「海程香川」
第101回「海程香川」句会(2019.12.21)
事前投句参加者の一句
ため池やとんぼ最後の生き残り | 銀 次 |
夫の影農夫となりて日短し | 鈴木 幸江 |
空に湧く海賊の歌冬来たる | 稲 暁 |
臘月の無調音 来し方思ふ | 田中 怜子 |
冬天へ合掌アフガンに水流れる | 三枝みずほ |
楽屋裏こちらから月が見えます | 桂 凜火 |
ついてくる影を捨てたる紅葉山 | 榎本 祐子 |
音楽に別れを告げて月のぼる | 河野 志保 |
この道を独りで歩む冬銀河 | 藤田 乙女 |
三越の袋の中が十二月 | 柴田 清子 |
五七五とふ括り自在に鳥渡る | 藤川 宏樹 |
錦秋の寒霞渓風の笑い声 | 島田 章平 |
土の人で在りたし葱の真青なる | 稲葉 千尋 |
貌のないマネキン雪の降り出すか | 小西 瞬夏 |
人類のゆりかご大根煮がうまい | 増田 天志 |
綿虫の紙漉く村と知らず舞う | 田口 浩 |
生涯を牝の海鼠で押し通す | 谷 孝江 |
うずくまる埴輪空虚に詩を吐けり | 大西 健司 |
あの店は畳みましたよ冬の虹 | 高橋美弥子 |
初霰怠い肉体をぶらぶらん | 豊原 清明 |
新生児天使と悪魔の秋同居 | 滝澤 泰斗 |
弟は銀杏の実よ婚急げ | 小山やす子 |
ふっと魚影の蒼さ晩秋の一路照り | 野田 信章 |
父は父を全うしたか湯たんぽよ | 三好つや子 |
雪虫や寂しさのまだ序の口 | 野口思づゑ |
壊れるかも知れぬ微笑み冬薔薇 | 河田 清峰 |
白菜の翼をひとつずつ外す | 月野ぽぽな |
身辺を行き来する影十二月 | 小宮 豊和 |
君はもう羽ばたいている冬苺 | 高木 水志 |
黄落の銀杏ま中に生きてをり | 高橋 晴子 |
鉛筆の炭素が燃える秋の雲 | 中村 セミ |
老残に光を色鳥に賞杯を | 久保 智恵 |
冬鴉鉄塔占拠三百羽 | 野澤 隆夫 |
格闘技はきらい葱煮て寝てしまう | 新野 祐子 |
強く握るコインの表裏クリスマス | 男波 弘志 |
なりふりない母のなさけよ石蕗の黄よ | 増田 暁子 |
白菜を割って寂しい顔ふたつ | 松本 勇二 |
孫の絵の大きいどんぐり落ちる音 | 重松 敬子 |
真夜中の救急サイレンクリスマス | 菅原 春み |
君の眼の星に気づく夜冬の水 | 竹本 仰 |
レノン忌や市民に向かう催涙弾 | 夏谷 胡桃 |
短日や施設の母と五分会う | 漆原 義典 |
赤よ赤冬枯れにマフラーひとつ | 佐藤 仁美 |
蟻になり水になりつつ年果つる | 亀山祐美子 |
我が影もオシャレをしたき黄葉紅葉 | 中野 佑海 |
<追悼 中村医師>アフガンの流れは澄んで青く青くかな | 吉田 和恵 |
蜜柑入れ今朝の弁当完成す | 松本美智子 |
少年の自死白鳥は雫となり | 若森 京子 |
声張り上げて今年も零余子生れけり | 伊藤 幸 |
手袋が落ちてる家庭裁判所 | 寺町志津子 |
二上山(ふたかみ)の鞍部に白菜そっと置く | 矢野千代子 |
冬のひらがな光は愛をつたへたい | 野﨑 憲子 |
句会の窓
- 島田 章平
特選句「父は父を全うしたか湯たんぽよ」「木守柿母の矜持といふのなら」。父と母を描いた好対照の二句。自信のなさそうな父。湯たんぽに聞いてどうする。日本の父親の姿そのまま。それに比べて母を詠った句の凛々しい事。女は弱し、されど母は強し。昭和、平成、令和・・母はぶれずに強く生きているのです。
- 増田 天志
特選句「刃物屋の前をコートの衿立てて」刃物という抜き身の怖さに対して、コ―トの衿立て。まさに、対照的表現。補完的というか、巧く付いている。
- 中野 佑海
特選句「冬のひらがな光は愛をつたへたい」冬の煖炉の柔らかな光の中。子供を膝に乗せて絵本を読み聞かせる。こんな至福の時は無い。平仮名という優しい文字は愛を載せて世界を駆け巡る。俳句も!特選句「鯨相手に箸拳しゆう男波某(田口 浩)」男波さ~ん、悠長に鯨相手に箸拳ですか?何時になったら讃岐に帰ってくるんですか?皆待ってま~す。「臘月の無調音 来し方思ふ」あれもこれもとしなきゃいけない事ばかり。思うばかりで何も手に付かぬ。あ~今迄何してたんだ私。「貌のないマネキン雪の降り出すか」このどうしようもなさ。その上雪催い。不貞るしかない。「生涯を牝の海鼠で押し通す」私にどうしろと、掴み所の無いあなた。「うずくまる埴輪空虚に詩を吐けり」一見がらんどうの埴輪。甘く見てはいけないよ!私にだって思うことはあるんだ。「次男には次男の母で霜の夜」長男には長男の、次男には次男の其れ其れに対する母の貌は違うんです。「壊れるかも知れぬ微笑み冬薔薇」ちょっときつい言葉で直ぐに壊れるかもしれぬ人間関係の危うさ。「スコップを投げ出し子らは雪を追う」雪かきなんてやってらんない。遊べや、潜れ。「止まるごといただく冬日和各駅停車」一口に冬日和と言ったって、町ごとに趣が!以上。 今月は難しかったです。来年も宜しくお願いします。
- 稲葉 千尋
特選句「人類のゆりかご大根煮がうまい」今も、大根煮を作りました。自分で、これは旨い。ゆりかごにゆられている感じ。
- 小山やす子
特選句「黄落の銀杏ま中に生きてをり」黄落の銀杏の明るさに対比して未来に向かって生きて行く覚悟が感じられて勇気をもらいました。
- 矢野千代子
特選句「短日や施設の母と五分会う」:「短日」「五分」には、さまざまな思いがあふれています。うまい時間設定に感心しました。
一年間ほんとうにお世話になりました。感謝いっぱい!そして来年もよろしくおねがい申します。良いお年を!
- 松本 勇二
特選句「孫の絵の大きいどんぐり落ちる音」実景から虚構へすとんと移行させて秀抜。
- 久保 智恵
特選句「冬天へ合掌アフガンに水流れる」アフガンの医師に黙祷。特選句「なりふりない母のなさけよ石蕗の黄よ」この年になっても母の有難さが沁みます。
- 榎本 祐子
特選句「冬蝶の内がわ限りなく奈落」奈落はどん底のことだが、「限りなく」で、どこまでも続く深い闇にゆらゆらと落ちてゆく景が見える。それは冬蝶の内面世界であるというところが幻想的。
- 小西 瞬夏
特選句「赤よ赤冬枯れにマフラーひとつ」:「赤よ赤」と畳みかけるように赤。それが意味ではなく、感覚に訴えてくる。赤いマフラーに心象をすべて語らせている。「三越の袋の中が十二月」さりげなく12月らしい。しかもとても具体的(三越・袋)であり抽象的(12月)という両面のバランス。問題「ふっと魚影の蒼さ晩秋の一路照り」密度濃く、しっかりかけているだけに、ややくどい。作為を強く感じてしまう。とても印象に残ったのに、とれなかった。「強く握るコインの表裏クリスマス」何か賭けをしているのか、それともクリスマスなのにコインしかポケットにないのか。どちらにしても、クリスマスとの新鮮な取り合わせ方。「年越や金魚のいない金魚鉢」こんななんでもないところに、行く年来る年を感じている俳味。「手袋が落ちている家庭裁判所」この持ち主を想像させる。ものに語らせるテクニックと、場所の設定の巧みさ。
- 田中 怜子
特選句「白菜を割って寂しい顔ふたつ」私の生活では、4分の1サイズの白菜を買うので、一株をざっと切り分けることはないのですが。割って新鮮な白菜の匂いと縦線の葉重ねを寂しい顔と表現したのが面白い。こんなことにも面白さを見つける生活はいいですね。「アフガンの流れは澄んで青く青くかな」の、流れは住んで青く青くかな 下5が重なっているのがどうなんだろう。映像で見た中村さんたちが故郷の山田堰を模した堰が、この句から思い出されました。地上の戦乱とは離れて、大地を悠々たる流れが横たわっている、夜の景色のように思われます。早く静かな生活を取り戻してほしいです。
- 若森 京子
特選句「冬天へ合掌アフガンに水流れる」医師の仕事よりもまず水をとアフガンに水路を造るために自ら土地を掘り起こす中村医師の姿が眼に焼き付いている。中村医師に哀悼の合掌をする時、水の流れる音が聞えてくる様だ。最近一番胸の痛む事件でした。特選句「君の眼の星に気づく夜冬の水」発想の若々しさ純粋さに惹かれ一瞬青春がよみがえりました。好きな句です。
- 河田 清峰
特選句「綿虫の紙漉く村と知らず舞う」紙漉きの時透き通るような青い色があたかも綿虫のように見えるのを「知らず舞う」と言いえたのが良かった。もう一つ好きな句「和妙の月に土偶の合掌す(大西健司)」柔らかい月と土偶の取り合わせが気持ちいい句です。
- 夏谷 胡桃
特選句「夫の影農夫となりて日短し」。夫は定年後に農業をはじめたのでしょうか。日が暮れかかっている畑で作業する夫の影。農夫も板についてきたなと思う妻。特選句「手袋が落ちている家庭裁判所」。ウクライナ民話では落ちた手袋に動物たちが住み着きはじめました。道路によく落ちている軍手はトラックのキャップに被せていたものという話があります。家庭裁判所に落ちている手袋にもドラマがありそう。メロドラマか、サスペンスか、家庭裁判所を持ってきたのが味噌ですね。問題句「人類のゆりかご大根煮がうまい」。今年、わたしは大根が上手につくれました。まいにち大根煮でも飽きない。この句も特選にしたいくらいなのですが、「人類のゆりかご」が、どうしても納得いかないというかわからない。もう少し身近な取り合わせで、「大根煮がうまい」と叫んでほしかったように思います。
俳句をお休みしていましたが、野崎さんのお誘いで復活しました。どこにも属していませんが、締め切りがないと俳句をつくらないので、またお世話になります。よろしくお願いいたします。
- 鈴木 幸江
問題句「臘月の無調音 来し方思ふ」手強い作品であったが、人生の暗部が魅惑的に伝わってきて、解釈の挑戦をしたくなった。まず、“臘月”が分からなかった。“臘”とは古代中国の神や先祖の霊に狩猟の獲物を捧げる祭のことだそうだ。殺生をせねば生きてゆけぬ人の罪の意識と生き物への感謝が込められた季語なのだ。次に“無調音”は子音を外した音組織のことだそうだ。すなわち母音のことだろうか?良くわからなかったが、無という文字から無常観と生きるための暗部が感受され惹かれた。難解な措辞から、制御できない人生を受け止めようとする意志も感じられ、良くわからないがそのまま受け止めたいと思った。問題句「新生児天使と悪魔の秋同居」神は何故、この世に天使と悪魔を創造したのか?これはキリスト教の解釈書によく登場する問いである。天使と悪魔の存在する世に無垢な新生児は生まれ落とされた。“秋同居”は造語だろうか?“秋”で切るのだろうか?良く分からない。でも、実りの秋からパワーを是非貰って欲しいと思った。以上。
- 大西 健司
特選句「壊れるかも知れぬ微笑み冬薔薇」実に繊細な感覚。いつ破綻するかも知れない日常の脆さが読み手に重く響いてくる。
- 寺町志津子
特選句「アフガンの流れは澄んで青く青くかな」十二月四日、日本中の人々が、アフガニスタンの人々が、そして、世界中の心ある人々が、言いようのない悲嘆にくれた中村哲医師の銃撃死。中村医師は、長年、アフガニスタンで、単に医療行為のみならず、戦乱と干ばつで酷く荒れていた地の緑化事業、灌漑事業に取組み、農業用水路を作り、実りの畑にされていたことは知ってはいたものの、中村医師襲撃死ニュースの映像で見た見事な緑に言葉を失った。未だその余韻が消えないでいる今、中村医師への追悼句である揚句に出会い、一読、清冽で美しい透明感に心惹かれた。句の構成は五・七・八となっているが、下句の「青く」「青く」の繰り返しが、詠嘆の「かな」と連動して作者の中村医師への強い惜別の思いも感じられ、平明な語の句でありながら、感動ある忘れられない句となった。「冬天へ合掌アフガンに水流れる」も好感。
- 野澤 隆夫
特選句「空に湧く海賊の歌冬来たる」冬空ってじっと眺めていると意外と楽しいものです。雲の動きに海賊の歌を聞いた作者の感性がいいですね。そして、冬が来た。この冬を乗りきろうとの作者の決意がみなぎっています。特選句二つ目。「伊勢平野をオスプレイゆくついらくせず」五色台のオスプレイ騒ぎもありました。その後どうなったのだろう?伊勢平野のオスプレイも墜落はしなかったのですね。安心しました。「ついらくもせず」がいいです。特選句三つ目。「レノン忌や市民に向かう催涙弾」昭和55年12月8日だったかと。レノン忌と香港騒動を上手に時事句にしてると思います。「刃物屋の前をコートの衿立てて」も面白い句だと思いました。
- 佐藤 仁美
特選句「次男には次男の母で霜の夜」子どもにとっては、私の、私だけのお母さんでいて欲しいのでしょう。そして、母もその子、その子に向き合いたいけど、忙しかったりして出来なかった時に、このように思ってしまうのでしょう。霜の夜が、シャリシャリとした気持ちを表していて、共感しました。特選句「白菜を割って寂しい顔ふたつ」白菜を割ったのが、顔に見えたのが、少し微笑ましく思えました。でも、割った本人が寂しかったのですね。映し鏡です。
- 藤川 宏樹
特選句「生涯を牝の海鼠で押し通す」すでに人生の大半を「牡の怠け」で過ごした私は、「牝の海鼠」で押し通すという決意に惹かれた。雌雄異体の海鼠をカタツムリ、ミミズといった雌雄同体に置き換えれば性の選択で、より興味深くなるかもしれない。ちなみに春の季語、海牛、雨虎(あめふらし)は雌雄同体のようです。
- 伊藤 幸
特選句「あふあふ笑い老いゆくもあり川紅葉(野田信章)」老後は喜怒哀楽の喜と楽のみあれば良し。笑って暮らしたいものだ。
- 竹本 仰
特選句「黄落の銀杏ま中に生きてをり」小生の知り合いのご老人が、最近夕刻になって落ち葉が滲みるように感じると言われる。これまで読み飛ばして来たものが一つ一つ意味を帯びていることに気づいたように、というのである。銀杏の実を手放した雌の銀杏はどうだろう。さらにその感じは濃くなる。富澤赤黄男の句〈爛々と虎の眼に降る落葉〉も没落と孤立、そんな過去の傷みを夕光のなかに振り返ったものかと思える。そして、私の友人の一人はこんなことを言う、まだそういう観照があるだけいいよ、私の友人の多くはそんな一瞥すら知らずに、急ぐようにあちらに逝ってしまったんだから、と。特選句「5Bの蛇の眠りと根の営みと(三好つや子)」6Bの鉛筆の濃さに一つ足りない蛇の冬眠。1B分明るいのは、その近くに根っこが眠らずに次の季節のために営々と蓄えている水のひかりのせいだろうか。冬眠のほのあかり。蛇の横顔。根の優しい大きさ。そんな童話風の挿し絵のようなものがここにある。特選句「手袋が落ちてる家庭裁判所」落ちた手袋がひとをひきつけるのは、その何かしたかった感、その途上感がそのまま残っているせいではなかろうか?生きているうちにはなかなか見えにくい生はつねに途上であるという形が、そこに刻印されているようにすら思える。だから強烈な愛おしさが感じられ、そういうのを存在感と呼んでもいいのかもしれない。一方、家裁と言えば、離婚の調停であり、養育権の云々、少年犯罪のもろもろ。家庭の紛糾の断面がそこに横たわる。この二物衝撃が、現代だなとも、何とも言えないニッポンのB面にある漂泊感、またその途上感がありありと出て、秀逸であるように思えた。問題句「√には無限のひろがり空高し(寺町志津子)」なぜ人類は平方根というものに気づいたのか?その発見に自然の何が、どういう風土があずかったものか。ほとんど割り切れない小数点以下の世界の、その割り切れない現実と数字への愛。でも、それをたしかめてみないことにはという平方根愛、やむことのないトートロジー(同語反復)、あるいはリフレインへの病みつきか。そういうやみつきの愛が秋の乾いた空気の中で、たしかに数字の音が聞こえる、その分解された音が、組み立てに近づこうとする一歩一歩の音が、聞こえているのか。うらやましい限りだ。以上です。
あわただしい年末、なんでしょう、この流れ、ああ、踊らされている。でも、よく考えると、年がら年中、そうでした。除夜の鐘をつきながら、たぶん、そんな自分をよしよしと慰撫するしかないんでしょうか。急速にやって来る反省と、年が変わるころのあの空白感。ふむふむ、それは何なんでしょう?さて、みなさま、今年も大いにお世話になり、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
- 河野 志保
特選句「手袋が落ちてる家庭裁判所」家庭裁判所という濃い感情が絡み合う場所。「落ちてる手袋」は、家族や社会といった何かしらの枠組みから生まれた、不毛の争いや寂しい結論に見えないだろうか。無理矢理な解釈で説明もうまくできないが、乾いた魅力の句だと思う。
- 吉田 和恵
特選句「真夜中の救急サイレンクリスマス」もし仮に、イルミネーションの中を救急搬送されたとすれば銀河を進んでいると思うかも知れない。これはきっと美しいことだろう。問題句「格闘技はきらい葱煮て寝てしまう」格闘技がきらいな事と葱を煮ることの間にある壁を乗り越えられるかどうかそれが問題。
- 豊原 清明
特選句「ため池やとんぼ最後の生き残り」生き残りを讃えている。生への執着か。生きることを求めている。特選句「蠅叩き離さぬ魚屋あり立冬(野田信章)」立冬も蠅がたかる魚屋。面白いと言えば面白く、魚屋の活気か。問題句「極刑を入れておく箱冬日和(三好つや子)」極刑の冬日和。冬とはまさにそんな苦しみを味わう。
- 野口思づゑ
特選句「冬の風鈴地球とふ花一輪よ」風鈴、それも冬の風鈴と花一輪との組み合わせが面白い。また今は何かと問題が指摘されている地球を花一輪としたプラス思考が嬉しい。「 蠅叩き離さぬ魚屋あり立冬」あちこちで季節外れの現象が見られますが、具体的な映像で巧く捉えています。「冬天へ合掌アフガンに水流れる」中村医師を悼み、その業績を簡潔に述べていると思いました。「生涯を牝の海鼠で押し通す」ユーモラスで、押し通す、としたところに惹かれました。良い生涯に違いありません。
今年も大変お世話になりました。金子先生が亡くなられ、私は俳句と少し距離があいてしまった気がするのですが、それでもどこか留まっていられるのは「海程香川」句会のおかげだと感じています。来年もまたよろしくお願いいたします。
- 亀山祐美子
心情的には「白菜を割って寂しい顔ふたつ」を特選に押したいのだが、「割って」の「て」の断り、説明が気になる。それ以上に「寂しい」が気にいらない。喜怒哀楽を言わずに「寂しさ」をものに語らせて欲しい。「向き合う」「無言の」等々、楽をせずにもっともっと自分に向き合い掘り下げなければ月並みで終わってしまう。着眼点が良いだけに残念だ。特選句「白菜の翼をひとつずつ外す」夕食の準備だろうか、畑でだろうか、大玉の白菜の立派さ出来の良さを愛で、家族の腹を満たす喜びが伝わる。大らかな佳句。年の終わりに気持ちの良い句に出会えた。嬉しい。
また来年もよろしくお願い致します。どなた様も良いお年を…。
- 月野ぽぽな
特選句「白菜を割って寂しい顔ふたつ」身の回りの物事は自分の鏡。こんな気分の時はありますよね。料理の進むうちに心が癒されますように。
- 三好つや子
特選句「人類のゆりかご大根煮がうまい」人類にとっての「ゆりかご」は、豊かな恵みをもたらす大地と、そこに生きている人々のつましい暮らしのことかも知れない。この句の哲学めいた言い回しに魅力を感じ、こころに刺さりました。特選句「白菜の翼をひとつずつ外す」 霜が降り、いっそう甘味を増した白菜が、料理の好きな主婦の手により、煮物、和え物、漬物など・・・に羽ばたいていく様子が美しい。日常をこんな風に表現する作者の言語感覚が、素敵です。入選句「冬のひらがな光は愛をつたへたい」迷っている人には肩をポンと叩いてくれる父のようで、淋しい人には母のような温もりで包んでくれる、冬日の存在をうまく捉えていると思います。入選句「初霰怠い肉体をぶらぶらん」きらきらとした霰のなかを漂いながら、歩いている作者が目に浮かびました。とりわけ下五のオノマトペが面白い。
- 滝澤 泰斗
特選句「うずくまる埴輪空虚に詩を吐けり」目と口が黒い埴輪は、確かに口を開けて、見ようによっては何かを言っている。それが詩だという。埴輪を傍観している作者がいつの間にか擬人化も感じらる句。特選句「二十八長女の喪てふ明朝体(藤川宏樹)」筆やペンで手紙を書かなくなったが、通信文も含め、人への書簡は必ず、明朝体のフォントを使う。あらたまった格調を感じさせる明朝体がすきだから・・・28歳で逝った長女の人となりを明朝体が物語る。最短詩の最高の追悼句。合掌。問題句「√には無限の広がり空高し」√記号を句にとりいれる斬新さに目めを奪われた・・・ この論法で行くと∬や🎼などもと空の高さも広さもとまさに無限の広がり・・・俳諧自由の金子先生後継ならではだが、人口に膾炙するまで時間がかかりそう。
来年(2020年)で古希ながら、まだ、仕事をしております。土日は二つの合唱団の練習優先で、東京例会をはじめ、土日の開催が多い句会出席は絶望。しかし、金子先生の薫陶の中にいらした方の新鮮な俳句には触れていたいので、海原への投句はもちろん、欠席投句のわがままを許していただいているところには投句しています。この度、野﨑さんのお薦めで、海程香川の高い敷居を跨ぐことになりました。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 藤田 乙女
特選句「冬天へ合掌アフガンに水流れる」中村氏の訃報は見ず知らずの私でもとてもショックで切ない気持ちになりました。私も合掌するばかりです。特選句「だんだんに居場所定めし種ふくべ(小西瞬夏)」来し方を振り返り、また行く末を考えしみじみとした思いになりました。琴線に触れる句でした。
- 野田 信章
特選句「雪虫や寂しさのまだ序の口」の「雪虫」は句意からして「綿虫」のこと。雪国の早春の雪虫ではない。晩秋から初冬にかけての間(あわい)の情感の把握が美しく、やがて深まりゆく冬の透徹した寂寥感に真向く姿勢の伺えるものがある。そこに精神の充実感も自と宿ることを自覚している人の句だとも言えよう。―自然の只中に先ずは身を置くことを「序の口」としたいと思うのみである。
- 重松 敬子
特選句「冬のひらがな光は愛をつたへたい」ひらがなのもつ嫋やかさを上手にとらえ、小春日の窓辺の景色が広がっつてくる。ほーっと、誰もが持てる幸せな時間。
- 高木 水志
特選句「五七五とふ括り自在に鳥渡る」渡り鳥がひとかたまりで移動する様子を五七五の可能性と取り合わせたことが上手いと思います。複数の渡り鳥が協同して生活する様子も見えて良いと思います。
- 桂 凜火
特選句「一身上の都合目深に毛糸帽(谷 孝江)」ぶっきら棒なのだけど 少しミステリアスで心惹かれました。一身上の都合とだけ言っているが、本当は誰かに聞いてほしい、その理由説明して打ち明けたいという気持ちが伝わってきて良かったです。
- 男波 弘志
特選句「十本の鳥居を束ねると狐(柴田清子)」妖しい世界。まだ我々にも妖怪に変容する、エネルギーがあるだろうか。「楽屋裏こちらから月が見えます」秀作。芸道を極めたひとの余裕あり 「父は父を全うしたか湯たんぽよ」準特選。僕の父は確かに父を、ひとを全うした。「蟻になり水になりつつ年果つる」秀作。いのちの循環。季語はどの季節でも自在に扱いたい。「手袋がおちてる家庭裁判所」秀作。にんげんの分別心がおちている。宜しくお願い致します!
- 増田 暁子
特選句「土の人で在りたし葱の真青なる」上句下句の組み合わせが素晴らしくリズムも良いです。特選句「白菜を割って寂しい顔ふたつ」白菜と寂しい顔の取り合わせがとても腑に落ち絶賛です。 以上よろしくお願いします。
この一年色々とありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願い致します。
- 松本美智子
特選句「三越の袋の中が十二月」:「花ひらく」猪熊弦一郎さんのあの紙袋を目にすると子供の頃から特別なワクワクする感情をもったものです。「12月」の季語がうまく機能しているなあと思いました。
- 柴田 清子
特選句「次男には次男の母で霜の夜」母と子の微妙な心理を霜の夜で纏めている。長男ではなく次男に置いた所がさらに句として成功している。特選句「少年の自死白鳥は雫となり」少年の死を限りなく美しく謳い上げている特選でなければならないと思った。特選句「手袋が落ちてる家庭裁判所」読み手一人一人に与えてくれるものが、この手袋には、いろいろある深く考えさせられた。特選句「月を追ふ大きい夜になりゆけり(三枝みずほ)」見方を変えれば、人生そのもののように思えた。
令和元年、ありがとうございました。新しい年も楽しみに参加したいと思います。
- 新野 祐子
特選句「若僧の作法の稽古秋闌る(田中怜子)」この上なく静かな秋の空気の中で稽古する若い僧たちの凛々しい姿が現れます。「秋蘭る」の斡旋がいいですね。入選句「白菜を割って寂しい顔二つ」白菜を縦に割ってみると、そう言われればそういう顔にみえますか。「僕の秘境しばれる原野を歩くよう」私の秘境も、燦々と陽が差し込むようなところではないです。大いに共鳴します。問題句「銃は持たない にんげんに夕時雨」何か深い意味を含んでいる句なのでしょうが、それが何なのかわかりませんでした。気になります。中村哲医師の追悼句がありますね。殺害されるなんて、こんなことあっていいのでしょうか。ここ山形で今年五月に中村さんの講演会があり、私の質問にもていねいに答えてくださいました。あの真摯な輝く瞳が忘れられません。
- 中村 セミ
特選句「生涯を牝の海鼠で押し通す」ナマコとヒトデやウニに近い仲間の棘皮(きょくひ)動物門(どうぶつもん) という分類。ふだんは砂の中のプランクトン・死んだ物をたべるので海の掃除屋と呼ばれる。オスとメスの見分け方というのがあって繁殖する時に立ち上がろうとしているのがオス。だから繁殖期でなければオス・メスはわからないんですね。で、繁殖期にオスが糸状の精子を出しメスがそれを受けとるという事になる。句についてですが客観的なナマコを見て、容姿を見て私もこんな感じで人生をかたくなにゆっくり、ゆっくり歩んでいるのかなという事を感じました。何か、ほのぼのとした一般的な家庭の主婦を感じました。そこがよかったです。
- 谷 孝江
特選句「君はもう羽ばたいている冬苺」この句の持つ若さには勝てないなと言うのが一番です。「声張り上げて今年も零余子生まれけり」も大好きです。毎回選句させて頂いて思う事は、選句は句作りよりむつかしいな、です。どうしても自分流が入ってしまうからでしょうか、百人百様と自分勝手な思い込みで選させてもらっています。ゆっくりと時間をかけて読み込めばきっとすばらしい句、感性も分かりますが、いつまで経っても同じ所を歩き回っている様な気がします。会員の方々のご批評を時間をかけて読ませてもらい味わいたいと思っています。
- 銀 次
今月の誤読●「冬空の京が明るし茶器を買う(稲葉千尋)」。久しぶりの京都だ。噂には聞いていたが外国人観光客が多い。それがいいことなのかどうかわたしにはわからない。まあどっちだっていい。冬の京都は寒い。そこがいい。わたしには神社仏閣を巡るといった趣味はない。ただブラブラと歩いて町の風情を楽しむのが好きなのだ。そして京都は歩く価値のある町なのだ。てなことで、歩いていたわたしはふと骨董品屋の前で立ち止まった。ショーウィンドウの片隅に淋しげに転がっている抹茶茶碗が気になったのだ。もっともわたしに茶道の心得はない。これでお茶漬けを食べたらさぞ旨かろうと思ったのだけのことだ。店内に入ってその茶碗をしげしげと見ていると、さっそく店主らしき老人がやってきてあれこれ能書きを垂れる。どうだっていいんだよ、そんなこたあ。こっちは茶漬けの茶碗を買おうってだけなのに。値段を訊いてみた。法外とはいえないまでもそこそこだった。うーんと考えてると、店主は「二千円、お値引きします」ときた。庶民はこういうのに弱い。軽いパンチを打たれるとクラッとするのだ。買った。小さめの段ボールに入れてもらって帰路につこうとすると、細い路地だ。軽トラとすれ違った。折悪しく軽トラのミラーが茶碗を入れた段ボールにぶつかった。ヤな音がした。といって往来で荷物を改めることもできない。でも軽くぶつけただけだもの。と安心半分、不安半分で家に持ち帰った。荷を解いてみると、あちゃー、やっぱりだ。見事に真っ二つに割れていた。ふうとわたしはため息をついた。ーー思うのだが、こうした小さな厄災は人生を豊かにしてくれるのではなかろうか(大きな厄災はゴメンだが)。もしわたしがその茶碗を常使いしていたら、それはただの食器でしかない。だが京都で買った(わたしにとっては)ちょっと贅沢な茶碗を割っちまったということは、苦笑とともに思い出になる。そしてそうした小さな思い出が積み重なって人生になるのだ。などと理屈をこねて、わたしはその茶碗をゴミ箱に捨てた。
- 菅原 春み
特選句「冬天へ合掌アフガンに水流れる」:「海程」ならではのタイムリーな句です。それにしてもなんともおしい人を亡くしてしまいました。水が流れているところに、永遠を感じます。ご冥福を祈っております。特選句「レノン忌や市民に向かう催涙弾」兜太先生でしたら、許さないとおっしゃるはず。世界が平和へよりもきな臭いほうへ向かっているようです。国境のない世界を想像してと歌ったレノンも憤っているのではないでしょうか。
- 稲 暁
特選句「この道を独りで歩む冬銀河」芭蕉の名句「この道や行く人なしに秋の暮」との類似性はあるが、「冬銀河」によって心象の表出がより立体的になっている。平明な表現の中に深い抒情性が感じられる。問題句「生涯を牝の海鼠で押し通す」作者の自画像として読んだ。「牝の海鼠」が意表をついていて面白い。
- 田口 浩
特選句「格闘技はきらい葱煮て寝てしまう」年末恒例のテレビジョンの事かも知れない。(いや、そうでなくてもよい)初っ切りのような格闘技に目を腐らすよりは<葱煮て寝てしまう>ほうがさっぱりと気持ちの良い朝を迎えることができよう。句は現在の俳諧をさらりと詠んで微笑ましい。
- 高橋 晴子
特選句「白菜を割って寂しい顔ふたつ」白菜の断面を寂しい顔と見た感じた面白さと作者の内面が感じられて共感。特選句「孫の絵の大きいどんぐり落ちる音」どんぐりの絵から音を感じさせられた。描き手がうまいのか鑑賞がうまいのか、どんな絵かみたいが小さい子の絵は時にハッとさせられるものがある。大きいどんぐりなのか、どんぐりの落ちる音が大きいのか、後者の方が面白いが、それだと大きいの位置を変えなければ、です。問題句「老残に光を色鳥に賞杯を」何かシェイクスピアのセリフみたいで面白いのだけど、作者の顔が見てみたい句。面白すぎる?
- 小宮 豊和
「赤よ赤冬枯れにマフラーひとつ」印象鮮明な句である。この句の場合、鮮明であればあるほど良いと思う。うまくいくかどうかわからないがやってみよう。「緋のマフラー冬枯れのなかたったひとつ」賛否両論あると思われるがどうだろうか。問題は言葉の選択とご順であることはまちがいない。
- 三枝みずほ
特選句「愛それはいいことだろ開戦日(河田清峰)」反戦、平和への思い。自己、家族、自然などやはりそこは愛なんだろう。「人間っていいものですよ」と仰っていた金子兜太先生をふと感じた。
- 漆原 義典
特選句は「我が影もオシャレをしたき黄葉紅葉」とさせていただきます。私は自分の影を意識したことなかったですが、影に注目した作者は凄いと思います。また影の黒と紅葉の対比をオシャレと感ずる作者の感性に感動しました。ありがとうございました。
- 野﨑 憲子
特選句「錦秋の寒霞渓風の笑い声」小豆島は風の島である。この笑い声は、大笑いである。歓喜の笑いは元より、慟哭までも笑いとする島丸ごとの笑い声。寒暖の差が激しいほど濃く紅葉する錦秋の絶景寒霞渓ならではの一句。特選句&問題句「音楽に別れを告げて月のぼる」初見、唐突に「富士たらたら流れるよ月白にめりこむよ(金子兜太)」が浮かんできた。師の句は、天と地の壮大な交響曲のような作品である。掲句は、その月白から出て来た月のように見えて仕方がなかった。この「音楽に別れを告げて」に少し作意を感じたが、とても惹かれた作品である。
袋回し句会
聖歌
- 聖歌すれちがう青年の厚化粧
- 田口 浩
- 聖歌降るつまらぬ世界に聖歌降る
- 銀 次
- その中の一人ねてゐる聖歌隊
- 柴田 清子
- 聖歌隊過ぎし泉のふと影る
- 稲 暁
- 光り束ねて小学生の聖歌隊
- 野﨑 憲子
- イライラは偏桃体夜の聖歌隊
- 河田 清峰
- ワイングラスに指紋くっきり聖歌
- 増田 天志
- 牛肉のあかあかとある聖夜かな
- 男波 弘志
パス
- パストスラガーマン髭豊か
- 亀山祐美子
- パスポート夢の続きは凍てる滝
- 増田 天志
- 十二月パスして友と梯子酒
- 島田 章平
くしゃみ
- くしゃみの音おかしくてひとりたのしくて
- 松本美智子
- くしゃみしてなんだかうれしくなりにけり
- 鈴木 幸江
- 嚏して太陽をうごかしてゐる
- 小西 瞬夏
- とりもどす真人間の顔大くさめ
- 亀山祐美子
- くしゃみして空はただ明るい日
- 三枝みずほ
- くしゃみと咳出たらすぐ飲むポポンS
- 漆原 義典
- 荒神さまはお怒りじゃ大くさめ
- 増田 天志
- わたしなりにわたしを律するくしゃみ
- 田口 浩
- せっぱつまってくしゃみなんかをひとつ
- 三枝みずほ
カラオケ
- カラオケの店に地球儀クリスマス
- 鈴木 幸江
- マフラーを二人で巻いてカラオケす
- 柴田 清子
- カラオケという白い棺桶
- 中村 セミ
- カラオケの威勢が良くて冬鴉
- 中野 佑海
散紅葉
- 黒々に男の乳首散紅葉
- 藤川 宏樹
- 散紅葉図星されている快楽(けらく)
- 田口 浩
- 結願時までの坂道散紅葉
- 島田 章平
- 棺に国旗ふる里は散紅葉
- 増田 天志
- 唇の朱さを笑ふ散紅葉
- 亀山祐美子
- 散紅葉矢頭右衛七供養塔
- 河田 清峰
- 風に陽に従ふ紅葉散りゆけり
- 柴田 清子
冬至
- かゆいとこありませんかと冬至の湯
- 河田 清峰
- 嘘ひとつ冬至の水のあをさかな
- 亀山祐美子
- いろいろありました冬至湯で寝る
- 島田 章平
- 神経も指も太くて冬至かな
- 中野 佑海
- 湯に水を差したりもする冬至かな
- 田口 浩
- 闘病の父支え入る冬至風呂
- 松本美智子
- そうですか冬至ですかとしあわせ
- 鈴木 幸江
黒
- 吾が影は愛しき他人黒冴えて
- 鈴木 幸江
- 黒が来る午前零時に黒が来る
- 銀 次
- 漆黒の黒髪ゆらり大狐火
- 野﨑 憲子
- 少年に黒のまつはる聖夜かな
- 小西 瞬夏
- 街聖夜黒いさかながポケットに
- 男波 弘志
- 黒猫の目の底に冬荒れている
- 稲 暁
- 黒が重なってゆくやかんの蒸気
- 中村 セミ
- 冬服の黒着て贅沢微糖珈琲
- 柴田 清子
糸
- セザンヌの林檎浮きカラオケの「糸」
- 藤川 宏樹
- しつけ糸捨てて冬蝶影棄てて
- 小西 瞬夏
- 亡き妻のセーターほどく毛糸玉
- 増田 天志
- 平和への伝言冬の糸電話
- 野﨑 憲子
冬蝶
- 好きという海馬の中に冬蝶綴る
- 中野 佑海
- もう追わなくてもいい冬蝶の空
- 三枝みずほ
- 風まかせ星まかせなり冬の蝶
- 野﨑 憲子
- 冬の蝶地につくほどに髪伸ばす
- 亀山祐美子
- うずくまる犬に行きつく冬の蝶
- 男波 弘志
- 冬蝶のうすきまなざし掴まへる
- 小西 瞬夏
- 荒野より一粒のひかり冬蝶
- 銀 次
- 尻あがりして少年期です冬の蝶
- 田口 浩
- 冬蝶を抱き銀座を午前二時
- 島田 章平
- 冬の蝶みたことないけど生きててね
- 松本美智子
雪
- 雪女あなた似の子を産み落す
- 柴田 清子
- ここはむかし子宮だった雪だった
- 小西 瞬夏
- 雪が降る銀河鉄道までの旅
- 島田 章平
- わが窓に来るときはくる雪女
- 田口 浩
- 雪もよひこの星はまだ生まれたて
- 野﨑 憲子
- 靴下に詰めておきたい雪の音
- 亀山祐美子
- アベマリアアベマリア雪ふりだせり
- 小西 瞬夏
【通信欄】&【句会メモ】
2019年最後の句会は、18名の参加で、いつもの67会議室が満杯状態になり、幸運にも、たまたま空いていた円卓会議室に変更して開催いたしました。大津から増田天志さん、岡山から小西瞬夏さん、高知から男波弘志さんも参加し、熱い句会となりました。事前投句数は156句、<袋回し句会>の句数は137句、記念すべき句会でした。句会の後は、10月の第一回「海原」全国大会㏌高松&小豆島の打ち上げ会を兼ねた忘年会を句会場のすぐ横に建つサンポートタワー29階「若竹」で開催しました。いつも句会の後はすぐにお開きでしたので、この時とばかりに色んな話に花が咲き大盛会でした。とても楽しく豊かな一日でした。ありがとうございました。
皆様、この一年間、本当にお世話になりました。これからも、金子兜太先生の「俳諧自由」を信条に、一回一回の句会を大切に精進してまいりたいと思います。来年も宜しくお願い申し上げます。どうぞ佳きお年をお迎えください。
Posted at 2019年12月26日 午後 02:24 by noriko in 今月の作品集 | 投稿されたコメント [0]