「海程香川」
香川句会報 第56回(2015.11.21)
事前投句参加者の一句
亀と石どちらがどっち庵治小春 | 町川 悠水 |
秋の昼はがき一枚持ち歩く | 三好つや子 |
生きている自分にびっくりバッタ飛ぶ | 河野 志保 |
コオロギは金属質な傷である | 増田 天志 |
立冬の吾子に似し子よ幸せか | 鈴木 幸江 |
冬灯し耳を寄せ合う男たち | 桂 凛火 |
猪の花道転ぶ(まろ)村芝居 | 野澤 隆夫 |
葛の葉や古里包む力あり | 髙木 繁子 |
じっと蓑虫飯ひとつぶを糊にして | 矢野千代子 |
月桃の葉に秋の海荒れてきぬ | 高橋 晴子 |
望の月獣の走り抜けてをり | 亀山祐美子 |
モナリザの涙血に染め雁渡る | 藤田 乙女 |
子宮軽し南天の実のよく揺れて | 小西 瞬夏 |
赤唐辛子いずれ無になる骨密度 | 若森 京子 |
幸せってこんな風景柿たわわ | 重松 敬子 |
掌の中の時間こぼれてゆく立冬 | 谷 孝江 |
困民今に無患子の実の冷え透る | 野田 信章 |
雁渡し哀しみは哀しみもて癒えり | 寺町志津子 |
地平線酸っぱし別れを木の葉とは | 竹本 仰 |
冬はじまる全ての塔を尖らせて | 月野ぽぽな |
湯豆腐や丈夫なことも辛きこと | 尾崎 憲正 |
冬の鳥眼下難民船の行く | 田中 怜子 |
愛にかはる恋追っかけている冬日 | 柴田 清子 |
冬麗や十七帖を書く翁 | 漆原 義典 |
遠眼鏡に小舟入りくる小春かな | 郡 さと |
出来立ての入り日スープにハロウィーン | 中野 佑海 |
筆談は抱かれるごとく星月夜 | 伊藤 幸 |
偏頭痛女みたいな霙です | KIYOAKI FILM |
宗達の伸びやかさがほしい我が俳句 | 古澤 真翠 |
大蟷螂轢死夢の野は青し | 小山やす子 |
銀閣に紅葉金閣に夕紅葉 | 銀 次 |
菊花展芭蕉は武士を捨てしかな | 稲葉 千尋 |
闇を吐き海鼠集まつてゐる | 三枝みずほ |
山茶花の夕べは風の鼻が見ゆ | 野﨑 憲子 |
句会の窓
- 野澤 隆夫
特選句と気になる句「出来立ての入り日スープにハロウィーン」真っ赤な夕日は出来立て。出来立ての夕日が出来立てのスープに輝く。カボチャのスープにハロウィーンの子供たちの歓喜が見える。「モロゾフの大きな袋の中も冬」チョコレートの袋の中にほっこりとした冬を作者は見つけたのだろう。問題句「十一月十三日エッフェルタワー合掌す(月野ぽぽな)」自由、平等、友愛の国での同時テロを、時系列で作句された作者が凄い。エッフェル塔に合掌のポーズを見立てたとか…。
- 古澤 真翠
特選句「冬麗や十七帖を書く翁」「義之の十七帖」でしょうか。冬麗の翁は、ご本人様なのでしょうか。世俗から離れた情景が浮かび、墨の香までもそこはかとなく漂ってくるようで何故か魅かれる句です。
- 三枝みずほ
特選句「赤唐辛子いずれ無になる骨密度」唐辛子の形はやせ細っていく身体に似ています。いずれ無になる身体ではあるけれど、唐辛子の強烈な辛さ、赤さに生命を感じました。儚さの中にある最期の強さみたいなものに共感しました。
- 町川 悠水
特選句「宗達の伸びやかさがほしい我が俳句」は、熟年男性の作とみえ、それがそのまま小生の年齢、男心とも重なって、感銘を受けると同時に、お互い頑張りましょうとエールを送りたくなる作品です。理屈無用の名画からは、根源的なエネルギーさえ貰えるように思いますね。準特選句「モナリザの涙血に染め雁渡る」は、新参者の小生にとって、異彩を放つ海程句会でも最初に瞠目した1句。短時間の選句作業では見えてこなかった句の背景とか作者の意図というものが、時間の経過のなかで見えてくるような気分で、何か示唆されるようなものも覚えます。「冬麗や十七帖を書く翁」も佳句としていただきました。こうした句に触れると、何だか我が物にしたいような勝手ごころが蠢いて、早速いじってみることです。失礼ながらそれは、”冬麗翁の手習ひ十七帖”。〈追記〉このたびご縁をいただいて初参加させていただいた者です。関東で長く暮らし、昨春先祖の地の高松に舞い戻って来ました。海程とは、埼玉住まいだったことから、金子先生の吟行、講演には数回参加させていただきました。また、朝日新聞の埼玉文化では阿部完市先生によく選んでいただきました。そうした過去も大事にしながら、新たにどうぞよろしくお願い申し上げます。→こちらこそ、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
- 銀 次
今月の誤読●「冬灯し耳を寄せ合う男たち」。まあ季節は「冬」とあるから冬なんでしょうね。「灯し」ねえ。これは語感からしてロウソクないしはランプと見立てたい。そのほんのり薄暗いなかで「男たち」が「耳を寄せ合う」んです。なんなんでしょう、この光景は。まず男たちの人数が肝心です。二人だとこれはかなり淫靡です。耳だからいいけど、その二人が口を寄せ合うなどとなったら、これはもう薔薇です。門外漢のわたしとしてはちょっとごめんこうむりたい。わたしのイメージとしては、その男たち、十人程度が望ましい。できれば全身白塗り、スキンヘッド、六尺ふんどし。彼らが薄明かりのなかで耳を寄せ合う。おおおお、見たいです、そのパフォーマンス。BGMはバロック音楽がいいかも。やがて男たちはスキンヘッドのアタマを寄せ合う。ここで円形になる。次いで、ホクロを寄せ合う。これは高難度の技です。目尻のホクロとお尻のホクロ、胸のホクロとくるぶしのホクロ、これらを寄せ合い集合体となる。ピカソも驚くオブジェができあがるのではないでしょうか。あと足の裏を寄せ合うとか、脇の下を寄せ合うとかして、最後は耳に戻る。冬なのに男たちから立ちのぼる汗の蒸気。さあ前売り2300円、当日券2500円。リクエストをいただければうちの劇団でやりますが、いかが。って、やるか、そんなもん。
- 桂 凛火
特選句「闇を吐き海鼠集まってゐる」海鼠という生き物の姿は、とても不気味ですが、「闇を吐き」ということで不気味さが倍増し気持ち悪さの感覚がよく伝わります。何かへの危険を感じ惧 れのような感覚が伝わりよかったです。私は、時代感覚としての不気味さというように解釈し、読ませていただきました。問題句「冬の鳥眼下難民船の行く」風景がよく見えていいと思いました。冬の鳥が見ているように読めるのですが それでいいのかと少し疑問が残ります。
- KIYOAKI FILM
特選句「もつれ合う秋蝶別れのタンゴかな(寺町志津子)」なにか壮年の男性の顔が見えた。タンゴに熱中しているおじさん。そのおじさんの汗まみれの顔が見えて来る。息も伝わる。とても面白い。特選句「生きている自分にびっくりバッタ飛ぶ」一行詩と思い、大変愉しみました。「自分にびっくり」と「バッタ飛ぶ」の両者の顔が良く見える。この少年は余り体育系じゃないような…。理系のような気がする、自然的な面白さがこもっている。問題句「どの子にも青空があり冬隣」何故問題句なのか…自分でもよく分らない。よく分らなくなる句。いい意味でもそう思う。一読して、青空が広がる。それは凄く好き。ただ「どの子にも」が気になった。良い俳句だけど、鑑賞すると分らなくなる一句でした。
- 小西 瞬夏
特選句「冬はじまる全ての塔を尖らせて」塔はいつも尖っているのだが、寒さが厳しくなってくると、世界はあらためてこのように見えてくる。その神経が研ぎ澄まされるような気分を「全て」がしっかりと捕まえている。
- 増田 天志
特選句「空也忌の片目つぶって見る枯野(谷孝江)」冬すみれ義眼すすげば真珠箱。特選句「病院の窓はカンバス雪はじまる(月野ぽぽな)」にんげんの死は、小さくなってしまったなあ。
- 野田 信章
特選句「雁渡し哀しみは哀しみもて癒えり」は、個的な哀感というよりも、社会的な事象の哀そのものとして鑑賞したい句である。青北風という季節の変化(時間)の中での感のうごきとして「癒えり」と言い切ることで明日へつながる心情の厚みを想う。
- 中野 佑海
特選句「じっと簑虫飯ひとつぶを糊にして」簑虫の様に手も足も出せず只風に揺られてぶら下がっているだけの私。何も出来ず、期待されもせず。只、じっと糊口を凌ぐのみ。だけど、必ず春はやって来る。只このままでは終わらない。蝶にはなれないけれど、必ず羽ばたく時はやって来るわ!!と夢うつつの三年寝太郎状態です。を上手くコンパクトに表していると思います。来月は絶対楽しみに行くぞと誓いを新たに握りこぶしをしている中野佑海です。
- 三好つや子
特選句「闇を吐き海鼠集まってゐる」北陸の漁師の血を引く母の好物だった海鼠は、私にとって、故郷を出奔し他郷で生きた母の人生をひも解くキーワードの一つ。母の闇って何だろう・・・そんな事を感じさせてくれる句です。特選句「銀閣に紅葉金閣に夕紅葉」豪華絢爛な金箔屏風をぬけ出てきたかのような、古都の紅葉の美しさが幾重にも重なりあい、響きあい、目に焼きつきました。「冬灯し耳を寄せ合う男たち」明日が見えにくいこの時代に、耳を尖らせながらバラバラに群れている男達を詠んでいるのでしょうか。さびしいけれど、力強さがあり、魅力的。
- 伊藤 幸
特選句「じっと蓑虫飯ひとつぶを糊にして」幼い頃、糊を探していると父に「飯粒を使え」と言われ使った事を思い出した。蓑虫の動かざる存在感と古来から伝わる千恵袋が響き合って佳句をなしている。特選句「裸像まっすぐ指さす東方秋曇る(野田信章)」秩父道場に参加した際、椋神社を訪れた。明治時代、秩父事件で秩父困民党の本拠地となった大宮郷である。裸像の指さす怒り、不勉強ゆえに知らなかった史実を目の当たりにして、ものの溢れる時代に生きる私達の幸せ或いは不幸せを強く感じた。「秋曇る」が効いている。
- 尾崎 憲正
特選句「葛の葉や古里包む力あり」葛のという植物の生命力は大変なものです。地下茎に蓄えた栄養で一気に成長します。その生命力の強さをふるさとを包み込むと表現したことに作者の目の確かさと表現の巧みさを感じました。きっと作者には、ふるさとさえも包み込む優しさがあるのでしょう。
- 稲葉 千尋
特選句「秋の昼はがき一枚持ち歩く」何でもない日常の景、ポストを探してぶらぶらと歩いている作者。特選句「幸せってこんな風景柿たわわ」最近、採る人もなく柿がそのままになっている景をよ見る。でも、それを見ていると幸せ感、平和感を感じる。 月野ぽぽな◆特選句「生きている自分にびっくりバッタ飛ぶ」過去に生死の境を行き来する経験があったのかもしれない、今生きている奇跡を思う茶目っ気のある中七。バッタが飛ぶすがたには、生命の不思議と驚きが投影されている。
- 鈴木 幸江
特選句「生きている自分にびっくりバッタ飛ぶ」バッタに驚いた状況句と取った。人間は自然界の一部であるのに、そのことを忘れていることが多い。バッタにびっくりするのは、人間に備わっている生きるための本能活動の一部だ。作者は、そんな自分に改めてびっくりし、己が命を再確認したのだろう。「生きている自分」と言う言葉がストレート過ぎるが、命の有態をこのように確認するのは貴重な営為だと思い特選に頂いた。特選句「子宮軽し南天の実のよく揺れて」出産経験のある身だが、身体の中のこととなると、これがよくわからない。空っぽになってしまった子宮の状態というものが医学的にあるのかないのか分からないが、空の状態を想った。南天の実がよく揺れるのを見て、その軽やかさを実感したのだ。歳を取ることの句と受け取り、こういう歳の受け入れ方もあっていいと思った。問題句「地平線酸っぱし別れを木の葉とは」 私には、難解句であった。地平線が酸っぱいとはどういうことだろうか。地球は丸いのに地平線は水平という納得いかないようないくような不可解な思いがあることはある。それを酸っぱいと感じたのか。やっぱり、よくわからない。木の葉が散るのは、未来のある別れだ。そんな別れの見立てを評価もしているのだと思った。なんだか纏まらないところも、問題になる。
- 亀山祐美子
特選句『子宮軽し南天の実のよく揺れて』 「子宮が軽い」と、空虚感を現す言葉に「南天の実」の豊稔感、解毒作用を併せ不安感を煽り、「よく揺れて」で安堵に落ち着く。何があっても自然は、時間は過ぎ行く。ただの心情を深読みし過ぎるかも知れないが、反戦、反テロをも感じさせられる。特選句『闇を吐き海鼠集まってゐる』「海鼠が闇を吐く」 という発想が面白い。おお、そうなんだと納得させられる。先日青空市の生け簀で十数匹の「海鼠が集まってゐる」のを見かけたが、不気味だった。海底のある一点に海鼠が集中するのを想像するのは、それが、繁殖の為だとしても怖い。だんたんと歯が立たなくなってきたのが残念ながら、食す度に、最初に海鼠を食べた人は凄いと思う。これまた深山読みで申し訳ないのだが、テロの不気味さを感じた。問題句『じっと蓑虫飯ひとつぶを糊にして』風が吹けば揺れるが、基本蓑虫はじっとしているので「じっと」は不要。「蓑虫の」なら特選で頂きました。皆様の句評楽しみにしております。
- 河野 志保
特選句「じっと蓑虫飯ひとつぶを糊にして」木枯らしに吹かれる蓑虫を思い出した。どういう仕組みになっているのか分からないが、わずかな接点で木などにしっかりくっついている。かなりの強風にも負けず耐えている感じだ。その姿は本当に愛おしい。「飯ひとつぶを糊にして」の把握がぴったりで、作者の発想の自在さにひかれた。
- 郡 さと
特選句「望の月獣の走り抜けてをり」満月の夜、獣の咆哮が聞こえる。人間を含めて動物は無意識に先祖返りする一瞬があって得体のしれぬ不安に襲われる。そんな情景が目に浮かぶ。「幸せってこんな風景柿たわわ」「掌の中の時間こぼれてゆく立冬」のんびり生き、俳句作って小さな幸せを感じる。「冬の鳥眼下難民船の行く」良い句です。エッフルタワーのあるパリ、日本だって他人ごとではありませんよねー。
- 漆原 義典
特選句「愛にかはる恋追っかけている冬日」は、冬の日の情景と心情を、愛と恋で上手く表現していると感心し特選とさせていただきました。
- 田中 怜子
特選句「亀と石どちらがどっち庵治小春」イサムノグチの石の庭園を思い出します。黄土色の地面に亀か石か、瀬戸内の小春日和を感じます。特選句「立冬の吾子に似し子よ幸せか」作者が吾子に似し子を思う気持ち、作者が幸せなのか、いろいろ思いがひろがります。
- 谷 孝江
特選句「団栗の道に転がるのは私(河野志保)」あっけらかんとした自由さが良い。深刻では無く、さらりとした感じが好き。特選句「冬はじまる全ての塔を尖らせて」今日、木枯らしが吹いています。葉を落ち尽した木々も、ご近所の教会の屋根も墨色の雲の下の家々の屋根瓦も風速?メートルの中にあって孤独に尖って見えます。いよいよ北国の冬のはじまりです。冬に向かって私、身構えてます。
- 寺町志津子
特選句「困民今に無患子の実の冷え透る」“うまい ”と感銘。秩父困民党の歴史的事件もあったが、「困民今も」の上五の現実が、中七、下五とよく響き合い、格調高く、一押しの句。「掌の中の時間こぼれゆく立冬」実感。正にこれから寒さに向かう立冬の如し。「どの子にも青空があり冬隣」上五、中七で、極く平易な言葉で当たり前のことを詠んでいるが、下五の「冬隣」で、さて現状はどうだ、と問いかけられたようで、当たり前になっていない現実に心痛み、全ての子どもに青空ある希望を、と切に願う。今回も迷いに迷った選句。表現の仕方はもとより、諧謔あり、ミステリアスあり、身につまされる句、心引き締まる句、心和む句等々多くの魅力的な句に出会えました。
- 小山やす子
特選句「じっと蓑虫飯ひとつぶを糊にして」一粒のご飯を糊にしている自分と蓑虫との対比が面白いです。蓑虫に自分を重ね合わせているように感じました。
- 藤田 乙女
特選句「掌の中の時間こぼれてゆく立冬」限りある時間への惜別の思いがしみじみと心に響いてきます。銀次さんの「今月の誤読●」を、毎回とても楽しみにしていてわくわくする思いで拝読しています。未熟で知識も浅く作句や選句に苦労している私ですが、今月の誤読を読ませていただくと、頑張ろうという元気が出てきて前向きな気持ちになります。多面的な物の見方や感じ方を楽しく教えてくださってありがたいです。
- 高橋 晴子
特選句「どの子にも青空があり冬隣(三枝みずほ)」青空に希望を感じさせる。
- 野﨑 憲子
特選句「生きている自分にびっくりバッタ飛ぶ」草むらで不意にバッタが飛んだ。その刹那に、自分のいのちを感じる作者。生かされている自分。自分は、バッタかも知れない。加藤楸邨の「しづかなる力満ちゆき螇蚸とぶ」を思いました。作者の感性の豊かさ・・・・、びっくりポンです。問題句「コオロギは金属質な傷である」コオロギは金属質、まではわかります。その後にくる「傷」で詩となっていますが、生きものを傷と見立てるのには、いささか違和感があります。そこがまた、良いのかも知れませんが、私には、極めて問題句であります。
袋回し句会
兄弟・姉妹
- わけあって狐火となる姉妹(あねいもうと)
- 柴田 清子
- さぶちゃんの〝兄弟船〟だよ冬ぬくし
- 町川 悠水
- ホントだよ峠の案山子は兄ちやんだ
- 野﨑 憲子
初舞台
- だまし絵のお題出されて初句会
- 郡 さと
- ひつじ数えて夢の中の初舞台
- 三枝みずほ
- 木の実落つまたもうひとつ初舞台
- 野﨑 憲子
- 初舞台恐ろし顔見世海程は
- 町川 悠水
塚
- 塚穴にころがってゆく寒卵
- 柴田 清子
- 目覚むれば塚と添ひ寝の冬戦さ
- 銀 次
- 塚を出てこれより先はひとり
- 三枝みずほ
- 塚いらぬ八百万の神々よ
- 野﨑 憲子
- 阪神塚口駅前着ぶくれて通る
- 郡 さと
殺人
- この路地で殺人ありし冬の暮
- 野澤 隆夫
- 極月や空き缶にいる殺人鬼
- 三枝みずほ
鼻
- 村歌舞伎ま白き鼻に赤いべべ
- 郡 さと
- 小春日の小さな鼻を持ち歩く
- 柴田 清子
- 鼻傷のぴくり引きつる夜寒かな
- 野澤 隆夫
- 冬の鼻かめば龍之介出て来るか
- 町川 悠水
句会メモ
11月7、8日と「海程」秩父俳句道場に行ってまいりました。道場の熱気の余韻を感じつつ句会場へと向かいました。先ず、会場に入ってこられたのは、初参加の町川悠水さんでした。書家のような颯爽とした和装の出で立ちで、爽やかな微笑を浮かべで名乗ってくださいました。関東にお住いの折、金子先生とも面識がお有りとのことです。町川さんのご参加で香川句会は、ますます多様性を帯びて楽しくなってまいりました。これからが、ますます楽しみです。
今回も、色んな作品に出会へ至福の時を過ごすことができました。ありがとうございます。新しい風の気配を、ますます強く感じるこの頃です。私自身も、じっくりゆっくり精進してゆきたいと念じています。「平和」に対する、鋭い視点の作品が増えたことも、喜びの一つです。今後とも、思いっきり自由な作品を!よろしくお願い申し上げます。
Posted at 2015年12月2日 午後 10:06 by noriko in 今月の作品集 | 投稿されたコメント [0]