2022年6月4日 (土)

第128回「海程香川」句会(2022.05.21)

虹1.jpg

事前投句参加者の一句

             
じいちゃんの握った手の汗御柱祭(おんばしら) 滝澤 泰斗
大いなる平和呆けかよ春炬燵 植松 まめ
戦争が行く青草にぶつかつて 小西 瞬夏
深いリュックに詰めても五月埋まらない 竹本  仰
終の部屋霞満たしてベッド置く 森本由美子
快晴平野春耕の帯一条黒し 十河 宣洋
てのひらは平和のかたち紋白蝶 伊藤  幸
外つ国の浅沙の花の未だかな 荒井まり子
硝煙ではない海霧の国に在る 山下 一夫
難民西へ西へ麦生う野の現(うつつ) 野田 信章
春泥や軍靴を掴み手放すな 石井 はな
歎異抄を出てこぬ人よ春落葉 伏   兎
散りてなほ極楽の色花むしろ 野口思づゑ
弱虫だっていいジャガタラの花の色 柴田 清子
島の風オリーブの花結びをり 佐藤 仁美
あめんぼの日がな一日鬼ごっご 寺町志津子
愚か者と蛙の声や戦止まず 藤田 乙女
着るように新緑の母屋に入る 月野ぽぽな
産声幽か白桃の夜明けに在り 飯土井志乃
<ウクライナから避難した母が作ってくれた>
ひまわりや母のボルシチ滋味あふれ
田中 怜子
虫喰いのような記憶や亀の鳴く 榎本 祐子
神戸の犬小屋ゆっくり静寂の蛇口 豊原 清明
胡瓜揉むよう戦争しない力 三枝みずほ
徘徊や旋毛(つむじ)にふれし春の月 樽谷 宗寛
たんぽぽも月野ぽぽなも宇宙船 島田 章平
絮たんぽぽ舞ふプーチンの長机 藤川 宏樹
ふじだなの藤の驕りを離れけり 淡路 放生
調律のラから始まる薄暑かな 大浦ともこ
盾と矛は無限循環それから無 塩野 正春
旗出さぬ終の住処の昭和の日 山本 弥生
師が残せし折帖の文卯浪かな 漆原 義典
恋多き女と言はれ冷奴 永野 和代
卒寿なり立泳ぎのざまで歩むかな 佐藤 稚鬼
歳時記をぱっぱぱらりら夏来る 松岡 早苗
百千鳥ショベルの音に負けまいぞ 菅原香代子
行間に仏法僧のいる真昼 久保 智恵
好機待つごとき密集ヤマボウシ 松本 勇二
樹の言葉風の言葉や五月来る 稲   暁
図書室の窓にせまるや山の笑み 福井 明子
メニュー挟む高知新聞初鰹 河田 清峰
老鶯の儘(まま)を尽くして鳴きにけり 鈴木 幸江
万緑に吊らる蔓の橋あわわ 三好三香穂
羽毛まき散らすようかなしみの降る夏 桂  凜火
恒例の家消えへたり込む燕 川崎千鶴子
亡母の名は愛子今年の蝶のきて 谷  孝江
行く春やのろりのろりと這い尽くす 高木 水志
流木も裸体も流浪の夏来る 若森 京子
はるの沼おおきな鮒のいるうわさ 夏谷 胡桃
くるぶしの軽さ夏に体当たり 重松 敬子
葱坊主空き家の窓が開いてゐる 亀山祐美子
生き下手さ曳いてきたなあ草青む 新野 祐子
白菖蒲終わる武器供与続く すずき穂波
兄弟のことば少なし柏餅  菅原 春み
新宿にかもめが飛んだ修司の忌 銀   次
てんと虫なかよしこよしのその向こう 河野 志保
門灯より小さき星を手に守宮 あずお玲子
眠剤呑み物書き続く口乾き 高橋 晴子
どうしても揺れたい蛇が水際に 男波 弘志
初夏のお風呂よパパとお湯はじく 松本美智子
目礼の後のひかりや藤の花 佐孝 石画
自らは音消す蟻の仕事聴く 津田 将也
3秒シャトルで終わる片恋桜蘂 中野 佑海
知床の海冷たかり理不尽なり 稲葉 千尋
ときわ街積乱雲の死に場所か 中村 セミ
幼き恋の淡きひかりや蛇苺 大西 健司
影急に群青色となり立夏 風   子
散る花を愛でる危うさフェイクスピア 田中アパート
飛行機雲5月の青空縫い合わせ 増田 暁子
夏めくやジャズの流るる喫茶店 野澤 隆夫
漢方の煮詰まる匂ひ五月闇 増田 天志
ずたぼろに美しき揚羽よ戦場に 野﨑 憲子

句会の窓

松本 勇二

特選句「羽毛まき散らすようかなしみの降る夏」。羽毛飛び交う映像をかなしみと感じることの新鮮さでいただきました。

小西 瞬夏

特選句「着るように新緑の母屋に入る」。からだにまとわりつくような新緑を「着るように」と捉えた。そのように言ったことはないが、言われてみればその実感が強くある。

増田 天志

特選句「たんぽぽも月野ぽぽなも宇宙船」。たんぽぽは、絮飛ぶことから、宇宙船の発想。後者は、単なる語呂合わせではない。その人柄、才能は、なるほど、宇宙的無限大。阿弥陀さまの、この世の御姿。言い得て、妙である。

福井 明子

特選句「うつそうとしたたりの声帰らなきゃ(竹本 仰)」。かつて自分が自分であったなつかしい空間に迷い込んだ、そんな感覚から、現実に戻りゆく。忘れていた深淵を覗きました。特選句「野薊の愛しさ彼に教えてやってくれ(伊藤 幸)」。一気に吐いた一句。すとんと胸に落ちました。「野薊の愛しさ」「教えてやってくれ」誰に⁉ 全人類がみな「彼」を凝視しているのです。

若森 京子

特選句「産声幽か白桃の夜明けに在り」。白桃の赤子の様な肌を想像し、この夜明けにかすかな産声がする、と初々しい幻想的な中に命をふと感じた。特選句「胡瓜揉むよう戦争しない力」。本当に人間の本能には際限のない力がある。「胡瓜揉む力」の比喩がすばらしいと思う。

豊原 清明

特選句「戦争が行く青草にぶつかつて」。数多くの反戦句、戦争句の中の、シンプルな形。青草が好き。自然に感じた。問題句「柿若葉ミサイル一発二発三発(稲葉千尋) 」。ただ、事実を詠んでいる。ミサイルの不気味さがよく出ている。ひねったりしていないが、戦争の突発性の恐怖。

夏谷 胡桃

特選句「胡瓜揉むよう戦争しない力」。以前、八月十五日前後に戦争時代のドラマがあったように記憶します。うろ覚えですが、あるドラマの中で戦争を反対するお父さんが特高警察に連れて行かれました。その家族は町の人から村八分にあい、いじめられています。ドラマを見ていた子どもが「かわいそうだね」と言いました。わたしは心のなかで、「そういう時代が来れば、隣近所、親しい人が変貌するだろう」と思いましたが、わたしの不安は子には言いませんでした。年月がすぎて不安はますます胸の中で大きくなるこの頃です。わたしには平和を言い続ける力があるでしょうか。戦争反対を言い続けられるか。せめて、「暮しの手帖」の編集長だった花森安治の「一人ひとりが自分の暮らしを大切にすることを通じて、戦争のない平和な世の中にしたい」という言葉のように生活していきたい。「胡瓜揉む」には暮らしが出ています。その中で、「戦争しない力」を育んでいきたいと思うのです。

淡路 放生

特選句「深いリュックに詰めても五月埋まらない」。―五月は草花の季節である。生命感あふれる月と言ってもいい。その五月をリュックに詰めようと言うのである。普通のリュックでは駄目だから深いものにしようと言う。それで五月は埋まらない。作者は五月の何をと思う。ひよっとすると、この時節、プーチンとウクライナを詰めて、戦争を終りにしようと言うのだろうか?いろいろ思いがふくらむのは、作品の「深い」と言う措辞の功績にあると思う。

あずお玲子

特選句「はるの沼おおきな鮒のいるうわさ」。童話のような句。「沼」と「鮒」だけが漢字で、あとは平仮名。春の午後ののんびりと過ぎる時間やゆっくり動くおおきな鮒の尾鰭が見えるようです。 ♡この二年ネット投句を続けていましたが、選を頂く為の作句をしている自分に気づいてしまいました。もっと軽く自由に作句をしたいと思っています。独りよがりな悪い癖はバンバンご指摘ください。どうぞ宜しくお願いします。

佐孝 石画

特選句「着るように新緑の母屋に入る」。「着るように」というストレートな比喩に思わず心を引き寄せられた。しかし、後になって何を「着る」のかという問いがじんわりと生じてくる。そして、この「着るように」とは、単なる比喩ではなく、作者の安らぎへと進水していく「心象感覚」なのだと気づく。「新緑」も「母屋」ももちろん「着る」対象ではあるのだが、この新緑の母屋に辿り着くまでの安心、充足感覚こそが「着るように」なのだろう。この「母屋」は、現在居住しているものよりも、時を経て訪れた生家のものであろう。新緑の中の母屋へ向かう作者が、時空を遡りながら、自分の存在を手放しで許してくれるような安堵感に包まれてゆく幻想風景が見える。

特選句「胡瓜揉むよう戦争をしない力」。薄切りした胡瓜の断面を壊さないよう揉むのは、とても難しい。強さと優しさのバランスがとれた手の力は、外交力と似ているのかもしれない。目からウロコの反戦句。特選句「まてまてまて裸っ子まてまてまて」。バスタオルを持ち、風呂上りの幼子を追いかける父親、あるいは祖父の様子がほのぼのと伝わってくる。「まて」のリフレインが心地よい。「戦争が行く青草にぶつかって」。国の若い力を蝕む戦争の非情さが、みごとに表現されていると思う。「行間に仏法僧のいる真昼」。写経をしているのだろうか。作者の澄んだ心を感受。の幼子を知れない。

藤川 宏樹

特選句「胡瓜揉むよう戦争しない力」。胡瓜を揉むような微妙な力が戦争しない力である、という発見に共鳴しました。派手さはないがぐっと耐えてるようで、じわっと効いてきます。私の好物、胡瓜揉みゆえ、より響いてきます。

増田 暁子

特選句「着るように新緑の母屋に入る」。新緑に囲まれた家の様子を大変上手い表現ですね。特選句「自らは音消す蟻の仕事聴く」。黙って自分の仕事している蟻への賛美。聴く方も黙って。「母の日のオレンジジュース入浴剤」。オレンジジュース色の入浴剤と解釈しました。「虫食いのような記憶や亀の鳴く」。本当に虫に喰われたようにどんどん忘れる。「絮たんぽぽ舞ふプーチンの長机」。長机にはたんぽぽの絮だけでなく欲望とか色々舞っているでしょう。「小さき死屍あれば吾子かとキーウの母」。子供まで平気で殺すこんな戦争をするなんて、母はみんな泣いてます。「翌朝や子のとりどりの初夏を干す(松本美智子)」。家中の洗濯物が初夏にひらめいている。「咲く薔薇に少し嫉妬の鋏入れ(植松まめ)」。私は嫉妬ではなく称賛の鋏を入れてます。「影急に群青色となり立夏」。立夏になると木々は薄緑から群青色になってきた。影もまた。良い句がたくさんあり、選句は大変迷います。リアルの句会が待ちどうしいです。

十河 宣洋

特選句「深いリュックに詰めても五月埋まらない」。五月の湧き出るような新緑が見えてくる。躍動感が伝わってくる。♡快晴。北海道もようやく夏らしい気候になって来ました。でも朝は結構寒い感じの日があります。昨日は夕立もありました。夕立は近年珍しいです。

谷 孝江

特選句「弱虫だっていいジャガタラの花の色」。銃を向けるだけが強者でしょうか。あの薄むらさきのジャガタラ草の花が目の前に見えてきます。平和な色なのです。葱、じゃがいも、トマト、茄子、一人暮らしには多すぎるほどの野菜の中で楽しく暮らした日々のこと。少しばかり遠い日になりました。強者と弱者、誰が決めるのでしょう。近ごろのニュースで胸が痛みます。

中野 佑海

特選句「深いリュックに詰めて五月埋まらない」。いったい五月にどんな落ち度があったというのでしょう。また、その隠し場所が、リュックとは誰にも見つからないように常に持っているのですね。お疲れ様です。そろそろその胸のつかえゲロしても良いころかと。特選句「歳時記をぱっぱぱらりら夏来る」。もうヤケクソです。俳句も季語もぱらっと開いた所にあった適当な言葉を繋ぐのです。そうです。それが夏来るでした。「爺ちゃんの握った手の汗御柱祭」。諏訪大社の御柱祭。山あり谷あり人生の荒波をくぐり抜けて来たおじちゃんでも、手に汗握るスペクタクルなお祭りです。一度見てみたい。「快晴平野春耕の帯一条黒し」。今、正に田植えの準備の真っ最中。「鍵なくす記憶の糸に蜂の飛ぶ(夏谷胡桃)」。すっごく良く分かります。何故か今まで手に持っていたはずの鍵が、戸を閉めて外に出たとたん、もう手の中から消えています。また、中に入って捜索と推理の開始です。一日にどれだけ~!「パスワードメモに書き込む夕薄暑」。IDとパスワードこれいつも同じにしようと思っているのに、もう、何だったか忘れてる。一から。頭の中が夕薄暑。「たんぽぽも月野ぽぽなも宇宙船」。正しく俳句の種がいっぱい頭の中に詰まっていそうです。「調律のラから始まる薄暑かな」。イ短調の何気ない暗さかと言って、♯も♭もない、調整不要のちょっとしたノスタルジー。「行間に仏法僧のいる真昼」。昼間食事の支度、昼食、仕事の合間に気付くと鳥の鳴き声が。こんなに近くに。少し気が和む。「うっそうとしたたりの声帰らなきゃ」。あまり山の奥まで、一人で入ってはいけません。 ぱっぱぱらりらと、俳句が作りたいです。有難うございます。

鈴木 幸江

特選句評「てんと虫なかよしこよしのその向こう」。有限な人間のすることなんて高が知れている。人間は現実を見つつも、その向こうの世界にも関心を持たねばいけない気がして不安でならない。しかし、どうしたら「無」とも言える世界を真に実感できるのかと常々悩んでいる。てんとう虫が仲良くしていたとして、その行為にはどんな真の意味があるのだろうかと作者も疑問を抱いているのだろう。共鳴大である。

大西 健司

特選句「新宿にかもめが飛んだ修司の忌」。古い歌謡曲に「新宿はみなと町」というフレーズがあったことを思い出している。寺山修司が亡くなった五月のある日、新宿を歩きながら都会の空を飛ぶ鷗に思いを馳せている作者。そのとき新宿は港町になっている。寺山修司への憧憬だろう。

稲葉 千尋

特選句「メニュー挟む高知新聞初鰹」。いやまいったネ。鰹好きの小生にはたまらなく嬉しい。しかも高知新聞とは気が効いている。

樽谷 宗寛

特選句「携帯で携帯探す歯抜け鳥(寺町志津子)」。日常を巧く俳句になさり共鳴しました。歯抜け鳥がぴったりです。問題句「メニュー挟む高知新聞初鰹」。惹かれる作品ですが、助詞を入れた方が伝わり易いと思いました。

野澤 隆夫

特選句「絮たんぽぽ舞ふプーチンの長机」。テレビ放映されたあの長いテーブルはびっくりで、強烈に残ってます。わたたんぽぽもまうことでしょう!怖い!恐い!特選句「葱坊主空き家の窓が開いてゐる」。葱坊主と空き家の窓の対比が面白い!ちょっとしたホラーです。

風   子

特選句「たんぽぽも月野ぽぽなも宇宙船」。月野ぽぽなさんを存じ上げませんが、何時も素晴らしく魅力的なお句に感心しています。作者はぽぽなさんの魅力をよくご存知の方なのではないかしら…。リズムが良くて楽しく読みました。特選句「まてまてまて裸っ子まてまてまて(島田章平)」。それでも裸っ子ははしゃぎながらチョコチョコと素早く走って行くのです。あの頃そうだった私の子どもも、今は中年のおばさん、おじさんです。私は…。

塩野 正春

特選句「胡瓜もむよう戦争しない力」。胡瓜を揉むときの柔らかい力を戦争しない力に例えたことに共感します。犬の甘噛みのような、言い換えれば戦争する力にマイナスの力を働かせるような?数学や物理では実の力に対しそれと相対するマイナスの、あるいは虚の力があるはずです。社会では政治的な力学関係にあります。これらの事象をさらっと俳句で表現されています。特選句「卒寿なり立ち泳ぎのざまで歩むかな」。きっとお腰は少し曲がっておられるのでしょうが歩くときは凛として、といきたいのですが立ち泳ぎですか!。太刀魚の泳ぎでもいいですね。

菅原香代子

特選句「じいちゃんの握った手の汗御柱祭」。ほのぼのとした情景と臨場感が伝わってきます。

津田 将也

特選句「好機待つごとき密集ヤマボウシ」。掲句から、河野南畦(こうのなんけい)の「山法師群れ立つ乱の僧兵か」の句が浮かんだ。南畦は、ヤマボウシの花群が、まるで叡山へ攻め入る信長の軍勢を迎え撃つ僧兵であるかのようだ。と、その咲きざまを比喩的に詠む。してみると、掲句「ヤマボウシ」は、昨今の情勢から反撃のチャンスを窺うウクライナの抗戦兵士たちを彷彿させる。抽象表現俳句における僕の鑑賞である。特選句「新宿にかもめが飛んだ修司の忌」。寺山修司を繙けば、彼は日本の歌人(俳句・詩も)、劇作家。演劇実験室を標榜した前衛演劇グループ「天井桟敷」主宰。「言葉の錬金術師」「アングラ演劇四天王のひとり」「昭和の啄木」などの異名をとり、他にもマルチに活動、膨大な文芸作品を発表した。競馬への造詣も深く、競走馬の馬主になるほどであった。一九三五年(昭和十年)十二月十日青森県弘前市生まれ。一九八三年(昭和五十八年)肝硬変を発症、五月四日に敗血症のため東京杉並区阿佐ヶ谷の病院に入院中死去した。行年四十七歳。彼の仕事ぶりやその生涯を思うとき、新宿の上空にまで来て飛ぶ「修司忌」のカモメの光景は、特別に感慨深く印象的だったであろう。

桂 凜火

特選句「弱気って水の明るさ聖五月(三枝みずほ)」。ほんとにそうだと思いました。弱気は何処からくるのかわからない明るさでからだを弱らせる気がしますね。

男波 弘志

「春の月違う居場所の匂いかな」。今在る場所とはなんであろうか、在ることの意味を背後の世界の匂いを感じているのだろう。「狼のにおうマスクをおおかみに落とす(淡路放生) 」。ニホンオオカミに覆われていた時、人間は人間の匂を知らなかったのだろう。何れも秀作です。宜しくお願い致します。

柴田 清子

特選句「亡母の名は愛子今年の蝶のきて」。優しすぎる母と、優しく育てられた作者が、この句の中心にゐます。「今年の蝶のきて」が、この句を佳句になるべく所以であると思った。

河田 清峰

特選句「深いリュックに詰めても五月埋まらない」。万緑の山を五月埋まらないが良かった。

永野 和代

特選は「再生といふ輝きの五月かな(風子)」。「新宿にかもめが飛んだ修司の忌」です。人間もやり直しができるんだ、という優しい気持ちになれます。修司の忌は、うまいと呟いてしまいました。これも若さを感じます。何歳になっても若さはありますから。

月野ぽぽな

特選句「還暦の鉄線花ゆれやすからむ(小西瞬夏)」。還暦の鉄線花、の「の」が働き、詩的空間を創り出しています。還暦を迎えた心、もしくは還暦に想いを馳せる心が、映したのは鉄線花。美しく力強い、高貴な印象のこの花が、揺れやすいのではないだろうか、と感受したことの提示が、還暦という人生の区切りに、ある独特の気分を付与しています。言葉にし難い感情を、そのまま言葉にしなくて良い形、ニュアンスとして匂わせるところが見所の句。「たんぽぽも月野ぽぽなも宇宙船」。の挨拶句に、微笑みました。元気をいただき感謝です。

島田 章平

特選句「ときわ街積乱雲の死に場所か」。琴電瓦町駅が木造だった頃から、高層ビルに変わり、トキワ街は大きく変遷しました。多くの映画館や商店街で賑った頃からシャッター商店街の様になるまで、憧れと失望の街でもありました。そして今、駅近のマンション街へと変わりつつあります。トキワ街の持つ魅力は、時代の波に流されながらも廃れる事はありませんでした。「死に場所」とまで言い切った作者もまたトキワ街を愛してやまなかった一人でしょう。「積乱雲」の季語に作者の人生観が溢れています。特選句「母の亡き最初の母の日の日差し(月野ぽぽな) 」。多分、今年亡くなられたお母様でしょうか。心から御冥福をお祈り致します。お母様はたとえあなたがどこに居られても、いつも貴方のそばで一緒に見守られていますよ。肉体に別れはあっても魂に別れはありません。

菅原 春み

特選句「産声幽か白桃の夜明けに在り」。産声、白桃、夜明けの織りなす景が深くこころに沁みました。疫病、戦などストレスフルな状況に置かれている今だけに、産声という希望が見えました。特選句「虫喰いのような記憶や亀の鳴く」。認知がゆがんでいく記憶の欠損を、淡々と描いているところに共感しました。あれあれ症候群の身としても身に迫る思いですが、季語がなんともしなやかでいいです。

中村 セミ

特選句「流木も裸体も流浪の夏来る」。遠くの海からやってくる流木も、あつくなっていくと,服を次々と脱ぐ踊り子の様な,私も、流されて行く夏のなかで、何をしていこうか、等などと読みました。

松岡 早苗

特選句「目礼の後のひかりや藤の花」。日常の何気ない動作と景の取り合わせがお見事。藤の花を颯とこぼれた光がさわやかでうつくしい。特選句「まてまてまて裸っ子まてまてまて」。「まてまてまて」のリズミカルな繰り返しがリアルで楽しい。風呂上がりの、おもしろがって逃げる子どもと追いかける大人の様子がありありと見える。あるあるの情景に思わず笑み。

野田 信章

特選句「弱虫だっていいジャガタラの花の色」は、「弱虫だっていい」と素直に吐露されている心情が美しく結実しているのも「ジャガタラの花の色」の物象感の配合あってのことだと読んだ。この時期の茄子の花に比して、今一つはっきりしないものが、この花ならではの本性であり本情であろう。なお、「ジャガタラ」とは年配者向きの呼称の感もあるが、その分、来し方の体験的な思念の裏打ちとしての「弱虫だっていい」との心情の厚味とも読める。私的には、「海程」の初期に出合った<誰も悪くないじゃがたらの花の憂い(樋口喜代子)>の一句が色褪めずに想起されるところである。

すずき穂波

特選句「ふじだなの藤の驕りを離れけり」。紫か、白か、藤の花序は上から下へ向かう故にか、どこかしら高貴な(或いは高慢な?)雰囲気を醸している。そこのところを「驕り」と捉えての作者の情動。「離れけり」は少し短歌的で「けり」でいいのか?…とも思うのですが情念、ほどよく、頂きました。特選句「卒寿なり立ち泳ぎのざまで歩むかな」。この作者の動作を想像してふと思ったのは、狂言の振舞い。滑稽、可笑しの最晩年万々歳って感じです。憧れます、素敵ですね。

滝澤 泰斗

特選句「難民西へ西へ麦生う野の現(うつつ)」。ウクライナ侵攻関連の句もだんだん下火になってきた。時間経過とともに情況を見つめる目の高さが上になって周囲を見渡して、情況の何たるかを把握した上の句に共感しました。とりわけ、ウクライナは旧ソ連のみならず、かつてのワルシャワ条約機構国の食糧供給に重要な役割を果たし、今や、旧東欧のみならず、アフリカ の飢餓を救う国にもなっている。その麦穂を横に見ながら、逃げ惑うウクライナ国民を思うと胸が張り裂ける思いになる。特選句「春尽くや達治母恋ふ乳母車(松岡早苗)」。紫陽花色のもののふるなり・・・ 三好達治を忘れてはいないが、懐かしい詩の一編を思い出させてくれた。「(ウクライナから避難した母が作ってくれた)ひまわりや母のボルシチ滋味あふれ」。難民は周辺国のみならず、日本の家族を頼り、やってきているニュースが流されている。ウクライナのおふくろの味は赤かぶのボルシチが定番のようだ。作る母、そのボルシチを味わくこの団らん・・・刹那の幸せかもしれないが、心の滋養にもピッタリのスープは母国のひまわりが象徴している。「小さき死屍(しし)あれば吾子かとキーウの母」。難民化せず、戦火の母国に留まる人もいる。どこからともなく飛んでくるミサイルは人を選ばない。母はいつもわが子を思っている。「新宿にかもめが飛んだ修司の忌」。類句と言ったら語弊があるが、こちらは寺山修司。寺山もカモメも、そして、浅川マキまで連想して、若き日に手にした、耳にしたグラフィティーが蘇ってうれしくなった。

河野 志保

特選句「深いリュックに詰めても五月埋まらない」。リュックに溢れんばかりの五月。緑の季節の生命力や躍動感を感じた。お出かけモード全開の句と受け取ったが合っているだろうか。難しいけれど惹かれる句。

三枝みずほ

特選句「硝煙ではない海霧の国に在る」。硝煙か海霧かどちらにしても水際の祖国であろう。視界がひらけたとき眼前の景を思う。そこは晴れているだろうか。

田中 怜子

特選句「影急に群青色となり立夏」。夕方になって急に影が青くなるのを経験してます。そしてすーっと空気も、ひややかになる。私は奈良で経験しました。寺参りの後の疲れ、バス亭で待っているときの目の前に広がる風景と涼しくなった空気です。

高木 水志

特選句「胡瓜揉むよう戦争しない力」。この句には、何気ない日常に戦争をしないという力があるという作者の祈りが籠もっている。

野口思づゑ

特選句「大いなる平和呆けかよ春炬燵」。春炬燵の季語がよく効いている。特選句「てんと虫なかよしこよしのその向こう」。以前は、童話でも恋愛小説でも、二人が結ばれればめでたしめでたしでしたが現実はその後の二人の人生はどうなるのか、ですよね。「草抜けばいつの間にやら愚痴も消ゆ」。その通りです。「葱坊主空き家の窓が開いてゐる」。ちょっとサスペンス風です。葱坊主がいいですね。「漢方の煮詰まる匂ひ五月闇」。五月闇の深さが伝わってくる。♡ 香川は暑いのでしょうか。だとしたら羨ましく感じます。シドニーは相変わらず雨が多く、当たり前なのですが冬なので寒くなり、暖房を使用しています。でも先日FUYUと表記されている美味しい富有柿を食べ、機嫌がよくなりました。→ 地球は広いですね。深秋の柿、美味しそうですね。

漆原 義典

特選句「恒例の家消えへたりこむ燕」。へたり込むが、燕の行動をおもしろく表現しています。楽しい句をありがとうございます。

三好三香穂

「咲く薔薇に少し嫉妬の鋏入れ」。女の情念に共感。句会では、少しというのが、面白くないという意見もありましたが、爆発するような嫉妬は、あまりはないのです。ちょっとしたことに軽い嫉妬を覚えることが時々あり、それを上手く誤魔化し昇華しながら生きているのが日常です。私は私。なるべく人の動向に左右されないよう心掛けていても、面白くなく感じる時はあるのです。少しの鋏で済ませるのです。

川崎千鶴子

特選句「羽毛まき散らすかなしみの降る夏」。ウクライナの侵攻と受けました。戦争の悲しみと状態を「羽毛まき散らす」と言い得た表現力に感嘆です。「飛行機雲5月の青空縫い合わせ」。青空を真っ白な飛行機雲がまるでファスナーのように右と左を「縫い合わせ」たようと素晴らしい感性に脱帽です。

飯土井志乃

特選句「羽毛まき散らすようかなしみの降る夏」。先の見えない近日。数多の人の心奥深く宿す不安感、寂寥の思いを感じ選句いたしました。

重松 敬子

特選句「てのひらは平和のかたち紋白蝶」。ウクライナの悲劇から、平和について毎日考えます。平和って掌のように、身近かなところから積み上げていかなければいけないのでしょうね、レンガも一つ欠損が出来ると全てだめになってしまいます。特選句「てのひらは平和のかたち紋白蝶」。ウクライナの悲劇から、平和について毎日考えます。平和って掌のように、身近かなところから積み上げていかなければいけないのでしょうね、レンガも一つ欠損が出来ると全てだめになってしまいます。

山下 一夫

特選句「着るように新緑の母屋に入る」。新緑に囲まれた母屋に清々しい気持ちで入っていくということだろうか。「母屋」という言葉には建物の単なる名称以上の含みが滲み出ていて句に深みを与えている。「着るように」との措辞も斬新。特選句「卒寿なり立泳ぎのざまで歩むかな」。老齢の覚束ない足取りを「立泳ぎのざま」とやや自嘲的に形容しているが、それでも歩んでいくのだという意志が感じられ、その心持ちはなかなかどうして豪胆でさえある。ご健勝をお祝いいたします。問題句「でたらめに組み合う男女蟻光る(男波弘志)」。上五中七には惹かれるのだが「蟻光る」がわからない。深層心理学的には、蜘蛛は男女のまぐわいの象徴(腕が四本脚が四本の塊になっていることから)であることから、それならわかるのだが・・・。

森本由美子

特選句「胡瓜揉むよう戦争しない力」。創造物としての人間の不完全で脆い一面を強く感じさせる。

石井 はな

特選句「樹の言葉風邪の言葉や五月来る」。暗い話題ばかりのこの頃気持ちも沈みがちですが、気持ちの良い五月の訪れを教えてくれました。

佐藤 仁美

特選句「八十歳のぼくちゃん元気菊芽挿す(河田清峰)」。どんなに年をとっても、まだ子供のままの自分が自分の中にいます。見えてる身体だけは、年相応になってますが…。「ぼくちゃん」!これからもご機嫌で、元気に過ごして下さい。特選句「てのひらは平和のかたち紋白蝶」。心に響きました。手のひらを合わせて、祈ります。どうか平和が早く来ますように!これ以上の涙は、見たくありません。

大浦ともこ

特選句「産声幽か白桃の夜明けに在り」。夜明けの白桃のしーんとした瑞々しさが新しい生命とよく似合っています。特選句「百千鳥ショベルの音に負けまいぞ」。山が削られたり鳥が住みにくくなっていくこの頃。百千鳥頑張れ!!という気持ちになりました。

久保 智恵

特選句「難民西へ西へ麦生う野の現(うつつ)」「胡瓜揉むよう戦争しない力」。二句とも、大旨。好感を持つ句が多く問題句はございません。素敵な紙上句会だと思います。

伊藤  幸

特選句「椎若葉地にもこもこと曾孫あり(野田信章)」。オノマトペ「もこもこ」が新しい生命を祝しているかの如く効を奏している。曾孫さんが誕生されたんですね。おめでとうございます。

田中アパート

特選句「夏めくやジャズの流るる喫茶店」。さあ、行くで!コロナで一年以上いきつけのコーヒー店に行っていない。店員は、みんな元気にしてるのかな。又、551の豚まんを元気づけに持っていこう。そうだ5人分。

植松 まめ

特選句「夏めくやジャズの流るる喫茶店」。もやもやとした気分が晴れぬ世の中ですが爽やかなこの句好きです。特選句「愚か者と蛙の声や戦止まず」。独裁者が始めた戦争が長期化しそうですがはやく停戦して欲しいです。

亀山祐美子

特選句『木漏日や泉は若き声上げて(稲 暁)』木漏日の柔らかな光が煌めく中の源泉。静寂の杜に尽きることなく響く溢れ出る命の音を『若き声』と表現した地味だが骨太な佳句。特選『漢方の煮詰まる匂ひ五月闇』台所で漢方を煮詰めている。只それだけの句ながら想像を掻き立ててくれる。自分自身あるいは家族のために手間のかかる漢方の薬を煮詰める心情を『五月闇』が代弁する。また健康を願う気持ちが煮詰まる『臭い』ではなく『匂ひ』に集約される佳句。問題句『くるぶしの軽さ夏に体当たり』句またがりの一句。上八文字と下八文字で一文字足らぬ構成。私なら『くるぶしの軽さ真夏に体当たり』と十七文字に整えるのだが、この人は体当たりする不安感を十六文字の不安定さで表現しようとしたのだろうか。元気で明るいはずの一句なのになぜか哀しいのは一音足らぬ機敏の成せる技なのだろうか。おもしろい一句だ。

松本美智子

特選句「てのひらは平和のかたち紋白蝶」。戦争がいつまでたっても止む気配なく,世界中に悲しみが広がる中,どうすることもできない無力感が漂い始めています。手と手を取り合って平和を,希求することは無意味で不可能なことなのか・・・紋白蝶の無垢で,はかない命に人としての矜持を託したいものです。♡4月の会報のコメントの中で拙句「退職やいつもの夫の手酌酒」に対して銀次さんから深詠みしていただいて,気恥ずかしさと嬉しさを感じております。一句から本当に想像力たくましくドラマを構築されて・・流石だなあと感銘しています。なかなか句会に参加できませんが、また,お会いしたらお礼申し上げたいと思っております。

銀    次

今月の誤読●「はるの沼おおきな鮒のいるうわさ」。実家のほど近く、歩いて十分くらいのところに大きな沼がある。鬱蒼とした木々が取り囲み、さほど遠くもない対岸が見えないほどだった。ひとり息子のわたしはどちらかというと父さんっ子だった。百姓家だった我が家は大家族で、母は仕事に家事にと朝から晩まで大忙しだった。その点、農協の職員だった父はよほどの農繁期以外はさして仕事を手伝うでもなく、わたしを連れて山や小川でよく遊んでくれた。なかでも冒頭に書いた沼で釣りをするのがふたりのお気に入りだった。四歳になったばかりのことだった。父は打ち明け話でもするように「実はな」と切り出した。「この沼にはこんなにでっけえ」と両手をいっぱいに広げ「鮒がいるんだ」。父の神妙な口ぶりに、わたしは「ウソだあ」と笑った。「ウソじゃねえ。見てろ、そのうち釣ってみせっから」。その日は春の風の心地よい穏やかな日だった。あうんの呼吸で父とわたしはミミズを掘りはじめた。さあ、釣りに行くのだ。わたしたちは沼へと向かった。だがどうしたことか、まったく釣れる気配はなかった。浮きはピクリともせず、水面は静まりかえっていた。父は無口になり、ウトウトしてきたわたしはそのうち草むらでグッスリ寝入ってしまった。「そのとき」の音はなにも聞かなかった。ただ二、三時間ほど眠って、大あくびとともに起き出したわたしのそばに父はいなかった。「父さん」と何度か呼んでみたがどこからも返事はなかった。寝ぼけ眼でキョロキョロしていたわたしの目に、水面に浮かんだ一本の竿が見えた。やがてその竿は引きずり込まれるようにスーッと水中に没した。ただ事ではない。直感したわたしは我が家にとって返した。それからの数時間は気の遠くなるような長い長い時間だった。村の若者たちや消防団に人たちが代わる代わる沼に飛び込んで父を捜した。ようやくグッタリとした父を水から引き上げたとき、誰もがもう息はないと思った。若者のひとりが「水草がからんでいて」と遭難の理由を告げようとしたしたとき、わたしは思わず「鮒だ。鮒が!」と叫んだ。なにごとかとみんなの視線が集まった。「なんだ坊主?」と問い返されてもなにもいえなかった。子どもながらにその答えの荒唐無稽さに気づいたからだ。ただ黙って父の死に顔を見ているだけだった。まさしくわたしは見ていたのだ。父の青ざめた顔と、その口びるに引っかかった釣り針と、そして口中でうごめくミミズを。  

高橋 晴子

特選句「てのひらは平和のかたち紋白蝶」。人間みんなもっている手。よく働いてくれる手、時につくづくと眺める。「てのひらは平和のかたち」無意識の心の中に皆もっている平和への思い。紋白蝶がよく効いている。早く戦争終らないのかな、こんな事で死ぬのかな、と思う。

寺町志津子

特選句「てのひらは平和のかたち紋白蝶」。掌は拳では無い。平和の形と形容した作者の発想に感銘。紋白蝶が良く利いている。

新野 祐子

特選句「羽毛まき散らすようかなしみの降る夏」。こういう比喩ができる作者の感性の豊かさに、ただただ感嘆です。

荒井まり子

特選句「再生といふ輝きの五月かな」。長引くウクライナの映像に慣れてきたのが怖い。新緑が眩しい中、復興が早く来る事を願うばかり。人間は恐ろしい。

藤田 乙女

特選句「はつなつの風に吹かれてねむり姫」。初夏の風が吹く中、気持ちよさそうに眠っている幼子の姿が目に浮かび、微笑ましくとても心が癒されました。一方、爆撃に恐怖の日々を過ごしているウクライナの幼子のことを考えると置かれている環境の違いに切ない気持ちになりました。 特選句「老鶯の儘(まま)を尽くして鳴きにけり」。無理もせず欲張らずありのままに自分の本分を全うしているように鳴いている老鶯を感じ取っているところにとても共感しました。

野﨑 憲子

特選句「図書室の窓にせまるや山の笑み」。最近、ウクライナ侵攻の映像を見るにつけ、人類の引き起こした戦争ではあるが、全ての生きもの達も巻き込んだ禍々しき戦いで、山々もきっと戦っているに違いないという思いを持つようになった。掲句の「山の笑み」に癒された。平和な日本に暮らせる幸いと共に、生きとし生けるもの全ての立ち位置について人類は真剣に考え直さなければ取り返しのつかないことになると強く感じる。この図書館は山間にあるのだろう。春の山と感応している作者の眼差しが爽やかだ。問題句「狼のにおうマスクをおおかみに落とす」。「狼のにおうマスク」・・作者は自分のことを狼と捉えているのか。とても興味深い作品だ。ただ「おおかみに落す」で私は迷宮に入ってしまった。魅力がある分、もっと別の展開にして欲しかった。

(一部省略、原文通り)

袋回し句会

十薬・どくだみ
十薬や卒寿で挑むトライアスロン
野﨑 憲子
どくだみや性悪女と酒を酌む
銀   次
闇深しやがて十薬浮び来る
三好三香穂
十薬由なき事を聞き流す
淡路 放生
ヨーイどん春のポストに鳩のいて
淡路 放生
整然と鳩電線に夏の雨
銀   次
伝書鳩ならぬ道草裸足の子
中野 佑海
鷹鳩に化し父さんはなんか変
藤川 宏樹
言い訳もしっかりきいて蟇
三枝みずほ
控えめにかかと体重蟇
藤川 宏樹
蟇重なり轢かれ情死遂ぐ
三好三香穂
蟇ただ影となり待ちぼうけ
野﨑 憲子
短夜や8ビートな喧嘩して
中野 佑海
蹠燃えことのは戦ぎ夜の新樹
野﨑 憲子
父の日や妻子悠々帰らぬ夜
藤川 宏樹
指圧師の義眼を洗う蛍の夜
淡路 放生
更衣
衣更あらま背たけがまた伸びた
銀   次
考えぬ葦ばかりなり衣更
淡路 放生
衣更せむとて残る二、三枚
三好三香穂
衣更へ背ナに舞妓のバイク俺
藤川 宏樹

【句会メモ】

長引くコロナ禍の中、ロシアのウクライナ侵攻は終息の兆しが見えません。今回も、戦争へ目を向けた作品がたくさん寄せられました。美しいこの星には、私達人類だけが住んでいるのではありません。 人類の足元を見つめる作品を世界へ向け発信することの大切さを改めて強く感じています。

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