2015年12月29日 (火)

香川句会報 第57回(2015.12.19)

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事前投句参加者の一句

      
枯色に泥(なず)む山里離れ牛 中野 佑海
田の神の在すがごとく麦青む 稲葉 千尋
散歩道遠回りして日記買う 髙木 繁子
感情を吸い込む冬野駆けるべし 伊藤 幸
木枯しや閑と閑閑として涙 KIYOAKI FILM
雪が降るどこかでピアノ誰か病み 谷 孝江
大空のかすかな痺れ冬ゆうやけ 月野ぽぽな
よく話す雀に会える冬うらら 河野 志保
骨相のきれいな木です蛇眠る 三好つや子
寒桜千手観音臍痒い 夏谷 胡桃
感情の熱(ほて)りかな蓮の骨泛ぶ 矢野千代子
雪女と君の背中に書いてある 郡 さと
バス停は落葉の山の吹き溜まり 古澤 真翠
完璧な瑕疵となりたる月うさぎ 増田 天志
ランナーは玉の汗なり冬日さす 漆原 義典
霜柱地球防衛合唱団 亀山祐美子
四肢軟弱のわれ山繭の重ね着美し 若森 京子
流氷や躰の真芯貫いて 銀   次
冬天へ掌ここにある命 三枝みずほ
禍も福もつぎはぎ冬温し 小山やす子
ターシャの家ジンジャー堅パン聖樹かな 田中 怜子
空箱の溜るくらがり十二月 高橋晴子
火事明かり浴びればみづみづしき躰 小西 瞬夏
冬の亀婚活なのか石の上 町川 悠水
指揮棒にあわせて踊るポインセチア 野澤 隆夫
四回転ジャンプ蓮の実飛んだ 重松 敬子
翡翠が明るみとなる薄き闇 竹本 仰
冬座敷わたしにものを言う人形 寺町志津子
こんにちは落葉がカラカラついてくる 中西 裕子
戦を語る義父よ秋ぐみ噛むように 野田 信章
踏みだせぬ冬菜ざぶざぶと空の下 桂  凛火
亡き母をまだ越えられぬ卵酒 藤田 乙女
鍵探す鍵穴ひとつ冬銀河 野﨑 憲子

句会の窓

増田 天志

特選句「雪が降るどこかでピアノ誰か病み」一面の銀世界。雪降る間に、灯火が幽かに揺れてい る。その一つ一つに、生の営みがある。宜しくお願い致します。また、出席させて頂きます。楽しい句会でしたね。

中野 佑海

特選句「散りぬるは同じ間合ひの鴨の陣(亀山祐美子)」言葉の並びが流れる水のようにスルス ルと書かれている。飲んだ水がスルスルとのど越し爽やかに胃の腑に吸収されていくような。不思議な 魅力の俳句です。まるで平賀源内のカラクリ玩具のようです。問題句「四肢軟弱のわれ山繭の重ね着美 し」最初読ませて頂いたときは全く意味が分からなかったけれど、喩え様もない儚さが心に澱のように ひたひたと差し迫ってきて離れません。俳句と言うより、詩ですね。増田天志様。今回も滋賀から五時 間掛けて遠い香川まで海外旅行お疲れ様でした。相変わらずの鋭いのか温いのか分からない破天荒なご 指摘凄く面白く笑わせて頂き有難うございました。(まだまだ)青春十八(歳)切符でお出でになれる体力 にも敬服致します。やはり先月拳を突き上げ誓った甲斐がありました。また、来年も宜しくお願いいた します。

野澤 隆夫

特選句「玉子粥呆けし母と知恵くらべ(三好つや子)」玉子粥をめぐって作者とお母さんの攻防 があったのだろうか。小生も数年前には母との〝知恵くらべ〟のあったことを思い出します。〝諸行無 常〟遠からず小生にも子らとの知恵比べがあるのだろう…。「ターシャの家ジンジャー堅パン聖樹かな 」問題句というのだろうか?名詞の畳み掛けがターシャの生活を彷彿させてくれる。

三枝みずほ

特選句「踏みだせぬ冬菜ざぶざぶと空の下」空の下で冬菜を洗う日常と、そこから抜け出したい のか?もしくは、何かと葛藤し躊躇している作者に共感しました。「ざぶざぶ」と表していることで全 体を暗くさせず、前向きさも感じられます。冬菜を洗う作者と止まったままの作者の心、静と動の組み 合わせにも感心させられました。

銀    次

今月の誤読●「翡翠が明るみとなる薄き闇」。『フフと小さく含み笑いがこぼれた。怪人二十面 相はひとりごちた。「翡翠には赤もあれば白色もある、だが純粋に蒼いのはほとんどない。これこそが チベットのラマ寺院で千年前に奪われ、皇帝、大富豪の手を転々としてきたキッスイの蒼翡翠だ。この 翡翠を手に入れるに領土の半分を差し出す国王さえいようというものだ」。と、なんと! そのときス テンドグラスが木っ端みじんに割れた。そこにスックと立ったは、我らが名探偵・明智小五郎だ。「二 十面相くん。もう夜明けだ。その「翡翠が明るみになるとき」、さあどんな色に変わったかね?」。二 十面相はハッと翡翠に目をやり、一瞬躊躇した。明智はそのスキを逃さず言った。「本物はこの手にあ るのだよ。さあ、見たまえ」と手にしたものを放り投げた。瞬間、反射的に二十面相はあたかもボール を交換するがごとく、手にした翡翠を明智に投げ返した。「引っかかったね二十面相くん。わたしが投 げたのはよく出来たガラス細工だ。そしておまえが投げ返したのは本物だったんだよ」。「薄き闇」で の明智のトリックプレーだったのだ』(乱歩はここまで読み返して、つまらん、スランプだ。こんなト リックじゃ乱歩の名が廃る。と、原稿を破り裂いた。午前四時、まだ〆切りには間がある)ーー乱歩先 生ゴメンなさーい。

古澤 真翠

特選句「孤独なる魂ひとつ冬すみれ(藤田乙女)」静謐な作者の心が 伝わってくるような句。 言葉を交わさなくても通じあえるようなお人柄に 親しみを感じました。今年も あと僅かとなりました 。来年も何卒よろしくお願い申し上げます。

竹本 仰

特選句「霙しなやかに表出する無人駅(伊藤 幸)」無人駅というのは間違いなく昭和の繁栄の 嵐のあとの空き箱です。マッチ売りの少女じゃないけれど、一瞬夢が燃えさかっていたという事実があ ります。そういえば、昔、倉本聰の「今日、悲別で」という舞台に接しましたが、廃坑に追い込まれる 町の駅から若者たちが次々と都会に出てゆく、その見送りのシーンがあり、その輪の中から一人の青年 が胴上げで放り投げられた瞬間、ストップモーションとなり、「22歳の別れ」のイントロが流れる溶暗 となっていました。あの衝撃というか、一つの時代の見事な切り口に感心いたしましたが、この句は、 その後日談として登場するにふさわしいと味わいました。特選句「鍵探す鍵穴ひとつ冬銀河」この世に 生まれたからには、誰でもひとつの鍵を探してる、しかもそのひとつは意想外の身近なところからとい う感じで受け止めました。そして、身近なところほど、多く神秘は潜んでいると。だから、なぜかこの 「冬銀河」が身近なものとして感じられるところが面白いと思います。というか、冬銀河に住んでいる 私を思い出させる「郷愁」を感じさせてくれ、何か大変うれしいと思いました。以上です。寒くなりま した。句にも、いろいろな寒さが盛り込まれておりました。選をしながら、結構ぬくもってきたのは、 言葉のもつ息吹きのせいだったでしょうか。みなさん、いつも、ありがとうございます。今後とも、よ ろしくお願いいたします。

稲葉 千尋

特選句「四回転ジャンプ蓮の実飛んだ」四回転と蓮の実飛んだの取り合せの良さと共に、スケー トのジャンプが浮ぶ。「霜柱地球防衛合唱団」漢字ばかりでありながら合唱団と捉えた霜柱が嬉しそう 。

町川 悠水

句会のはじめに、出席者は交代制なの?と思われるような顔合わせに、まず驚きました。でも、 通信手段を駆使しての海程香川句会、加えて世話人が、野崎さんですから、こうなのだと納得。なにし ろ、母なる川に帰ってくる鮭のような体で、滋賀の都の俳人まで現れるのですから。本当に驚きました 。その余韻が冷めないところでの選句作業。二回目なので時間内に作業は終えたものの、実際は難航。  では、選評を。特選句「冬の噴水しあわせの呪文唱えるよ」。冬の噴水としあわせの呪文が絶妙。小 生もこのような句をつくりたい。準特選句「骨相のきれいな木です蛇眠る」。蛇が燕の巣を狙うために 、まずドアノブに絡まり、さらに上を狙っているのを拝見したことなど、蛇のウルトラ技を数々見聞し た小生にとって、この句は拍手喝采もの。準特選句「霜柱地球防衛合唱団」。漢詩風俳句は小生の好み 。讃岐平野では霜柱をあまり見かけなく、見かけたにしてもここまでは詠めないでしょう。二年前まで の三十余年間埼玉県中部に住んだ小生には、環境汚染など荒らしまくっている人間に対して、地球が精 一杯の抵抗をみせているという観察が新鮮。佳句ながら問題句「完璧な瑕疵となりたる月うさぎ」。鋭 い捉え方に感心しつつも、選評など聞くうちに問題句に。完璧、瑕疵が厳格表現であるだけに、しかも 瑕疵は普段使わない法令用語であるだけに、なりたるのような曖昧ないしは流れた表現は、作品として むしろ惜しまれるというのが、我流評価。私なら、「完璧な瑕疵であるぞよ月うさぎ」としたいですね 。〈自句自解〉「大根の体操葉っぱの上げ下ろし」は庭のミニ菜園で気づき、出来た句です。大根の葉 は風にも揺れますが、育ててみると雨や日差しによって上げ下ろしをするのです。しかもこの朝は、近 所のラジオ体操に偶々出かけて行き、帰ってきたところで、そうか大根も体操するのだと発見したので した。隠居ならこその発見をお笑いください。

小西 瞬夏

特選句「空箱の溜るくらがり十二月」「溜まる」は「ま」がいるのでは。また、「空箱に」のほ うがいいだろうか。などと細かいところは気になりながらも、十二月の暗がりを空き箱の中に発見され たさりげないところに感銘を受けた。お歳暮やら、年末年始の用意やら、なにかと箱が空になる時期か もしれない。日常の中にふっと訪れる空虚感をとらえたと思う。

KIYOAKI FILM

特選句「バス停は落ち葉の山の吹き溜まり」バス停と落葉の取り合わせが良かった。以下に続く 映像も心地よいです。問題句「火事明かり浴びればみづみづしき躰」 好句です。問題句と言うよりも 、好句です。

野田 信章

「大空のかすかな痺れ冬ゆうやけ」「骨相のきれいな木です蛇眠る」「悴んできてすこしだけ木 の気持ち(月野ぽぽな)」これらの句は、私にとって、平明にして純粋感覚の句と呼びたい作品である 。しかも確かな肉体の反応がある。今はじめて見たものではなく、この誌上で時折お目にかかるもので ある。独りでのぼせて空回りした作句の途次で、ふっと振り向かせてくれるのもこれらの句である。句 作の原点ここにありと、感のたいせつさを示唆してくれる句が他にも多々ある。年の終りに当り感謝申 し上げます。良きお年を。

河野 志保

特選句「霜柱地球防衛合唱団」漢字の羅列が印象的で、すんなり心に入ってきた。霜柱は大地に 広がる小さな命だと初めて気付いた。自然の営みこそ「地球防衛」なのだと納得。それに朝日に光るさ まは「合唱団」という感じがピタリ。環境への優しい眼差しと深い洞察を感じる句。

重松 敬子

特選句「骨相のきれいな木です蛇眠る」木々は、季節折々の美しさを我々にみせてくれる。すっ かり葉を落としてしまった裸木も、又美しい。虚飾を脱ぎ捨てた、潔さを感じ、自然の懐の深さを感じ させる句だと思う。

亀山祐美子

特選句『父も子も昭和の生まれ大焚火(小山やす子)』焚火を囲む親子の関係性がほのぼのとし て好きな一句です。勝手に頑固親父の棟梁と跡継ぎだと決め付けています。逆選句『火事明かり浴びれ ばみづみづしき躰』「火事明かり」が「大焚火」ならまだしも、他人の不幸を喜んでいるようで不快。 いつもに増して難解な句が多く作者の意図が計り知れない。掴めない。頭が古いのでしょう。

田中 怜子

特選句「柿色に泥む山里離れ牛」風景が浮かびます。もうない世界なのか、まだあるのか、なつ かしい田園風景。特選句「禍も福もつぎはぎ冬温し」こんな穏やかな心境になれるといいけど。

月野ぽぽな

特選句「骨相のきれいな木です蛇眠る」形の整った木の様を「骨相のきれいな」といったところ が手柄。蛇もこの木の元を選んで冬眠しているかのようだ。香川句会の皆様、今年も憲子さんの情熱溢 れ且つきめ細やかなご運営のもと、句会をご一緒できて光栄でした。来年もどうぞよろしくお願いいた します。

小山やす子

特選句「骨相のきれいな木です蛇眠る」独特の発想で面白いです。木の相が想像されて其処へ蛇 を持ってきたのは真似できないです。

夏谷 胡桃 

特選句「亡き母をまだ越えられぬ卵酒」これは卵酒に惹かれました。なぜ卵酒なのだろう。以前 、村の小正月には公民館に女性だけ集まって卵酒を飲みました。私は大量の卵酒を作りました。なぜ、 卵酒?おばちゃんたちは夏祭りの時はビール飲んでいるから飲めない人たちではないのに。そう聞くと 、「そういうものだ」と言います。村は農村ではなく、山村です。炭を焼いて熊を撃って暮らしてきま した。戦争中は男たちが戦争に取られ、女性はドングリや木の根まで食べ、子どもを育てました。炭俵 も担ぎました。たくましく明るく優しい女性たち。もっと教えて欲しいことがあったのに、ひとり死に ふたり死に、小正月の集まりはなくなりました。私は、そんな母たちを越えられずに年だけ取っていき ます。こんなことを思い出した句です。特選句「東病棟あおしさむし馬繋がれ」たぶんわかりづらい句 なのかしら。私にはイメージが浮んできた俳句です。私は山暮らしをやめ、精神科病院勤務をしていて いました。精神科病院には、こういう感じがあると思ったのです。貧しい山里には生があったのに、近 代的に見えるきれいな精神科には生がない。あおしさむし馬繋がれているような感じです。この句の作 者はどんな人、どうしてこんなことがわかるのと思いました。問題句「鍵探す鍵穴ひとつ冬銀河」惹か れる句です。でも、なんだか既視感があって、特選にできませんでした。勘違いかもしれません。追記 :今月から参加します。岩手に住む夏谷胡桃です。句会というものに出る機会もないまま俳句を続けて います。思うように作れなくて、何度俳句をやめようかと思ったことか。でも、やめられそうもないの で、もう少し勉強していこうと思いました。よろしくお願いいたします。四国はあこがれの地です。お 金と時間ができたら四国と山陰を旅したいと夢見ています。

中西 裕子

特選句「踏みだせぬ冬菜ざぶざぶと空の下」踏み出せずとためらっているのに、ざぶざぶといさ ぎいい音との対比がおもしろいと思いました。「大空のかすかな痺れ冬ゆうやけ」の冬夕焼けが大空の しびれという表現も、しもやけを連想して面白かったです。今年は雑事に追われ、ご無沙汰ばかりで来 年は余裕があればいいな。余裕は自分次第よ、といわれそうですが。ご迷惑かけ通しですみませんでし た。懲りずに来年もよろしくお願いいたします。

寺町志津子

特選「戦を語る義父よ秋ぐみ噛むように」句意的にはよく見受けられるようにも思うが、「秋ぐ み噛むように」で、詩情溢れる句に。且つ新鮮。今こそ聞いておきたい戦争体験談。夏ぐみに比し、よ り素朴で野趣味のある秋ぐみ。義父の真摯な語り口、姿が、静謐かつ情感豊かに伝わり、それを聞き入 っている作者の義父への温かな気持ちも思われて心打たれた。特選&問題句「雪が降るどこかでピアノ 誰か病み」妙な選評であるが、下五の「誰か病み」の「誰か」の良し悪しが私には判断できず、その意 味で、私にとっての問題句と言えよう。まるで、映画か小説のプロローグのよう。これからどんな展開 があり、どんなエピローグが待ち受けているのか想像が膨らみ、最後まで特選を外せなかった。

桂  凛火

特選句「骨相のきれいな木です蛇眠る」骨相がきれいとは言いえて妙ですね。そこに蛇が眠るっ て絵になります。クール過ぎず甘くなく美しい絵のような世界観ですね。とても心ひかれました。〈で す〉の多用はどうかなと、おもうことも多いのですが、やはりここではいい味が出たと思います。

伊藤 幸

特選句「四肢軟弱のわれ山繭の重ね着美し」昨年半月版損傷で手術した。吾が身に降りかかって 初めて他人の痛みを知った。懸命に積み重ねた太く光沢のある繭は誰が見ても美しい。軟弱と諦めてし まわず作者にもガンバレとエールを送りたい。山繭の重ね着という表現に脱帽。特選句「禍も福もつぎ はぎ冬温し」何十年も生きていれば紆余曲折悲喜交々数々の禍福に遭遇する。今となればそれ等も皆よ き思い出。つぎはぎと笑いつつ言える年齢に達し、又冬温しと締められた潔さに敬意を表したい。

郡 さと

言い過ぎている句と、反対に言葉と背景の足らない句。勉強不足を感じた一年でした。(私が) 説得不足の私の選に、お付き合して下さって有り難うございました。ただ 俳句の世界は広くて、奧が 深いから、選に一喜一憂はいらない。どこかで、誰かに理解されるし、又、反対のこともあると感じた 一年でした。良いお年を。

高橋 晴子

特選句「すべりひゆ母より享けし蹠かな」・・「母より享けし足のうら」に、「すべりひゆ」と いう植物を対したところに響くものを感じる。問題句「さっきまで体にあった鵙の声」面白い句で、「 体にあった鵙の声」がどういうことかもっとわかればいい。単に耳に残っていたということなのか、そ れとも他の何かを感じていたのか。全く趣は別だが、楸邨に「冬鵙と共有世界もの言ふな」これは人間 関係をいっているのだが、なくなったことで、あったことを感じさせられた面白い表現で気に入ってい るが。

谷 孝江

特選句「雪女と君の背中に書いてある」雪女もこんな風に表現されると面白いですね。妖しくて ユーモアがあって、私も一度会ってみたいです。特選句「火事明かり浴びればみづみづしき躰」夜の遠 火事でしょうか。何かしら新鮮な情景が感じられます。今年もたくさんの句に出会えて学ばせて頂き有 難うございました。来年も何卒よろしくお願い申し上げます

藤田 乙女 

特選句「柿色に泥む山里離れ牛」原発や噴火などの災害で人間が手放さざるをえなかった牛たち のことを想像し、切ない気持ちになりました。大いなる自然の中で人間も生かされているもののひとつ であることを謙虚に受け止めて、生きるべきだと感じるこの頃です。「よく話す雀に会える冬うらら」 良寛さんの歌を連想しました。また、孤独な気持ちに日差しが差し込んでくるような感じや爽やかさも 抱きました。皆様のコメントを読ませていただくことが、初心者の私には、とてもよい勉強となってい ます。ありがたく思います。

野﨑 憲子

特選句「大空のかすかな痺れ冬ゆうやけ」天空は生きもの。その少しの変化に作者は耳を澄まし 眼を凝らす。その痺れは、人類の引き起した大気汚染やテロ事件が発端なのであろうか、凍て空に、夕 焼けが美しい。問題句「完璧な瑕疵となりたる月うさぎ」・・「完璧な瑕疵」って何?お月さまの兎が 、ビックリするような一句です。でも、不思議に、惹かれる作品でもあります。

(一部省略、原文通り)

袋回し句会

草刈鎌
天辺に朝日や冬の草刈鎌
野﨑 憲子
胸ぽんと叩き草刈鎌の術
増田 天志
こぶし降る港々の酒場かな
銀   次
宝船帆を降ろしたる夢港
中野 佑海
凍星
凍星や癌切りし夜の痰切れず
野澤 隆夫
マッチ棒焦げゆく芯は凍てる星
増田 天志
暖炉
暖炉より猫跳飛しぬ反抗期
町川 悠水
惻隠の暖炉でありし人の暮れ
中野 佑海
おしくらまんじゅう
極点のおしくらまんじゅうシベリア犬
銀   次
おしくらまんじゅうおいら絶対強くなる
野﨑 憲子
クリスマス
硝子器にあまたの指紋クリスマス
増田 天志
狂女らがクリスマスツリーを曳ゐてくる
銀   次
綿虫
綿虫とふ発火寸前の闇である
野﨑 憲子
綿虫の万華鏡なるハイウェー
中野 佑海

句会メモ

今回は、大津より、増田天志さんが参加され、三か月ぶりの漆原さんや、先月からご参加の町川さん 、そして野澤さん、銀次さん、私の6人での句会のスタートでした。男性ばかりに囲まれて、なんだか、私も、男性に なったような不思議に華やぐ気分、なかなか良いものですね。間もなく妙齢の佳人、中野さんの登場で、 バランス的にも落ち着き、句会も、ぐんと盛り上がって行きました。事前投句の合評は、気に入った作品への 鑑賞が分かれたり、意気投合したり、まさに<人生いろいろ>でした。続く、袋回し句会も、作者の色合いが垣間見られて興味深かったです。

平成二十七年が終わろうとしています。お陰さまで、「海程」香川句会は、今年、発足五周年を迎えま した。六月には、いつもの句会場を飛び出して、塩江・志度吟行に出かけました。武田編集長を始め、 月野ぽぽなさん、田中怜子さんなど、遠路おいでくださった方々もあり、生の吟行句会の醍醐味を存分に堪能しました。感謝です。

それぞれの作品が、ぶつかり合うことで、新しい発見が生れます。作者も、個性豊かな方々ばかりで、作品も、多様性を帯び、これからの句会が、ますます楽しみに なってまいりました。来年も、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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