せせらぎから人体をゆく枯野」枯野の概念がひっくり返ったようだ。金子先生を思い出した。

河田 清峰

特選句「鍬置いて大地に記す兜太の句」実感があり生活根ざしているところが良い!先生の行き方を自分のものにしていると思う。特選句「 一、一七忌記憶の咳が止まらない」いまだにあの日の虚無感が忘れられない!同感 です。

松本 勇二

特選句「義歯ぽろりシンクに落ちて除夜の鐘」義歯を素材にした句はあまり見受けないがうまく仕上げています。哀感と諧謔性を湛えた素晴らしい義歯俳句です。

新野 祐子

特選句「絵心経あばたのような柚子絞る(三好つや子)」絵心経っておもしろいですよね。まずはじめの「まか」が逆さまの釜、「ふ」が麩、「む」が指六本、最後の「か」が蚊の絵。思わず吹き出してしまいます。落ち込んだ時に見ると いいかも。それに「あばたのような柚子」がよく合っていると思いました。特選句「老人の脱皮密かに冬の虹」老人になっても脱皮するんだと言われると、俄然希望が沸いてきますね。そうありたいものです。冬の虹に静かな感動を 覚えます。入選句「身の中の水冬雲の一つ也」とても詩的で好きです。「也」という標記だけがちょっと気になりました。入選句「讃岐人あん餅雑煮で歳重ね」お正月らしくめでたい句なので、とらせていただきました。入選句「原 曲は冬木を通りすぎる風」作曲したり編曲するのは、自然のつくりだす音に負うと、研ぎ澄まされた感性がなければ出来ない句です。

三枝みずほ

特選句「一・一七忌記憶の咳が止まらない」あの日の事を振り返ると、地震の起きた日、その後、必死で生きた日々を含めて咳であり、一・一七忌なのだと感じた。特選句「餅焼くや希林に春恵、悦子もか」平成が終わって ゆく哀愁。それぞれに個性があった。来月は、ぜひ行きたいと思っていた矢先に主人に仕事が入ってしまい…残念ですが欠席します。ですが、娘が「お母さんのお膝で静かにしとくから、句会に一緒にいく!」とか張り切っています (笑)絶対うるさくするので、今回は辞退しますが、もう少し大きくなったら・・淡き期待。

吉田 和恵

特選句「ちぢむ肉叢初荷のように労りぬ」老いを静かに受け止め、長く続けて来られたからこその句だと思いました。肖りたいものです。「一・一七忌記憶の咳が止まらない」阪神淡路大震災の残酷で無惨な記憶、五年後、 鳥取西部地震の震源地は当地から5キロの距離、震度6弱でした。あの怖しい光景が甦ります。ただ「記憶の咳」には、少し抵抗を感じました。 

高橋美弥子

特選句「枇杷の花一日うごかぬ人に満つ(野田信章)」臥しておられる方でしょうか。窓の外の大きな枇杷の木が濃厚な香りを放っている。近づいて直接嗅ぐことはできぬとも、その人の、また作者の体と心に目一杯枇杷の花が満ちてい る。癒している。共鳴句でした。問題句「寒月や拡散A4にびっしりと」面白い句だと思います。下五「びっしりと」が拡散と意味が少しかさなるので、違う言葉を置いたらもっと面白いんじゃないかと思いました。皆さん、すごい 迫力ですね!勉強になります。/P>

野田 信章

特選句「節分会沖で豆かむ音のする」は、節分会の陸と沖との関わ方の中に、この日も海に出て働く人ありと知らされる句で、その絆の確かさが伺える句である。特選句「棒針のマフラーわたし風の人」は、棒編みに込めら れた一目ごとの気息まで伝わり、そのマフラーを纏っての「風の人」に快活な自愛の様が伺える。特選句「風花や夫へ語らぬスープ膜」は、日常詠にしてその心情の綾目の伺える句。「風花や」の設定と「スープ膜」というあえかな 物象感によって意味を押さえ込んで感覚の先攻しているところに注目した。

柴田 清子

特選句『正月よわたしは紙ヒコーキだからね』この句に惚れ込んでいます。正月よの『よ』だからねの『ね』が、この句の内容を断定的にしているのに、一役買っている。年の始めに、少し控えめでありながら強い主張を紙 ヒコーキに語らせているのね。特選句『あきらめたときにレモンは浮いてくる』心切り替えた瞬間の色がレモン色である。それでも、心の中は、レモンの酸っぱさ 泣いている。特選句『実南天たし算だけで生きてます』この作者の たし算だけの生き方、今日までの自分を振り返った時、たし算のつもりだったのに、引き算、割算となったことが、いっぱい。それも人生。実南天がみごとにこの生き方を受け止めている。特選句『父の忌の寒九の水を享けにけり』 この句に詠はれているお父様にして、この作者あり、一句一章、内容も詠いっぷりも格調高く、俳句の手本のような佳句だと思った。『梟の声は立体感である』も『せりなずな・・春の七草次はなあに』も特選にしたいなあ・・・。

亀山祐美子

特選句『地球とふ風の器よ冬すみれ』庭の片隅に俳句仲間にもらった冬みれがほったらかしなのに元気だ。『「地球」という「風の器」』の言葉のおおらかさ、景の大きさ「冬すみれ」の繊細さ、意外なたくましさ。の組み 合わせ。「冬の風」ではなく「冬すみれ」という季語の選択が効いている。風が哭き、風の冷たさが伝わる。凩と言わずに凩を詠み切きった佳句。寒中お見舞い申し上げます。気温の変化の厳しい日々ご自愛下さいませ。皆様の句評 楽しみにしております。

高橋 晴子

特選句「鍬置いて大地に記す兜太の句」折にふれ、ふと胸を突いて出てくる兜太さんの句の数に圧倒されっぱ放しだが、〝大地に記す〟という表現に作者の受けとめ方を感じて共感する。素朴で大きい句だ。問題句「美ら海 を汚し殺めし我が国や」自分達の外交が下手で能のないのを思わずに、民意や国民の思いを全く受け入れようとはしない独裁政権には全く腹が立つ。この句、その通りで、これ以上の表現の仕方がないが、と思いつつ。抑止力などと いう幻影にしがみついて、いつまで沖縄に基地を押し付けるのだろう。問題提議の句。

桂  凛火

特選句「幸先の種をまきます初日記」幸先のよいスタートを切りたいという気持ちが素直に書かれていることに素直に共感できました。初日記はいつも気持ちが改まり、よし今年こそは良い年にと思うものですが、句にする というのは何かよくないことが昨年起きられたのかとも推察します。誰にとってもいい年にしたいものですね。

佐藤 仁美

特選句「横抱きの郷愁空に凧」 懐かしんでいるのは、故郷か過去か…。皆、想いを抱えたまま生活をしています。それを「横抱き」とは、言い得て妙。空高く揚がる凧とともに、憂いを昇華して力強く生きていこうという、 清々しさを感じました。特選句「平然と伸びし睫毛や冬の鹿」厳冬の中、すっくと立つ鹿。その澄んだ眼は何を見ているのだろうか。凛とした様子を、睫毛で表現するなんて!素敵です。

野口思づゑ

特選句「肉体は神への手紙シクラメン(増田天志)」視点が面白い。ならば良い内容の手紙にしなくては、と思う。特選句「母の知らぬ我が三十年よ雑煮椀」お母様を亡くされて三十年なのか、やむを得ない事情で別れて三十年なのか、 母親と別れてからの年月を「母の知らぬ」とした上5を新鮮に感じた。母が作った雑煮、そして今は自分で作ったその味の雑煮、そして三十年と句全体にドラマ性がある。

野﨑 憲子

特選句「晩柑や師の言魂の陽の雫」私は柑橘類が大好きだ。かつて「蜜柑の中に居眠りおぢいさんがゐる」と日溜りの中の先生を詠んだことがある。もちろん、先生は、他界されるまで少年であり、青年でいらしたが、道場 等で、ふっと力を抜かれた時、垣間見たスケッチのような拙句だ。先生の言の葉は、「陽の雫」のように、ますます私の中で大きく膨らんでいる。「晩柑」が、良い。特選句「節分会沖で豆かむ音のする」幻想の世界を目の当たりに するような佳句である。二ン月の潮騒と鬼の喰らう煎り豆の芳ばしい香が、姿態が、一気に伝わってくる。省略の妙。問題句「手の初動北斗七星掬うかな」とても惹かれた作品である。北斗七星を掬うという、霊的な儀式を思わせる フレーズが良い。ただ、「掬う」と上五の「手」の重複が気になる。惜しいと思った。 

(一部省略、原文通り)

袋回し句会

鍬始め
鍬始め猫の額の畑持ち
鈴木 幸江
大空を耕してゐる鍬始め
柴田 清子
時間軸ずれしままなり鍬始め
藤川 宏樹
死ぬときはこの顔がいい鍬始め
田口  浩
鍬始め無音の底の海潮音
野﨑 憲子
山の田へ老婆清々鍬始め
銀   次
岡の上に電話ボックス鍬始め
野澤 隆夫
初夢
初夢は布団をけつて飛び起きる
亀山祐美子
初夢の母の花園まで歩く
田口  浩
初夢や貘(ばく)がお腹をこわしたり
鈴木 幸江
初夢や袋回しの句に悩む
野澤 隆夫
掴んだ起きた消へた初夢
銀   次
初夢の金子兜太や大笑す
野﨑 憲子
空白
空白の一日過ぎて牡丹鍋
藤川 宏樹
妻定年迎えし我は空白なし
漆原 義典
本日を空白として午睡せり
銀   次
湯気に隠れて空白の女正月
田口  浩
空白が広がつてゆく初夢に
亀山祐美子
空白の時間ありがた初烏
野澤 隆夫
わたくしの空白いつも枇杷の花
柴田 清子
郵便受け
父の所業の郵便受けが歪む
田口  浩
初夢や郵便受けの無くなりぬ
鈴木 幸江
郵便受けぽとりと冬の日溜りよ
野﨑 憲子
梅が香や荒れし玄関郵便受け
野澤 隆夫
冬薔薇の棘の詰った郵便受
柴田 清子
布団
女房の布団を質に鍬始め
亀山祐美子
頭の中で事が進んでいる布団
田口  浩
山脈や空飛ぶ布団二つ三つ
野﨑 憲子
布団畳む人いて仕舞う人のおり
鈴木 幸江
石畳いろはもみじのかけ布団
藤川 宏樹

【通信欄】&【句会メモ】

安西 篤☆香川句会、相変わらず頑張ってますね。何よりも持続することが大切です。それに「これからますます面白くなります。」という意気込みも頼もしいですね。谷さんの逝去は大きな出来事でした。兜太先生が可愛がっ ておられた人でしたから。先生の霊に導かれたのかもしれません。今年は秋の大会でお世話になりますので、これを一つの契機に大きく飛躍されるものと期待しています。第九十回の共鳴句「肺呼吸の青いさざなみ冬は来ぬ(大西健 司)」「神獣鏡水の羽ばたく音したり(三好つや子)」「ペガサスを知らぬ心臓愚に生きて(若森京子)」「びなんかずら鼻梁のまわり空気濃し(矢野千代子)」

平成最後の初句会は、サンポートホール高松の会議室が取れず、藤川宏樹さんのご厚意で再び「ふじかわ建築スタヂオ」をお借りして開催いたしました。鋭い句評が飛び交うのも、なんのその、中野佑海さんや柴田清子さんが艶 やかな和服姿で、句会を華やかに包み込んでくださいました。お陰さまでとても充実した句会でした。「ふじかわ建築スタヂオ」は、前回より、トイレがリニューアルされたり、藤川さん特製の扉大のビッグホワイトボードや柱時 計も掛けられ、より快適な空間に進化していました。また利用させて頂きたいです。ありがとうございました。

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