第114回「海程香川」句会(2021.02.20)
事前投句参加者の一句
枯れ蓮やヒエログリフ(象形文字)は何語る | 佐藤 稚鬼 |
自由の碑わだつみの声冴え返る | 滝澤 泰斗 |
ひびあかぎれ母の昭和の幸不幸 | 植松 まめ |
新しき日常レタス剥がしをリ | 高橋美弥子 |
風花や触ってみたき馬の腹 | 榎本 祐子 |
雪ですか雪でしょうね友逝けり | 伊藤 幸 |
春の虹おむすび山も転げ出す | 漆原 義典 |
陽をふふみ蠟梅まさに開かんと | 田中 怜子 |
尻振りて鴨のお散歩三四羽 | 三好三香穂 |
風光る草食系のふくらはぎ | 伏 兎 |
今の世に麒麟は来るか椿落つ | 松本美智子 |
逡巡の一歩や少年ホトケノザ | 福井 明子 |
春ですねこんなに青が美しい | 重松 敬子 |
剪定のパチンと鳴りて午後静か | 佐藤 仁美 |
真夜の香はやわらかき牙ヒヤシンス | 月野ぽぽな |
おずおずと一輪の梅咲きはじむ | 藤田 乙女 |
やわらかい土を分け合う菫かな | 河野 志保 |
風ぐるま指で回せし一周忌 | 銀 次 |
兜太忌や明るく太く野を歩く | 夏谷 胡桃 |
寒明の空の律調たねを忌よ | 島田 章平 |
寒の空カタカナあふれ帰れない | 中野 佑海 |
風呂吹や昭和の家族十一人 | 稲葉 千尋 |
実の裏を洗う事の大切さ | 葛城 広光 |
みづなめて舌のざらつく蝶の昼 | 小西 瞬夏 |
あの ほら 言葉になる前冬木の芽 | 吉田 和恵 |
寒月のかけら掴まえ恋ふふふ | 増田 暁子 |
鉢木を今朝もうなりて寒ざらひ | 野澤 隆夫 |
暗き頭を爪立て洗う春の馬 | 豊原 清明 |
陽炎やぎよろ目の土偶掘り出しぬ | 菅原 春み |
スティGOスティ枯野の我らポチ | 野口思づゑ |
非正規のにべもなき鍋つつく犬 | 鈴木 幸江 |
新月の白狼森をうろつくよ | 桂 凜火 |
奥の間に招き入れたしぼたん雪 | 森本由美子 |
光年やいまさらさらと春のからだ | 若森 京子 |
話したいこといっぱいあった窓に雪 | 佐孝 石画 |
春祭自粛警察紛れいる | 荒井まり子 |
陽の風の宴荻葭枯れつくし | 野田 信章 |
釈迦の手へ冬どんぐりの犇めきぬ | 川崎千鶴子 |
パンジーの寝言はきっとありがとう | 高木 水志 |
約束の一つもなくて日永なる | 柴田 清子 |
春の暮水飴のよう都市国家 | 三枝みずほ |
シャーペンの折れし芯先春日影 | 松岡 早苗 |
紅梅に息深くして佇めり | 高橋 晴子 |
雪女立ち往生の車列より | 新野 祐子 |
存分に背中を掻いて冬日の犬 | 稲 暁 |
笑む犬と春笑む獣医学教授 | 藤川 宏樹 |
頬杖はつかない神戸震災忌 | 大西 健司 |
春は神代の水瓶の水どぶろくに | 田口 浩 |
二つの肺の黒くなる世界地図 | 中村 セミ |
グッバイ・コロナ私の冬の恋もです | 吉田亜紀子 |
寒の雨手紙の束を握りしめ | 亀山祐美子 |
立春や若き母来て起こされる | 松本 勇二 |
打音の森近くに父が棲みついて | 十河 宣洋 |
どの木にも春が棲みつきそうな日よ | 谷 孝江 |
いまいちどそっと抱きよせて雪女 | 田中アパート |
砥部焼きの皿に白魚母の忌近し | 山本 弥生 |
しぐるるや傷跡なぞるレコード針 | 増田 天志 |
新コロナをシルクロードという幻聴 | 久保 智恵 |
水仙のまはり透明死にとうなか | すずき穂波 |
日脚伸ぶ地蔵の顔ののつぺりと | 石井 はな |
不意の客去りて夜目にも梅明かり | 小山やす子 |
詩集栞は神籤の「大吉」みすゞの町 | 津田 将也 |
立春大吉坐禅の僧のシンメトリー | 河田 清峰 |
棒っ切れで水を叩いている恋で | 男波 弘志 |
冬うらら凡庸という安堵かな | 寺町志津子 |
うろうろと母の抜けがら春を行く | 小宮 豊和 |
末黒野にキリンの義足鳴る夜かな | 竹本 仰 |
野火と野火出逢はないではゐられない | 野﨑 憲子 |
句会の窓
- 大西 健司
特選句「話したいこといっぱいあった窓に雪」突然の別れから少し時を経てのつぶやきだろう。さりげない句だが心に沁みてくる。
- 小西 瞬夏
特選句「寒明の空の調律たねを忌よ」たねをさんとはお会いしたことがないのに私にとって存在感が大きい。「空の調律」という措辞に、目に見えないおおきな存在に対する繊細な感情を感じた。
- 増田天志
特選句「棒っ切れで水を叩いている恋で」虚しい恋は、形容矛盾。惨めな奴だなあ。マグマの恋をしてみろよ。
- 小山やす子
特選句「枯れ蓮やヒエログリフは何語る」お洒落な感覚の句に目が止まりました。枯れ蓮が効いていると思います。
- 葛城 広光
特選句「陽炎やぎよろ目の土偶掘り出しぬ」気分を具体的な物語にしている事が楽しめた。土偶にも愛嬌があるようで。
- すずき穂波
特選句「野火と野火出逢はないではゐられない」野暮な選評はよしておきます。 この句で小一時間は話せそうですね。
- 増田 暁子
特選句「おとこおみな綺麗な骨だ軒氷柱」軒氷柱が人間の骨に見えたなんて嬉しい性善説ですね。特選句「笑む犬と春笑む獣医学教授」楽しく、面白い比較が抜群です。「カリカリの堪忍袋連れて春」待っていた春への思い。
- 島田 章平
特選句「雪ですか雪でしょうね友逝けり」さりげない日常会話。その後に「友逝けり」と言う大きな展開。調べが美しいだけに悲しさの余韻がいつまでも残る。追悼句の秀句。
- 若森 京子
特選句「あの ほら 言葉になる前冬木の芽」最近やたらに、あの、ほら、が、多くなり言葉にならない。それでの相手に通じるのが不思議。〝冬木の芽?の季語が嘲笑っている様でもあり励まされている様でもある。特選句「五分後の記憶うたたね花大根(伏兎)」五分後になると又同じ事を繰り返し云う人を知っているが、?うたたね?と表現し?花大根?と明るい季語で救われた気持。本当は深刻な問題なのである。
- 十河 宣洋
特選句「どの木にも春が棲みつきそうな日よ」雪解けのころの森や林の風景。多分雪のない地方も明るい日差しに春を感じるのだろうと思う。春が棲みつきそうというよりすでに棲み始めているのである。
- 中野 佑海
特選句「ステイGOステイ枯野の我らポチ」自粛、Go to travel、自粛。それも誰もいない何も楽しいことの無い枯野で居ろって。僕らは捨て犬以下です。捨て犬なら犬らしく自由くらいは謳歌しなくてはって言うか、自由ってなんだ?ダメダメ。また、話長ーいって駄目出しが。特選句「存分に背中を掻いて冬日の犬」詰まる所、カウチポテトで自分の背中を掻くくらいの自由しか無いのか。もしくはこれが究極の幸せ!並選「新しき日常レタス剥がしおり」ほら、何気ないレタス剥がしが、人生楽しんでる事になってきたよ。これで良いのか?「春の虹おむすび山も転げ出す」幸せボケでとうとひうおむすび山も笑い転げています。香川に住んで東北大震災を真剣に考えられません。みんな香川に来ませんか?みんなで住みやすい所に転がり込みましょう。但し、辛い事のない分、感動もおむすび山が転がるくらいです。「軋轢が詩を孕ませて芽吹くかな」ほら、詩を感動を紡ぐには軋轢が必要なんですね。私の様なチキンには芽は出ないのです。「剪定のパチンと鳴りて午後静か」樹の剪定などというのは専門家にお任せ。私は静かにお昼寝タイム。「あの ほら 言葉になる前冬木の芽」はい、私達夫婦のお決まり会話。あれをあれして。そう言えばあれはどうなった。大丈夫あれは終わった。後は息子よ任せたぞ。「存分に梅を見てきし日の手相」商店街には夜になると、飲み客相手の手相見さんが机を出しています。私も30年くらい前、是非ともと言われて見て貰った事があります。今から大変な事が起こります。回避したければ、詳しくお教えします。とのこと。勿論、眉に唾を付けてお断り致しました。若さに大変は付きもの。梅に香りは付きもの。「雪女郎美人の定義なけれども」女は色が白くて柳腰なれば、男次第で、美人にもブスにも成れます。これってセクハラ発言?「詩集栞は神籤の「大吉」みすゞの町」金子みすゞは苦労多い人生を生きて、詩を残してくれた。その詩集に「大吉」のお神籤はいかにも重たく有りませんか? お手軽人生たのしんでる 中野佑海 昨日今日と寒の戻り。これも楽しく、俳句も温く。お身体大切に。
- 松本 勇二
特選句「風光る草食系のふくらはぎ」草食系のふくらはぎが発見。風光ると相俟って明るい一句となった。
- 寺町志津子
特選句「頬杖はつかない神戸震災記」一読後、はっとしました。一九九五年の阪神・淡路大震災。作者は、実際に遭遇された方ではないでしょうか?想像を絶する悲惨な被害に、「ああでもない」「こうでもない」と思案投げ首で頬杖をつくような悠長なことでは無く、如何に対処し、如何に生きていくか、切実な現実への対処を詠まれたともとれましたし、一方、毎年巡り来る神戸震災忌には、頬杖をついての回想ではなく、真からの追悼とともに、これからも力強く生きていこうの思いを強くもたれている作者が想像され、「頬杖はつかない」の語の持つ大きな意味合いに心動かされました。なお、「生きるとは老いて知るなり雪の夜」に、全く同感です。
- 豊原 清明
特選句「陽をふふみ?梅まさに開かんと」開花を待つ人の気持ちが伝わる。陽を感じているか。春を待ちわびている人の気持ち。問題句「老犬チバ今際冬蠅打ち守りぬ(野田信章)」:「老犬チバ」の響きが好いような。老い犬の哀愁。冬蝿が老い犬を立たせる。
- 夏谷 胡桃
特選句「宇宙は昏し冴え返る無言館(増田天志)」2年前にひとりで無言館はじめ長野へ旅をしました。いまの国のやり方を見ていると、「無言館」のような貴重な場所が蔑ろにされそうで心配です。「宇宙昏し」は悲観的すぎますが、地球も宇宙ですから地球がどうなるか悲観的になるのも当然です。宇宙から自然から人間からあらゆるモノから奪い、役に立たなければ捨てる。生き残る人はいるでしょう。自分は生き残る者だとどこかで思っているのかもしれません。幻想の中で生きているような気もします。作者の思いと違うかもしれませんが、このような俳句が作りたいと思いました。
- 桂 凜火
特選句「スティGOスティ枯野のわれらポチ」コロナ禍の棄民のような感慨でしょうか。われらポチで共同体としての不安やまた絆も感じられてよかったです。特選句「光年やいまさらさらと春のからだ」年月を経てさらさらになった体をいとおしむよう。こころもさらさらなのだろうか。光年やの上5に力があると思いました。
- 藤川 宏樹
特選句「あの ほら 言葉になる前冬木の芽」:「あの ほら」が言葉が出そうで出てこない、あのもどかしい間合いを的確に捉えています。「冬木の芽」の選択もピッタリ、口調も整っており素晴らしいです。
- 月野ぽぽな
特選句「新コロナをシルクロードという幻聴」一行が新しい地平を見せてくれて印象的だった。SHInKOROna とSHIruKuROodo 意味でなく音として味わうと似ていることに着眼いや着耳(?)されたところに冴えが極まる。時に耳は口や目ほどにものを言うものだ。思考の世界では否定的意味合いが定着している「新コロナ」への新しい解釈の仕方が、聴覚という感覚を信じる態度によって示唆されている。例えば、全てのことを導き、恵みと捉えるということ。兜太師は生前、ある例会にて「思想の輪郭を語らない」というようなことをおっしゃっていた。その後味は直線的、平面的になりがちなのだ。感覚を研ぎ澄ませ、そこでつかんだものを表現すること。それが、読者にそれぞれの解釈を許し、芳醇な享受を可能にする、こんなことを思い起こさせてくれた。感謝。
- 田口 浩
特選句「水仙のまわり透明死にとうなか」この句「推敲句のまわり透明死にとうない」であれば見過ごしたかもしれない。「死にとうなか」と「死にとうない」たった一字の違いで句は位を得た。「水仙のまわり透明」この花はもともとそう言うものを持っているのだが、「死にとうなか」の方言によって、水仙は清冽を深くした。風格のある一句である。「風光る草食系のふくらはぎ」巧い。楽しい。「寒明の空の律調たねを忌よ」たねをさんは野﨑さんと「海程香川」を立ち上げた人だと訊いている。寒明けの空に雅楽の流れるような人だったのだろう。故人を思って心象風景がひろがる。「春の暮水飴のよう都市国家」:「都市国家」を古代、中世の自由都市ではなく、地球が滅亡したあとの惑星に存在する、超近代国家を連想した。そこに鼈甲色した、水飴のような春の暮が見えるのである。この句には春の郷愁があろう。「棒っ切れで水を叩いている恋で」叩け、叩け、バシャバシャ叩け、こう言った質の恋は、年齢に関係なくあるものだ、時は春・・・叩け叩け叩けー。
- 河田 清峰
特選句「麦青む石子詰てふ停留所(重松敬子)」石子詰という地名は知らないが麦踏みの哀しさが響いてくる句である。停留所もいいですね。
- 福井 明子
特選句「風ぐるま指で回せし一周忌」下北半島の霊場恐山宇曾利湖のほとりの幾本も並んだ風車は、風を受けて、からからと回り続けています。まるで亡き人の心に触れるようで去りがたいのです。掲句は、風ぐるまを指で回す、のですね。受け入れがたい一周忌までのおこころが込められています。どうかそのお気持ちを、風に天に、おゆだねになられますようにと願います。特選句「あの ほら 言葉になる前冬木の芽」冬木の芽とは、言葉になる以前のためらいにもつながりますね。空白の二文字分は、音符の休符のようなリズムを持ってはずんでいます。
- 榎本 祐子
特選句「野火と野火出逢はないではゐられない」芽吹きを促すための野火。その野火が意思をもって逢い合おうとする。火の属性としてのエロスを感じさせる。
- 伊藤 幸
特選句「新しき日常レタス剥がしをリ」年初における作者なりのポジティブな姿勢が窺える。それは抱負であり覚悟とも。特選句「あの ほら 言葉になる前冬木の芽」なかなか即言葉が出てこない歳になりましたが冬木の芽、マダマダ大丈夫。頑張りましょう。一拍の字明け二箇所が諧謔性を増し共感を呼ぶ。
- 高木 水志
特選句「あの ほら 言葉になる前冬木の芽」俳句を作るときに自分の感覚を言葉にする過程を冬木の芽に例えたところがなるほどなあと思って特選に選びました。
- 谷 孝江
特選句「頬杖はつかない神戸震災記」当時の事を忘れてはいませんが段々と記憶が遠のいて来ます。その頃関西方面には知人が数人いましたので無事を確認するまでは心が休まりませんでした。何年経過しようが忘れることの無い震災忌です。「頬杖をついて」思い出すことなど決してありません。
- 滝澤 泰斗
特選句「雪ですか雪でしょうね友逝けり」通夜で焼香を待っている友二人・・・友の死が一層寒さを際立たせている・・・案の定、雨とも雪ともつかぬものが降ってきた。その何気ない会話が醸す友への惜辞に魅かれました。特選句「寒明の空の律調たねを忌よ」2010年でしたか、大阪に単身赴任していた時に若森さんから矢野さんの大阪句会を紹介され、一度だけ高橋たねをさんと句会でご一緒しました。高橋さんは晩年の笠智衆さんに似ている印象で背筋がきりっと伸びて中七のイメージそのもの。心に刻まれた一句になりました。「ひびあかぎれ母の昭和の幸不幸」私の母もこの句に代表される人でした。昭和の前半はまさに戦争の世紀・・・そこに幸せも不幸せも凝縮していた世代であったことは間違えない。あかぎれに味噌擦り込む母を抱きしめたい。「軋轢が詩を孕ませて芽吹くかな(川崎千鶴子)」軋轢による仲違いがどんな詩を想起させたのか詩を孕ませは読み手に多彩なイメージに誘い込む・・・やや弁証法的な理屈っぽさを感じさせるが芽吹くことで合一が生まれたとするなら、感服せざるを得ない。 「明晰の空簡潔の冬木立(稲暁)」冬日和の真っ青な空に葉を落とし切った木立が黙って屹立する。明晰、簡潔・・・言うことなし。「みづなめて舌のざらつく蝶の昼 」蝶々をこんな風に観察して一句にまとめた力に感心していただきました。「日脚伸ぶ日和見主義に生きてきて」ややもすると、日和見の危うさに飲み込まれないよう抵抗を試みるが・・・楽に生きる知恵みたいなものが日和見にあり、なぜか惹かれました。「新コロナをシルクロードという幻聴」素晴らしいところに気が付かれた・・・お手柄に魅かれました。
- 河野 志保
特選句「水仙のまはり透明死にとうなか」:「水仙のまはり透明」は作者の心象風景か。限られた人にしか見えないもののような気がする。鋭敏な感覚と悲壮な展開に胸が締め付けられる。
- 佐藤 稚鬼
特選句「立春大吉座禅の僧のシンメトリー」立春大吉。寒さが極まって春の気が兆す時に参禅の墨染のモノトーンの整然たる姿のシンメトリー。一切皆空の時間と空間共有の景は共感できます。
- 伏 兎
特選句「あの ほら 言葉になる前冬木の芽」やがて花や葉になる冬木の芽を通して、脳から言葉を絞りだし、紡いでいる作者が目に浮かび、感銘。特選句「冬の橋何か奪はれつつ渡る」何かを得るということは何かを失うこと。そんな人生観が込められ共鳴。あえて冬の橋を渡る、前向きな生き方にエールを送りたい。入選句「ダイヤモンダストとおくに救急車(新野祐子)」耀うスピリチュアルな世界と、不穏な音との対比に注目。印象深い句に仕上がっている。入選句「話したいこといっぱいあった窓に雪」友人や仕事仲間との永遠の別れだろうか。真っ直ぐな表現が心に刺さった。
- 田中 怜子
特選句「枯れ蓮やヒエログリフは何語る」枯蓮の情景が鮮やかに浮かびました。特選句「日輪の重さと思ふしやぼん玉(野﨑憲子)」これも状況が目の前に浮かびました。大き目のしゃぼん玉が虹色に光りながら時にいびつになってゆらゆらしている姿を。「末黒野にキリンの義足鳴る夜かな」確か、キリンの子どもが足が不自由で補装具をつけながら歩いているニュースを見たことがあります。
- 吉田 和恵
特選句「自由の碑わだつみの声冴え返る」あの戦争の大義って何だったのでしょう。戦死した伯父の墓石には享年二十才と刻まれています。特選句「水仙のまはり透明死にとうなか」水仙をとり囲む気が迫ってきます。ん・ん。死にとうはなかばい。問題句「ふたりで見たといふから火事はねたましく」やや!八百屋お七ついに登場か!火事なぞに当るのは止して自分を信じてあげませう。(説教婆か) 自句「をとこおみな綺麗な骨だ軒氷柱」の表記に付いて・・・「をとこ」は只の「おとこ」より存在感があるかなーと思ってそうしました。一方対する女は「をんな」かなとは一瞬思いましたが、まあこちらは普通の「おんな」でいいかと・・・、古人・現代人まあ、あいまいは私ですから、このままで・・・。けしからんという人には へへへ・・・。
- 佐藤 仁美
特選句「おずおずと一輪の梅咲きはじむ」:「もう、咲いてもいいのかなぁ?」と聞こえてきそうです。特選句「立春や若き母来て起こされる」夢の中に出てきてくれた母は、記憶の中で輝いていた頃のお母様なのでしょう。懐かしさと切なさが、入り混じります。
- 竹本 仰
特選句「真夜の香はやわらかき牙ヒヤシンス」選評:ヒヤシンスの香りのなかに或る痛みを感じた、微かな毒性ゆえの美しさというのか、そういうものがよく捉えられていると思いました。虚子の〈白牡丹といふといへども紅ほのか〉に似たもの、でも、美に流されず「やわらかき牙」と美の逆説がしっかり語られているところが心にくいです。虚子の臈たけた見方に対し、青春のいきいきした感性を感じます。特選句「みづなめて舌のざらつく蝶の昼」選評:想像の中の真実味でしょうか、奇麗で儚い蝶の外見をひっくり返したリアルな表現に魅力を感じました。「水」ではなく「みづ」、それが「ざらつく」、濁音の繰り返しが受け入れにくさ、生きにくさを、的確に描いています。一言でいえば、退屈の中にある真実が見事に浮き彫りにされています。これを生活感とでもいうのでしょうか。母音でいえば、五七五の頭のi音のつながりが、長く続く単調さのやりきれなさを思わせてもいます。特選句「春の風吸って吐いて吸って吐いて臭い(銀次)」選評:春というものの生臭さを感じ、その感覚に共感しました。下萌えという季語でも、ちょっと緑がという感覚でとらえがちですが、実はそうではなく、見た目とは裏腹に一気にすべて勃発、という面があります。そういう風に、春風のどこが爽やかなんだ、あれは生臭いんだという面をきちんと表しているようです。ニーチェ先生は、青春とは不愉快なものだよというようなことを仰っていましたが、そういうくもりのない目を感じました。問題句「寒の雨手紙の束を握りしめ」選評:この句の後に?のようなスペースがあるようなヘンな感覚を味わいました。置かれていた手袋のような、この中途感。連句の中の一片が来て、あなた、続けなさいよと言われたような。この言わない感ってどうなんだろう、ありなんだろうか、と妙にもどかしく。町でこんな人を見かけたら、気になって話題になってしまいますが。皆さんは、どう受け取りました? すっかり春めいてきました。淡路島には、非常事態宣言にいっさいかかわりない方が、外出規制を知らないのでしょう、大挙をなして県外ナンバー車が乗り込んできています。実は、コロナ後、ずっとなんですが。ところが、時々コロナの方も来ていたようで。国民の皆さんは本当に我慢を…という傍らで、これがまあ或る地方のいつわらざる実態で。本当に帰りたい子や孫は言いつけ通り帰って来ず、外出を見合わせる地元の住民も多い中で、見も知らない方々がどさっと。うーん、でも、コロナが終息したら、この島にはまた誰も来なくなるとも。ちょうどいいヒマな時の遊び相手になる女の子のような。まあ、淡路島における地方人の感性は、そんなところでしょうか。みなさん、気を付けてください。今後ともよろしくお願いいたします。→ こちらこそ、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
- 高橋美弥子
特選句「紅梅に息深くして佇めり」紅梅の濃香を深く感じながら、しばしその美しさに佇んでいる作者の姿が見える。「息深くして」がよかった。問題句「末黒野にキリンの義足鳴る夜かな」義足のキリンがいることはニュースで見た事がある。義足が鳴るってどう言うことだろう。季語の末黒野と相まって深く味わってみたい句です。
- 野田 信章
特選句「釈迦の手へ冬どんぐりの犇めきぬ」は、三音節で読み下しながらも「冬」で半拍休止して、冬そのものの到来をはっきりと印象付けたい。その上で櫟、楢、柏など山野そのものの結実感の「犇めきぬ」という生気ある把握が一句の内容を豊かにふくらましていると読みたい。そこに自と、秋から冬へ向かうその山野を逍遥し思索する若き日の仏陀ゴータマの人間像をも現出されてくるかと想うところである。新たな視点で仏教への関心を呼び覚ましてくれるのも原始仏教の魅力かと考察するところである。
- 三枝みずほ
特選句「棒っ切れで水を叩いている恋で」地を叩くと棒の反発、土埃、手の痛みを感じるところだが、この作者は水を叩く。水は全てを受け止め、流してゆく。行きどころのない想いを水を叩くことによって納得させようとしている葛藤がある。特選句「末黒野にキリンの義足鳴る夜かな」麒麟が義足であるという非現実が逆に神話や物語で終わらせないリアリティを生み、現代社会の問題に切り込んでいる。いずれにしても麒麟は来た。ここに光を感じたい。
- 野澤 隆夫
特選句「バレンタイン十二個の手にジャンプ傘(藤川宏樹)」幸せ絶頂の作者。「ジャンプ傘」が効いてます。それにしても12個はすごい!もう一句。「春の水寛の戯曲の愁歎場(福井明子)」菊池寛『父帰る』!小生も寛で何句か作句するもイマイチ。春の水を季語に選び、感涙の場面が浮かびます! 秀句。
- 久保 智恵
特選句「今の世に麒麟は来るか椿落つ」とてもきれいな句です。一番好きです。
- 野口思づゑ
特選句「話したいこといっぱいあった窓に雪」何かの事情でもう話す機会が無くなってしまった方と過ごしたお部屋の窓から雪が見えたのかもしれませんね。しみじみとした句です。特選句「立春大吉坐禅の僧のシンメトリー」名僧の坐禅姿は、優れた舞踏家のポーズのように美しいと感じます。「立春大吉」でその姿を讃え、シンメトリーの語感からは静寂な空気が伝わってきます。
- 中村 セミ
特選句「末黒野にキリンの義足鳴る夜かな」野焼きの跡の黒い野にキリンの義足鳴るのだろうかとは思ったが不思議な心象風景だろうと思った。木々等も燃え残って黒くなっているだろうから、それをキリンの義足としたのかもしれないし、春の風に揺れてギシギシと夜に鳴っているのかもしれない。特選とします。
- 石井 はな
特選句「春ですねこんなに青が美しい」この句を読んで、やっぱり春は青だと思いました。どんよりとした空が、真っ青な空になり空気は軽く暖かくなって、季節は青春を迎えているって実感します。/P>
- 稲葉 千尋
特選句「剪定のパチンと鳴りて午後静か」梨畑の剪定音を想像している。園にこもる音。特選句「をとこおみな綺麗な骨だ軒氷柱(吉田和恵)」軒氷柱を男と女の骨とは、この飛躍良し。
- 男波 弘志
特選句「やわらかい土を分け合う菫かな」人間が忘れているもの。対立概念からの脱出。「雪ですか雪でしょうね友逝けり」友との対話が雪の息そのものに。
- 川崎千鶴子
特選句「夜の向こうに失言のように雪(佐孝石画)」雪が降って嬉しいのはほんの少しの雪と幼い頃で、大人になれば、寒くて、生活しにくくなるのを「失言のよう」と表現したのが素晴らしく、失言は後々まで後悔します。「風光る草食系のふくらはぎ」たおやかな女性の丁度良い白いふくらはぎが浮かびます。 綺麗な女性なのでしょう。「野火と野火出逢はないではゐられない」激しい情熱を感じます。「竹藪に身長伸びる薬ある(葛城広光)」:「身長伸びる薬」は巧みだなあと感動です。「末黒野にキリンの義足鳴る夜かな」キリンに義足を付けた話を見たが、末黒野にこれから若葉が芽生える時に「キリンの義足」がもしかしたら真実の足が生えるのかもと思わせる素晴らしさ。
- 新野 祐子
特選句「あの ほら 言葉になる前冬木の芽」斬新ですね。類想がないのでは。冬木の芽との取り合わせが抜群です。特選句「冬の橋何か奪はれつつ渡る」雪解川ほどではないにしても冬の川を見下ろすと水嵩も多く恐ろしい。橋を渡る時の緊張感みたいなものを「何か奪われる」と捕らえたのにとても共感しました。入選句「野火と野火出逢はないではゐられない」「竹藪に身長伸びる薬ある」どちらも独自の視点でおもしろい。
- 植松 まめ
特選句「話したいこといっぱいあった窓に雪」理屈なしでこの句大好きです。話したかったのは誰でしょうか?私は母です。自分の口下手を悔やんでいます。特選句「シベリアや凍てつく月を踏み砕く(夏谷胡桃)」シベリアの句は戦争を体験された方かと思いました。気になる句「人体のごとく冬薔薇点検す」冬はわが家では薔薇の剪定と言う大仕事があります。 その時根元にカミキリ虫の幼虫に食害されていないか気をつけて見ます。健康診断みたいです。以上ですよろしくお願いします。
- 三好三香穂
特選句「しぐるるや傷跡なぞるレコード針」私の青春時代は、まだLP版のレコード゛さして音楽好きでなくとも、家には何十枚かのLP版があり、何回も聞いて擦り切れそうものもあり、時々ノイズがはいる。そんな青春の甘酸っぱく、ほろ苦い思い出を蘇らてくれました。「兜太忌や明るく太く野を歩く」文字通り、兜太師の明るく元気な様を受け継いで、歩んでいきましょう。1点の曇りもなく、明るい句調に励まされる1句てす。
- 銀 次
今月の誤読●「冬の橋なにか奪われつつ渡る(すずき穂波)」彼は橋の中途まできたとき、傍らに彼女がいないのを知った。ふり返ると彼女は橋のたもとでじっと足もとを見たまんま佇んでいる。「なんや?」彼が聞いた。彼女はしばらく黙ったのち、ほんの小さな声で「うち、行かれへん」とつぶやいた。「なんでや急に。一緒に行こうて言うてくれたやないか」。またしばらく沈黙がつづいたのち「この橋渡ったらもう帰られへんのやろ」と彼女が言った。「そうや。その覚悟や。もうこんなとこに未練はない」。「そやけど」。「そやけど、なんや」彼の言葉にはわずかに怒気が感じられた。「なんもかも捨てるなんて、うちようしやへん」。「捨てなあかんねん。そうせなわてらの未来はあれへんねん」。「お守り、忘れてきた」唐突に彼女が言った。「そんなもん、どっちゃでもええ」。「ようない!」小さな悲鳴のようであった。ふたりはじっと見つめ合った。吹き出すように彼女の涙がどっとあふれた。橋の下の小川の水だけが聞こえていた。「わしは行くで」と彼は歩き出した。彼は渡りきったところで、もう一度ふり返った。ちょうど橋をはさんでシンメトリーのようにふたりは立っていた。長い時間であった。彼はなにかを振り切るようにきびすを返して歩き去った。彼女は川のせせらぎのなかに、なにかプツンという音を聞いたように思った。
- 重松 敬子
特選句「風花や触ってみたき馬の腹」素直に、自分の気持ちを一句に。風花が効果的で成功していると思います。作者の無邪気な好奇心が読む者を楽しくさせます。
- 森本由美子
特選句「新しき日常レタス剥がしをり」ニューノーマルとやらに生活体系を日々切り替えるしんどさ。まじめにレタスでも剥がしていれば未来がみえてくるのか。レタスの新鮮さが大きな救い。特選句「野火と野火出逢わないではゐられない」走り寄る野火の美しさの背景に、避けられぬ宿命が見事に詠み込まれていると感じます。
- 松岡 早苗
特選句「末黒野にキリンの義足鳴る夜かな」テレビで見たキリンの「はぐみ」のことを思い浮かべました。後ろ足が曲がった状態で生まれた「はぐみ」は、最初は立ち上がることもできなかっ たけれど、義肢のおかげで今では走ることもできるまでに成長しています。しんとした夜の末黒野に生命の蹄の響きを聞いたような気がしました。
- 山本 弥生
特選句「雪女郎美人の定義なけれども(寺町志津子)」雪女郎は美人だと想定するが、八頭身美人かマスク美人か定義は無く色々と想いを楽しんでいるところが面白い。 初参加の山本弥生です。愛媛県松山市に生まれ育ち結婚、平成二十四年埼玉県転居、現在に至る。どうぞよろしくお願い致します。
- 佐孝 石画
「寒明の空の律調たねを忌よ」瞼を閉じたままの世界。黒い雪雲が低く空を押し下げる北陸の冬。人々は己の内側への旅をはじめるモノクロームの季節。太平洋側の「寒明けの空」は突き抜けるような青空だったろう。空に吸い込まれるように色という色はホワイトアウトして、内なる風景は視覚から聴覚へとその共振装置は移行していく。そんな内なる光芒には会いたい人も尋ねてくる。「たねを忌」。会いたい。話したい。年賀状にはいつも、僕の句を一句挙げて、心震えるような評を書いてくれた。みんなに書いていたんだろう。嬉しかった。海程の大会ではいつも声を掛けてくれた。酒宴でも世間話しなど一切無く、ずばり俳句の話に切り込んでくる。富山の全国大会が初めての出会いだったろう。風呂場で話しかけられた。あなたが佐孝さんか。作品のイメージとまったく違ったと。その時の僕は戸惑っていた。でも今は分かる。それぞれの作品を読み込んでいたからこそ、現実世界とのギャップが生まれていたのだろうと。そしてその差異も楽しんでいたんだろうと。香川句会にはたねをさんがいたと聞いた。この句を見て今もここにいると感じた。たねをさんのように僕は俳句を楽しんでいるだろうか。愛しているだろうか。またたねをさんの背中が見えて来た
- 菅原 春み
特選句「風花や触ってみたき馬の腹」共感する句です。まさにこんな日に優しい目をした馬の腹を触ってみたいような。寒さとぬくもりを感じます。特選句「やわらかい土を分け合う菫かな」なんでもない句のようでいて、土を分け合うといところがアニミズムかと。菫もやわらかい土に喜んでいる。こんな時世だからこそほっとするひとときをいただきました。
- 漆原 義典
特選は「ひひあかぎれ母の昭和の幸不幸」です。ひびあかぎれは、昭和から平成令和と流れもう古き懐かしい言葉に近くなりました。前期高齢者の仲間入りした私にはジンと心に響きます。母への愛情が深く感じられる句をありがとうございました。
- 小宮 豊和
特選句「打音の森近くに父が棲みついて」この父はこの世の人ではないと思われる。野球かゴルフの森林中の練習風景が心に浮かぶ。作者がもし男性であれば男の父恋というめずらしい組合せが成立する。
- 吉田亜紀子
特選句「尻振りて鴨のお散歩三四羽」鴨の親子だろうか。一生懸命歩いている様子が可愛らしい。「尻振りて」という言葉に躍動感を感じた。思わず応援したくなる俳句です。特選句「存分に梅を見てきし日の手相(谷 孝江)」「存分に」という言葉で、十分に思うがままに堪能してきましたよ、という爽快感がある。私も同じような行動をとる。帰りの電車で楽しかったなぁ、はしゃぎすぎて疲れたなぁ、というその瞬間に何故か微笑みながら両手を広げるのである。とても清々しい気持ちの良い俳句です。問題句「山茶花の花びら国語の本の5ページに(松本美智子)」国語の本を開くと昨年だろうか、拾った山茶花の花びらが挟まっていて、その時期は5ページのところ。記憶をたどり、こんな事があったなぁ、と思い出してまた閉じる。その光景が見えてきたので、素敵な句だなぁと思いました。ただ、少し長いかなと感じました。
- 藤田 乙女
特選句「新しき日常レタス剥がしをり」: 「新しい日常」と「レタス剥がし」の取り合わせがとてもぴったりしていて斬新な句に感じます。特選句「あの ほら 言葉になる前冬木の芽」: 「あの ほら」の呼び掛けや空白の部分に自ずと共感したり想像力をうんと膨らませたりする句です。とても惹かれます。
- 田中アパート
特選句「日脚伸ぶ日和見主義に生きてきて(植松まめ)」後期高齢者の生き方の見本ですな。毎日、いいウンコがでるでしょう。入選句「存分に背中を掻いて冬日の犬」ののちゃんちのポチみたいですな、いいね。
- 亀山祐美子
特選句はありません。饒舌な句が多いように思います。想像の余地が無く作者の感情の押し付けがましさが目につきます。私は感情は物で語らせよと教わりましたので寡黙な句が好きです。今回の選句は特に疲れました。皆様もコロナ疲れでしょうか暗い感じの句柄が多いように見受けられます。一日も早く終息して穏やかな日常が取り戻せますよう祈るばかりです。
- 稲 暁
特選句「二つの肺の黒くなる世界地図」作者は世界地図の中に二つの黒い肺を幻視している、と解釈した。それが何を暗示しているのか、様々に想像される。問題句「真夜の香はやわらかき牙とヒヤシンス」:「やわらかき牙」という意外性のある表現に注目したが、今ひとつしっくり来ない。私の感覚に問題があるのかも知れない。
- 松本美智子
特選句「寒月のかけら掴まえ恋ふふふ」:「寒月のかけら」・・・と取り合わせた「恋」と「ふふふ」というオノマトペが意外性がありかわいらしい句だと思いました。私がいつもこの時期に月の句を作ろうとしたときには,凛と冴え返る冷たい月しか思い浮かべる事しかなかったのですが,このようなかわいい句もいいものだなあと感じました。
- 荒井まり子
特選句「春ですねこんなに青が美しい」自粛自粛のこの一年マスクが日常になりもうコロナ以前には戻れない。優しい句にホットします。いつまでのコロナ。アフターコロナが心配です。
- 柴田 清子
特選句「どの木にも春が棲みつきそうな日よ」いよいよ春!山が笑い出す頃の木々の様子を、うまく言い表している。作者自身春のど真ん中に。
- 高橋 晴子
特選句「日輪の重さと思ふしやぼん玉」そういわれれば不思議な感覚でそんな気がするから面白い、空を渡る日輪が軽くも感じられる。特選句「冬の橋何か奪はれつつ渡る」橋を渡る感覚にはいろいろな思いがあると思うが、作者は〝何か奪はれつつ?と詠む。なるほど此岸から彼岸へ、あるいは空間的な不安感、あるいは・・とにかく何かである。今まで自分が感じたことのない感情で面白かった。
- 野﨑 憲子
特選句「春の暮水飴のよう都市国家」掲句の中七<水飴のよう>の措辞に鳥肌が立った。一見、駘蕩とした晩春の風情を詠んでいるようだがそうではあるまい。溶けて混じり合い一つに固まろうとしている都市国家・・。近未来の姿にならないように俳句で出来ることは何かと強く思った。問題句「をとこおみな綺麗な骨だ軒氷柱」文語口語チャンポン表記なので一瞬誤記かと思った。しかし、何度も読んでいると軒氷柱に見立てた<をとこ><おみな>が、古い漢と現代女性のように見えてこのままでなければならないように感じた。<綺麗な骨>とは、優れた表現だと思う。
袋回し句会
二ン月
- 二ン月の墨書のゆらぎ銀屏風
- 野﨑 憲子
- 恋文を丁寧に折る二月かな
- 藤川 宏樹
- 二ン月の逃げるを追いて引き戻し
- 三好三香穂
ホワイトデー
- ホワイトデーブラックマンデーさようなら
- 三好三香穂
- ホワイトデー今さら何にも言えないわ
- 柴田 清子
- テアトロン広場ホワイトデーの夕日かな
- 野﨑 憲子
風光る
- アールデコ調感染グラフ風光る
- 藤川 宏樹
- 標本の蝶の風呼ぶ光けり
- 田口 浩
- 声かける言葉が光る風光る
- 柴田 清子
- 頬杖の女の黒髪風光る
- 野﨑 憲子
亀鳴く
- 亀鳴くや闇に体温奪はれる
- 柴田 清子
自由題
- ヒマラヤの大気はシルクの雲まとひ
- 佐藤 稚鬼
- バラ園の老いのしくじり続きもある
- 田口 浩
- タンポポのやうなこどもとすれちがふ
- 柴田 清子
- 闇の底焚火の裏にて人を許す
- 佐藤 稚鬼
- 昨日わたしは風花になつたと 鬼
- 野﨑 憲子
【通信欄】&【句会メモ】
コロナ禍の中、藤川宏樹さんのご厚意で「ふじかわ建築スタヂオ」で句会を開くことが出来ました。参加者は6名でしたが、充実した楽しい句会でした。藤川さん有難うございました。また宜しくお願い申し上げます。
2月28日放映の「俳句王国が行く」最終回がさぬき市音楽ホールでありました。NNK松山放送局から香川の若手俳人をと松本勇二さんに出演者の依頼があり、松本さんが三枝みずほさんを推挙してくださいました。みずほさんは爽やかに凛然と見事に大役を果たしてくださいました。観覧者参加の最後の俳句バトルで本会の田口 浩さんが俳句王に選ばれたのにも感激しました。お二人共おめでとうございました!
Posted at 2021年3月2日 午後 01:15 by noriko in 今月の作品集 | 投稿されたコメント [0]