2024年2月23日 (金)

第147回「海程香川」句会(2024.02.10)

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事前投句参加者の一句

                                                                                                                                                                                                                                      
建国日語るにマフラー長すぎる 三好つや子
雪降らぬ地にて語る被災地の雪 野口思づゑ
二月堂夢の中より豆を撒く 渡辺 貞子
オリオンの統ぶる夜空や霜の声 稲   暁
海女と息合わせて寝落つ冬の宿 若森 京子
冬の能登自傷のごとき崖崩れ 森本由美子
梅の花むしろ近所だ中韓は 山下 一夫
座して眠るあの雪嶺のたいらな師 佐孝 石画
クレヨンのはみ出している鬼の面 藤田 乙女
掌に仏のごとき海鼠かな 榎本 祐子
潰れた家と屍隠す風花 菅原香代子
悴むや青空と語を見失ふ 佐藤 稚鬼
冬空があまりにも青すぎて敬礼 銀   次
<沖縄の私宅監置>コンクリの穴より早緑の滴るよ 田中 怜子
トキめきの鍵と出会うよ梅蕾 岡田 奈々
寒雀空を見上げることにする 松本 勇二
簪の影が立っている梅の花 中村 セミ
白鳥がゐる白鳥がゐる赤光 小西 瞬夏
知らんぷり氷上に猫降り損ね 山田 哲夫
村八分聞かず言わざる梅見ざる 田中アパート
やさしくなれるかな白いセーターなら 月野ぽぽな
覚めぬ木を二月の風の揺れ起こす 風   子
にびいろの野良猫朧ごと拾ふ 和緒 玲子
冬夕焼け灯り始めしビルの街 山本 弥生
地の涯に春来る静か光の輪 十河 宣洋
風花に紛れて逝くよたましひも 柾木はつ子
鳥に人にそれぞれ居場所冬の島 桂  凜火
ヒョウ柄のバナナに威嚇されており 鈴木 幸江
冬山の樹相ゆたかに吾を満たす 野田 信章
腎臓を一つ無くして除夜の鐘 滝澤 泰斗
挙げる手に応える手あリ息白し 福井 明子
健さんを気取る夫としるこ食ふ 吉田 和恵
海女小屋の囲炉裏の消し炭春を待つ 増田 暁子
節分へ岩の中なるオニオコゼ 河田 清峰
沖晴れてをり一月の山が鳴く 柴田 清子
寒鯉の犇めきあへる地震の夜 石井 はな
声忘れ母の眼は澄み初氷 薫   香
落ち椿躓くほどに老いました 谷  孝江
猫となる気概じゆうぶん猫柳 佳   凛
豆撒くや生かされてよくこの日まで 寺町志津子
劇場の匂いかすかに雪催い 竹本  仰
霜柱うるるうるると鳴り始む 高木 水志
縁尋機妙疑う寒の片目野良 時田 幻椏
昭和百年意識的楽観や「スリム」 疋田恵美子
許されぬ人間として流氷期 綾田 節子
一日の口直しだから冬満月 河野 志保
軍港に雨を見ている開戦忌 重松 敬子
今日の邂逅風花と記します 新野 祐子
漆黒として奥行はあるのです 男波 弘志
夜空からちぎれたこころ粉雪降る 飯土井志乃
はじめましては立春の鼓動です 三枝みずほ
春立つやしつけ糸解き草履履く 菅原 春み
待ってるよあの子の席に日脚伸ぶ 松本美智子
いくさなぞしてる場合か去年今年 三好三香穂
こうのとり電柱に来て風が鳴る 小山やす子
冬すみれ母百日の心電図 荒井まり子
水軍の裔とか海鵜はぐれ飛ぶ 大西 健司
いそぐことあらへんやろう たねをの忌 島田 章平
手紙だと「元気よ」と言う寒見舞 津田 将也
繭玉の向うはダム湖追憶す 樽谷 宗寛
二股大根の涅槃一人鍋 藤川 宏樹
小児科にまはるモビール春隣 大浦ともこ
枯れざるは無頼の流儀作家死す 岡田ミツヒロ
機嫌よきハシビロコウや春隣 植松 まめ
妣と見る野地に芽を出す蕗の薹 漆原 義典
登山口は僕の伸び代冬霞 末澤  等
春海や全身汗の流れ水 豊原 清明
終活のはじめはフリマ寒卵 向井 桐華
接吻の間のことと落椿 川本 一葉
銀輪漕ぐ小さな逃亡二ン月の 伊藤  幸
ちりしくや紅の浄土の久女の忌 亀山祐美子
甲矢(はや)番ふ指に力や春近し 松岡 早苗
源流は日輪の巣よ兜太の忌 野﨑 憲子

句会の窓

小西 瞬夏

特選句「劇場の匂いかすかに雪催い」。雪が降りそうな湿気を含んだ気配になにかが匂ってくる。それが「劇場の匂い」だという意外性。場末の古びた劇場の映像が浮かび上がり、昭和感のあるノスタルジックな世界に浸る。

月野ぽぽな

特選句「小児科にまはるモビール春隣」。色とりどりのモビールが静かに揺れ動き、それを目で追う幼子たちとその親たち。回復の願いの満ちる空間に、春を待つ心の満ちた季語がよく合います。

十河 宣洋

特選句「やさしくなれるかな白いセーターなら」。甘い作品だがたまにはこういう作品があってもいい。人が持つ心の二面性。そんな思いを考えさせられて面白い。なかなか、照れくさくて優しくなれないという人は多い。特に日本人は優しさを表現するの下手である。本当は心の優しい人である。白セーターでなくてもいいんだがちょっぴり冒険しようかという気持。特選句「海女と息合わせて寝落つ冬の宿」。芭蕉さんは遊女と一つ家に寝たが、海女さんと寝たのは芭蕉より粋である。

松本 勇二

特選句「登山口は僕の伸び代冬霞」。登山口を伸びしろと見立てる感性が光りま す。何歳になっても伸び代あると思わせる、溌溂とした一句です。

佐孝 石画

特選句「漆黒として奥行はあるのです」。作者が最初に出会ったイメージは「漆黒」か「奥行」か。季語がない分、非常に観念的な詩になっているが、「漆黒」、「奥行」が共に暗喩的な響きを持ちつつ、読み手の既視感覚を誘う。そして「漆黒として奥行はある」という、なかば暴力的な断言が、じわりと妙な実感と迫力を絞り出してくる。「奥行」にはもちろん、人生、情念の揺れ幅にも通じることだろう。この観念と迫力は西東三鬼の「中年や遠くみのれる夜の桃」を彷彿とさせる。

福井 明子

特選句「聖観音真っ正面にして四温(柴田清子)」。仏さまと真向い、両の掌を合わせる。その時、遠つ世からなにか壮大なエネルギーを身に受けるような気がする。四温という簡潔な響きに、凍てつく堂から、湧くようなぬくみが漂ってくる一句。特選句「ちりしくや紅の浄土の久女の忌」。 昭和21年1月21日は杉田久女の忌日。一途さゆえに、紆余曲折の多かった人生。ちりしく紅のイメージは、過酷な最後に、せめて清楚なあたたかさを、との願いが込められていると思います。

藤川 宏樹

特選句「知らんぷり氷上に猫降り損ね」。決して猫好きではない私が、今月は「猫」を何故か三匹とってしまった。寒さを嫌い、炬燵で丸くなる猫が氷上へトライ。だが着地に見事失敗。すましてとりなす様が眼に浮かぶ。「知らんぷり」がうまく言い当てている。

風   子

特選句「クレヨンのはみ出している鬼の面」。園児の色とりどりの鬼の面が目に浮かぶようです。「建国日語るにマフラー長すぎる」。マフラーは何の比喩か。分からぬまま、その思いに引っ掛かりました。「猫となる気概じゅうぶん猫柳」。ちょっとあざといかな、と思ったのですが気概に免じて。「接吻の間のことと落椿」。絶妙に落椿で救われた。落椿が美しい。

津田 将也

特選句「やさしくなれるかな白いセーターなら」。それは、もう、なれるでしょう!あなたなら、きっと・・・。特選句「にびいろの野良猫朧ごと拾ふ」。鈍色(にびいろ、にぶいろ)とは、濃い灰色の猫のことです。平安時代に、この灰色という名称が定着しました。朧(おぼろ)は、春は昼も夜も空気中に水分が多いので、物がかすんで見えることが多くあり、このため俳句では、昼を「霞」夜を「朧」と表現します。朧は、月が出ていなくても発生し得るので、月が出ている夜の朧のときは「朧夜・朧の夜」などと使います。結句の「朧ごと拾ふ」は、この句での大収穫の措辞になりました。問題句「豆撒くや生かされてよくこの日まで」。とても佳い句です・・が、私なら、「生かされてよくこの日まで豆を撒く」と書きたい。

岡田 奈々

特選句「湯豆腐の湯だまりにいのちのかけら(銀次)」。湯豆腐をあー美味しかったといって皆で堪能した後、何故かわらわらと小さな箸で取れない豆腐の残り。本当、細部にまで命は宿っていますが、豆腐の欠片にそれを感じる作者の感受性の細やかさに感じ入った。特選句「銀輪漕ぐ小さな逃亡二ン月の」。小学生低学年の子が自転車で家出かな?小さな逃亡者は何から逃げようとしたのかな。背景が心に迫る。「冬の芽に少年の血が巡りゆく(高木水志)」。若さ故の憤り、それとも願望。「ブロッコリーの森に迷える小鳥たち(重松敬子)」確かにブロッコリーは森に見える。ミクロの大冒険。「クレヨンのはみ出している鬼の面」。幼稚園から必ず持って帰ってくる子の作った鬼の面。クレヨンの油の匂いのおまけ付き。懐かしい。「やさしくなれるかな白いセーターなら」。絶対成れると思う。私も白いセーター大好き。必ず毎年買う。だって、すぐ、くすんで、毛玉出来るから。私の殺気を吸い取ってくれているのかな。「ヒョウ柄のバナナに威嚇されており」。ヒョウ柄のと言うことは買って4、5日経過。そろそろアルコールくさくなってきた。早く食べてよって言われている。「健さんを気取る夫としるこ食ふ」。健さんのように格好良くはないけど、一緒にお汁粉食べる人がいるのが幸せ。「縁尋機妙疑う寒の片目野良猫」。「縁尋機妙」という言葉初めて知りました。でも、小さい頃から何にも良いことの無かったこの猫さんは猫不信になっても仕方ないよね。「登山口は僕の伸び代冬霞」。山は一つ一つ違う体験が出来る。そして、積み重ねることで、また、次の山へと。良いな山は。

松岡 早苗

特選句「掌に仏のごとき海鼠かな」。掌の一見してグロテスクな海鼠を、「仏のごとき」と捉えていることに衝撃を受けました。堅い骨も棘も持たず海底の堆積物を食べて穏やかに暮らしている海鼠。考えてみると確かに仏のような存在なのかもしれません。特選句「やさしくなれるかな白いセーターなら」。白色には、新たな出発のイメージがあり、清らかな広がりや希 望も感じられます。心にすっと爽やかな風が入ってくるようでした。

河野 志保

特選句「漆黒として奥行はあるのです」。見る、聞く、触れる、食す…いろんな場面に「奥行」はある。その存在は「漆黒」だという。見えないはずなのに見えている、と言うか見えている気になっている空間、といったことだろうか。不思議な説得力にひかれた。

島田 章平

特選句「潰れた家と屍隠す風花」「沖晴れてをり一月の山が鳴く」。2句とも『能登震災』を詠んだ句。しかし、表現はまったく違う。「潰れた家、屍」」というリアルな句と、もう一句はどこにも震災の表現はない、しかし、「一月の山が鳴く」という表現に恐ろしい凄みがある。 「沖」と「山」の対比、そして「泣く」ではなく「鳴く」に作者の写生眼の深さを感じる。

疋田恵美子

特選句「梅の花むしろ近所だ中韓は」。隣国韓国(北も含め)中国は、元より、地球上の全ての人々が仲良く平和であることを切に願う。世界平和の為、日本も多いに活動してほしいと思います。特選句「<スリム>快挙月で豆撒く日もあろう(森本由美子)」。月面着陸に成功した探査機「スリム」への喜びの句として頂きました。

柴田 清子

特選句「掌に仏のごとき海鼠かな」。掌に海鼠を乗せる行為。その海鼠が仏のようであると言う捉え方発想がすばらしいです。「人日の水なし暖なし能登人(びと)よ(野田信章)」。「非戦ヒセン非戦ヒセン百千鳥(野﨑憲子)」など、十七文字短い故に、訴えてくるものの大きさに驚いています。自分には、出来ない仲間の一句一句を、大切に読ませてもらって、佳年にしたいと思いました。

鈴木 幸江

特選句評「消印を押されたままの末黒野や(男波弘志)」。私は、切手に押された消印の意味を妙にいろいろと考えてしまう。〝いつ押されたのだろうか?この仕事をする人はどんな気持ちでこの消印を押したのだろうか?“などなど。使用済みの印と知るとなんだか辛くなる。そして、こんな自分はいったい何者なのだろうかと・・・。”末黒野”は情の強さを表現している季語。能登の震災火災跡の光景が浮かび辛くなったのは、私だけではないであろう。「にびいろの野良猫朧ごと拾ふ」。幻想的な美の世界を感受させていただいた。これは日本文化としておおいの大切な美意識と考えている。後世へも伝えたく思い特選とした。問題句評「春寒しバナナを黒くして悔し(山下一夫)」。表現は違うがこの作者の気持ちはよく分かる。兜太師への想いを感じた。拙句「ヒョウ柄のバナナに威嚇されており」も、先生は、ちょっと熟したバナナがお好き、ということを知ったときに、つくづく先生は先生だと実感した思い出がある。(因みに私は青いのが好き。)”春寒し”の季語がよく効きました。でも、ちょっと”悔し”は無くてもいいかな、と思って問題句にしました。

大西 健司

特選句「寒鯉の犇めきあへる地震の夜」。どんな小さな地震でも動物は敏感に反応をする。水底に固まっている寒鯉もやはり犇めきあう、それはあたかもか弱い人間の心の揺らぎのようだ。

桂  凜火

特選句「機嫌よきハシビロコウや春隣」。本格的な春が待たれます。 気の滅入るニュースもおおいこの頃なので機嫌よきものといるのはいいですね。ハシビロコウは妙に人間的なのでとても好感がもてました。

山田 哲夫

特選句「腎臓を一つ無くして除夜の鐘」。十数年前に同じ体験をした私にとっては、この句の作者の喪失感が痛いほど分かる気がする。理屈ではなく、生な実感として身体が覚えている感じは、何とも微妙で言葉にしては表しがたい気がする。「除夜の鐘」の下五がよく効いている。

綾田 節子

特選句「恋の猫理屈じゃないよ走る猫(佳凛)」。そうですよ、理屈じゃないですよ猫も人間も。猫の走る姿が動画のようです。特選句「幼子のけんけんぱーや春隣り(藤田乙女)」。真冬は元気の良い子供と言っても、外遊びも?でも少し暖かくなれば、春隣りが効いてます。子供の頃を懐かしみました。

男波 弘志

「寒雀空を見上げることにする」。そうすることにする この簡潔さと潔よさ 生きるとはそうゆうことなのだろう戦争をやめることにする それを実行できない世界の指導者は 人間をやめるべきだろう そんな人間が人間でいられる理由など どこにもない 特選

植松 まめ

特選句「父母(ちちはは)の面影恋し老いの春(寺町志津子)」。親離れが早かった私は父母への想いが淡泊であったが、ふた親を亡くし自分が老いを感じるようになると父母を恋しく思う気持が強くなった。特選句「オリオンの統ぶる夜空や霜の声」。犬を飼って居たころは夜遅くに犬とよく散歩をした。特に冬のオリオン座を仰ぐと心が洗われる様な気がした。

末澤  等

特選句「冬空があまりにも青すぎて敬礼」。これまでの登山のなかでこのようなシチュエーションに幾度か経験しましたが、私的には「背筋伸び」が精一杯で、「敬礼」までは思いつきませんでした。上手く表現されていると思います。

寺町志津子

「痛みとは生きてる証し沈丁花」。生々しい痛みに耐えておられる作者の一日も早いご快復をお祈り申し上げます。「幼子のけんけんぱーや春隣」。幼子さん達の明るく可愛いお声が聞こえるようです。♬♬「もう直ぐハールですねえ」。「いそぐことあらへんやろう たねをの忌」。たねをさんとお親しかった方の御句でしょうか? 素っ気ない表現に、お親しかった良き俳友を失った寂しさ、悔しさがジンと伝わってきました。

滝澤 泰斗

特選句「いそぐことあらへんやろう たねをの忌」。晩年の高橋さんに大阪で二度ほどお会いした。笠智衆さん然とした佇まいが印象的な方でした。ですので、エピソードも無いのですが、上五中七がその少ない邂逅の中で、如何にも、たねをさんが言いそうな言葉を持ってきたな、と、感心しきり。特選句「機嫌よきハシビロコウや春隣」。ケニアはマサイマラ国立公園の午後はサファリを休んで夕方までホテルで休息を取る。そんな退屈な午後を楽しませてくれるのはアフリカ独特の動物たち、中でもこのハシビロコウという鳥というか、鳥獣は出色だ。何を思ってか、ずーっと同じ姿勢で、長い時間、微動だにせず、ただ、目だけが生きている。それでいて、こちらを飽きさせない力に満ちていながら、不機嫌そうに見える・・・だからか、ある種の緊張もあってみていられる。時として、機嫌が良く見えたのは、目の動きが多少ユーモラスに見えたか・・・。「座して眠るあの雪嶺のたいらな師」。また、先生の忌日がやってくる。もう六年かと、この句の言わんとしていることも含め様々に思い出される。「にびいろの野良猫朧ごと拾ふ」。朧ごと拾う。季語が生きた。「人日の水なし暖なし能登人(びと)よ」。応援句を作るが、もう少し時間が要る。「軍港に雨を見ている開戦忌」。忘れてはいけない。戦争を知らない世代は、戦争を語った親や先人の言ったことを語り継ぐこと。その意味でもこの句のように、戦争を始めた日は忌日という感覚を大切にしたい。「枯れざるは無頼の流儀作家死す」。同じ年の生まれ、同じ学校ということもあり、何かにつけて意識した伊集院静。早い死を悼む。

樽谷 宗寛

特選句「源流は日輪の巣よ兜太の忌」。素晴らしい。源流、日輪、兜太と勢揃い。いただきました。私は雪女になって一句。「雪女の敬慕の情や兜太の忌(樽谷宗寛)」

豊原 清明

問題句「海女と息合わせて寝落つ冬の宿」。前田普羅句集を思い出す。生涯の句をうすい一冊に納めた、ふらんす堂『前田普羅句集 雪山』をこの句、「冬の宿」で思い出し、また再読したくなった。特選句「堕天使の横顔平か蜜柑むく(桂 凜火)」。この「堕天使の」を今月の句会に直感で選びましたが、「堕天使」は悪魔であり、ちょっと怖いなあと思います。「蜜柑むく」で選びました。

若森 京子

特選句「劇場の匂いかすかに雪催い」。〝劇場の匂い〟という言葉に色々今迄に演じて来た歴史を思い興味を持った。特選句「登山口は僕の伸び代冬霞」。登山口から、どんどん登って行くのを、僕の伸び代との表現が面白い。

三好つや子

特選句「にびいろの野良猫朧ごと拾ふ」。キジトラか、ハチワレか、クロなのか・・・毛の色がまだはっきりしない仔猫に懐かれ、連れ帰ってしまったのでしょう。飼うことにどこか躊躇している作者の心情も投影され、惹かれました。特選句「人日の水なし暖なし能登人よ」。地震と津波で、ライフラインを断たれてしまった能登の人々の痛々しさが、心に迫ってきます。日常の生活を一刻もはやく取り戻していただきたい。「冬の芽に少年の血が巡りゆく」。深くて、しずかで、熱いことばを紡いだ、聡明感のある表現。「猫になる気概じゅうぶん猫柳」。ツンツンしたり、デレデレしたり。そんな気ままな振るまいを許す、猫好きのための猫の句。

田中 怜子

特選句「自販機の灯りに浮かぶ冬の雨(石井はな)」。孤独な都会人にほっとするような温かみがあるのでは。その灯の中で雨が走っている、体験してますね。 特選句「いそぐことあらへんやろう たねをの忌」。たねをさんとは一度もお目にかかってないのですがなんとなく、たねをさんらしいのではないか、と。そして、忘れられることなく、ほっこりとした句にたねをさんを偲ぶことは良き事だな、と。

山本 弥生

特選句『手紙だと「元気よ」と言う寒見舞』。何十年来の友達からの寒見舞の手紙が来た。電話なら声を聞けば健康状態も分るが丁寧に手紙でくれた「元気よ」が、お互いに高齢なので逆の事も想像して気になる。

河田 清峰

特選句「川向うも同じ町名菜花咲く(谷 孝江)」。昔は川もなく戦もなく仲良くしてたのでしょう。

中村 セミ

特選句「ビルよりも硬し大寒の青空(月野ぽぽな)」。寒い時の青空が冷たく固い物に映っている。この青空は、一種の心情風景かと思う。海や空や夜は,昔から、宇宙と繋がっている。切れるような俳句も、不思議な絵を見るように、何かと,繋がっているのだろう。

和緒 玲子

特選句「軍港に雨を見ている開戦忌」。呉でしょうか、横須賀でしょうか。まるで自分が土砂降りの中、すぐ目の前の巨大な船を見上げているような錯覚を覚えました。装飾も無く淡々とした景の表現が、より多くのことを語っているように思います。

伊藤  幸

特選句「建国日語るにマフラー長すぎる」。現代人の感覚ですね。ストレートで好感が持てます。特選句「枯れざるは無頼の流儀作家死す」。戦後の無頼的姿勢を示した作家を無頼派と言ったらしいが現在でもその姿勢を貫く作家が絶えない。私もその読者の一人。永遠に枯れることなき流儀であろう。

漆原 義典

特選句「声忘れ母の眼は澄み初氷」。この句で4年前に亡くなった私の母が蘇りました。澄んだ母の眼と初氷が、静寂な情景を良く詠んでいると思います。上五の<声忘れ>が、一層の静寂さを感じさせます。素晴らしい句をありがとうございます。

亀山祐美子

特選句「クレヨンのはみ出している鬼の面」。事実のみを並べ感情を廃している分読者の想像を刺激する佳句。文句なく明るく伸びやか。一読顔がほころぶ。「沖晴れてをり一月の山が鳴く」「冬すみれ母百日の心電図」「三号車窓際枯野行列車(小西瞬夏)」「ビルよりも硬し大寒の青空」

 
岡田ミツヒロ

特選句「 漆黒として奥行はあるのです」。知覚できるのは、事物の表層でしかない。人の心にしても深層は窺い知れず、極限状況に於て、その実相を見る。特選句「夜空からちぎれたこころ粉雪降る」。星空の美しさも、いまや心に届かない災禍の街。降りしきる雪の無情。

吉田 和恵

特選句「いそぐことあらへんやろう たねをの忌」。たねをさんの名は聞くばかりで存じあげませんが、お人柄を彷彿とさせます。

菅原香代子

特選句「声忘れ母の目は澄み初氷」。凛とした母親への深い愛情を感じます。「父母の面影恋し老いの春」。亡き両親を思い出しその歳に近づいた自分への感慨を感じます。

野口思づゑ

今回は特選絞り切れませんでした。「痛みとは生きている証し沈丁花(三好三香穂)」。季語が効いています。「さあ来いよカモン・ベイビー 青鮫忌(島田章平)」。リズムが良い。「落ち椿躓くほどに老いました」。ユーモラス、そして実感がこもっている。「あなたからハンコをもらう春支度(三好つや子)」。離婚届の印鑑をもらい、これから第二の人生の春が始まるのか、それともやっと結婚の同意を受けルンルンの新婚生活が始まるのか。

渡辺 貞子

先日は瀬戸の海を渡り懐しい、ふる里の景色を楽しみ乍ら一日を娘に連れられて楽しむ事が出来ました。暖い皆さまお仲間に混じり楽しいひと時をありがとうございました。いつも仲良くしていただいている娘の幸せな様子を思いました。転勤族の夫と主に、あちこち転々と致しましたが、やっと古里に老を過しており娘の監督のもとに送るの日々でございます。何かとお世話になる事と存じますが、よろしくお願い申し上げます。楽しい一日でございました。ありがとうございました。うれしゅうございました。

野田 信章

特選句「冬の能登自傷のごとき崖崩れ」。一読、冬の日本海に突き出した腕(かいな)そのものの自傷行為の悲に重ねた映像による把握として読んだ。そこに、この地ならではの惨に耐えて生きる能登人(びと)への心情のこもった感のはたらきも在ると思える。

三枝みずほ

特選句「源流は日輪の巣よ兜太の忌」。源流は水源であると同時に万物の源である。それらが日輪の巣であるという把握に驚いた。古来より日輪は命の象徴として様々なものを産み育ててきた。すべての始まりを、源を、「日輪の巣」と表現したこのダイナミックな暗喩は、兜太の忌であるからこそ共鳴出来、また多様な解釈が許される。

山下 一夫

特選句「知らんぷり氷上に猫降り損ね」。猫が、高い所から一瞬動きを止めた後に飛び降りる姿、そこが氷上で滑ってあがく姿、姿勢を整えてしっかり爪を立てて何事もなく歩き去る姿がありありと浮かんできて思わず笑ってしまいます。後悔や反省、自嘲とは無縁に生きる動物は清々しい。特選句「劇場の匂いかすかに雪催い」。今にも雪が降りだしそうな空の気配や満ちている気配に劇場を共鳴させ「匂い」との臭覚表現を持ってきているところ、景の雄大さが憎い。問題句「ヒョウ柄のバナナに威嚇されており」。熟してきて茶色の斑点(スウィートスポット又はシュガースポットと言うらしい)が出てきたバナナのヒョウ柄への喩えは初見でなるほどです。ググると菓子・東京バナナの柄を指すことが多い様子。猛獣から威嚇というのも面白い。冷気にあてず早く食べきらないといけませんね。

菅原 春み

特選句「にびいろの野良猫朧ごと拾ふ」。朧ごと拾ふというところに深く納得し感動しました。特選句「声忘れ母の眼は澄み初氷」。眼の澄んだ母と初氷のとりあわせは秀逸です。人は機能を失ったぶんだけ、さらなるものを得るとか。

森本由美子

特選句「冬すみれ母百日の心電図」。晩年を生きていらっしゃる母上の察しきれないデリケートな心の動きを心電図に喩えているのか。冬すみれは作者がそれとなく寄り添う姿を暗示させる。

薫   香

特選句「いそぐことあらへんやろ たねをの忌」。ご本人を存じあげませんが、方言の持つあたたかさとおおらかさに包まれて緊張が解けるような心地よさが伝わってきました。特選句「きさらぎやそれでもいのちふくらんで(福井明子)」。春にはまだ少しある如月という季節でも、枝の先の芽は確実に膨らんでいる様が、ひらがなの持つ軟らかさとともにすっと胸に沁みました。

竹本  仰

特選句「海女と息合わせて寝落つ冬の宿」:歌人・浜田康敬の作品に<野に歌声放ち休日、出前そば持たぬ少年と活字拾わぬ我と>というのがあり、それと似た世界の良さを感じました。冒険を休んでいる冒険家じゃないですけれど、冬の間仕事が無い海女さんが民宿で働いているのか、それも風情ですね。夜、何だか静かすぎて寝息さえ聞こえそうなその闇の中に海女さんが昔の夢でも見ているんだろうか。北原ミレイ「石狩挽歌」のフレーズ「〽わたしゃ娘ざかりの夢を見る…」というような深い眠りが感じられました。特選句「掌に仏のごとき海鼠かな」:輪廻転生の果てというか、いつか仏になるために今はこの姿なのではなかろうか。と、ふと手のひらのナマコに人知れぬ愛着と憐れみを感じたのでは、と思いました。あるいは、これは前世での自分なのかもしれず、この出会い、何かしらゆかしいものである、という感慨でしょうか。ユーモラスな出会いの姿に、この世の仕組みを感じ、感じ入ったということではないかと、受け取りました。特選句「冬山の樹相ゆたかに吾を満たす」:老いの肯定のように感じます。例えば枯木と一言でいいますが、あれもそんなざっとしたものでなく、一枝一枝がそれぞれの形と情を持ったもので、空の形象を見事にあらわします。そんな豊かさは、人の内面と似つかわしく、その年齢にならねば味わえない種のものかもしれません。少し先走った言い方をすると、よい春を迎えるためには、冬という演出を経なければならないのか、ともふと思います。以上です。♡もう春一番の時期となりました。春一番の一は、まず一歩の一、踏み出しましょう、まず一歩。みなさん、よろしくお願いします。

新野 祐子

特選句「挙げる手に応える手あり息白し」。何気なくて人と人との良き交感が描かれています。「息白し」に生きとし生けるものの哀歓を見れずにはおれません。三橋敏雄の「手をあげて此の世の友は来りけり」。を連想しました。入選句「にびいろの野良猫朧ごと拾ふ」。「朧ごと」が眼目ですね。「寒鯉の犇めきあへる地震の夜」。地上だけでなく空にあるもの。水中に生きるものも、みな天変地異の犠牲となります。「受け入れて乗り越える」。口で言うのは簡単ですが、とても難しいことですね。考えさせられました。

松本美智子

特選句「寂しくて朧に母を呼びもどす(和緒玲子)」。あまり情景の浮かばないセンチメンタルな句は俳句として「有りか無しか」いつも迷ってしまいます。自作するときも、選ぶときも・・でも、この句はちょうどその微妙なラインをうまくバランスをとって「朧夜」の気分を表した秀句であると思いました。

川本 一葉

特選句「寂しくて朧に母を呼びもどす」。朧という不確かなものに縋るような想い。もう会えない人にどうしても会いたくなるとき、あります。美しい、とも思いました。

榎本 祐子

特選句「落ち椿躓くほどに老いました」。嘆くでも、抗うでもなく「老いました」の肯定が大人です。落ち椿の彩りも控えめにして効果的ですね。

重松 敬子

特選句「劇場の匂いかすかに雪催い」。観劇の高揚感がただよいます。雪を配することにより、日常と切り離されたひとときの喜びが伝わってきます。

高木 水志

特選句「はじめましては立春の鼓動です」。やわらかな立春の訪れを「はじめまして」で表現している。立春ならではの、どきどきする感覚がうまく表現されている。

荒井まり子

特選句「嫌いなものは嫌い?豆撒くぞ(十河宣洋)」。?の使い方が効果的で十二分に面白い。場面が見えてくる様。アッハッハァ。

三好三香穂

「風花に紛れて逝くよたましひも」。ちらほらと落ちてきては消えていく、溶けていく風花。どこか遠くに連れていってくれそうにも思う。そんな心情をよく表しています。「今日の邂逅風花と記します」。これも風花。あまり雪の降らないここ香川では、降っても、風花。特別なこと、天からの贈り物を戴いたような幸せを感じるのです。「接吻の間のことと落椿」。落ち椿はある日ある時突然ポトン。それが接吻の間のことと、捉えたことが面白い。どういう事だろうと、考えがぐるぐる回って面白い。

塩野 正春

特選句「浮き寝鳥翔ばず沈まず生きましょう(若森京子)」。この乱れた時世を静かに平和に生き抜くための悟り・・とも見える句。達観した生き方とでも言いましょうか。水に流されつつも焦らず動かず生きて行ければこの上ない幸せかな? 敵が来れば死んだふりもできる。 特選句「お多福の面追う節分の動悸(荒井まり子)」。幼き頃の初恋を思い出したのかな。お面をつければ怖くない・・とは言うものの相手は恋するあの子。ドキドキします。豆は優しくぶつけるか? 捕まえたらどうしよう?何を言おうか、あれこれ考えてしまいますね。老いた私にもこんな思い今でもあります。

柾木はつ子

特選句「冬の能登自傷のごとき崖崩れ」。地球が悲鳴を上げて至るところで自らを傷つけて行っているのでしょうか?その中で生きる私達は恐れおののきながら、それでも明日に希望を持って生きるしかありません。命の果てるその日まで。特選句「待ってるよあの子の席に日脚伸ぶ」。思ってもみなかった災害のためにクラスの子供達が離ればなれになって学ばなければいけない現実…けれど必ず元のクラスに戻って共に学べる日が来る事をお祈りしたいと思います。

銀   次

今月の誤読●「青空の澄み切っている孤独なり(三枝みずほ)」。わたしは病床にいる。看護師が「窓のカーテン、開けましょうか?」という。わたしが生返事したとたん、サッと陽光が差し込む。窓越しに見えた風景にわたしは驚く。そこには見事に晴れ上がった空があったからだ。その空の青いことといったら、まるで手練れの左官の塗ったような濃淡のない、真性の「青」だった。わたしはその青を全身で受け止めようと、両手を広げ、起き上がろうとする。だがカラダはわずかしか動かない。看護師が再びいう。「ムリしちゃダメよ。あなたは昨日まで死んでいたんだから」。そう言い残して看護師は出て行く。わたしは魅入られたように、その青から目が離せない。少しでも窓に近づきたい。近づけばその青に触れられる。なんの根拠もないが、それがわたしが生還した証しのような気がしたのだ。わたしは気力を振り絞って、カラダを動かし始める。ベッドの上をじりじり、わずかずつわずかずつ、わたしは窓に近づく。全身が汗にまみれている。何時間たっただろうか。ようやく窓にたどり着いたわたしは、両の手を差しのばした。触れた、と思ったとたん、そこにはガラスがなく、わたしはもんどり打って窓の外に放り出される。落ちる。わたしは落ちた。だがそれは地上に向かってではなく、空に向かってだ。青のまっただなかへ、そのもっとも深いところへと、わたしは落ちていく。そして叫ぶ。「生きている!」と。この声をだれが聞くだろうか。

谷  孝江

特選句「いくさなぞしてる場合か去年今年」。そうです!いくさなどしている場合ではありません。今、目の前で幼い子たちが食べる事にも事欠き、大人たちの爭いで傷を負うているのです。私達の年代を生きてきた人間は誰もが持っている消すことの出来ない事実です。人間として当然受けられる平和、三度の食事、小さな喜び、それさえ持って行かれるなんて許せません。教育を、食事を、子供たちに・・・それが、大人の務めです。

増田 暁子

特選句「覚めぬ木を二月の風の揺れ起こす」。春ですよ!と呼んでいる風と木々。早春の景色が見えます。特選句「はじめましては立春の鼓動です」。中7からの表現で春よこい!の気分が溢れます。問題句「ブロッコリーの森に迷える小鳥たち」。ブロッコリーの森に迷う小鳥、の意味がわかりません。詳しく説明が欲しい。▼ お問い合わせの件、ブロッコリーの、もこもこを森にたとえ、不安定な子供達の心理を想像して作りました。重松敬子。→重松様、有難う存じます。

藤田 乙女

特選句「トキめきの鍵と出会うよ梅蕾」。鍵でドアを開けるとどんな世界が広がるのでしょう。わくわくドキドキのときめきの鍵を持ちたいです。心が明るく弾む句です。特選句「鳥に人にそれぞれ居場所冬の島」。どんな時にも自分の居場所が必ずどこかにあるのは心の支えとなりますね。同時に自分の居場所を大切にして生きていかなければと思いました。

時田 幻椏

特選句「海女と息合わせて寝落つ冬の宿」。一読、「奥の細道」の「一家に遊女も寝たり萩と月」の芭蕉の句を思い起こします。海女と言う事で遊女以上に生なリアリティーを喚起させてくれます。特選句「にびいろの野良猫朧ごと拾う」。句を読み進める程に鈍色の世界がドラマティックに抱え取る事が出来ました。

石井 はな

特選句「冬の能登自傷のごとき崖崩れ」。元日の能登の震災は衝撃でした。被災された方々が一日も早く立ち直られる事を祈ります。その災害の様子を自傷と表現された事が深く心に響きました。自傷・・・重い言葉です。

向井 桐華

特選句「春立つやしつけ糸解き草履履く」。新しい着物のしつけ糸をほどいて、草履を履いてお出かけでしょうか。うきうきした気持ちが伝わってきます。特選句「 寂しくて朧に母を呼びもどす」。わかります。自分にも同じようなことがあります。やっぱり母親を求めますよね。共鳴句です。

稲   暁

特選句「軍港に雨を見ている開戦忌」。軍港とはどこの港でしょうか?高松港も軍港化しつつあるとも聞きます。

佳   凛

特選句「待ってるよあの子の席に日脚伸ぶ」。まだまだ学校へ行けないお子さんがいらっしゃるのですね。いろいろな事が、過密になり大人も子供も住みにくくなりました。目標は一つでも行く道は、いくらでもあります。どうか、挫けずに、頑張って下さい。

大浦ともこ

特選句「にびいろの野良猫朧ごと拾うふ」。朧ごと拾ふという表現に惹かれます。野良猫に向ける優しい眼差しが伝わってきました。特選句「霜柱うるるうるると鳴り始む」。うるるうるるというオノマトベに意表を突かれました。自然への小さな発見を掬い取っていていいなぁと思います。

野﨑 憲子

特選句「甲矢(はや)番ふ指に力や春近し」。立春間近の、一番弓を引き絞る緊迫感が伝わってくる。作者はルビを記していなかったので、そのまま貼り付けた。かつて高橋たねをさんの通信句会の世話人をした折、「希臘」という語がでてきた。私が、ルビを振りましょうか?と尋ねたら、たねをさんは「ギリシア」と読めないようなら俳人で無いと言われた。でも、此の句にはあった方がよかったかも知れない。狙った的のその奥までも射貫く句をと念じる私の共鳴句。

(一部省略、原文通り)

袋回し句会

猫の恋
エッシャーの階段尽きず猫の恋
藤川 宏樹
四、五日は行方知れずや猫の恋
植松 まめ
風の名を呼べば恋猫ふり返る
和緒 玲子
恋の猫眼鏡ケースを踏み逃げる
島田 章平
東大寺二月堂脇猫の恋
渡辺 貞子
兜太忌・たねを忌
まっすぐに水脈ひく小舟兜太の忌
渡辺 貞子
兜太忌のアベ一族を倒すまで
島田 章平
波は私で私は波で兜太の忌
野﨑 憲子
たねをの忌深夜のシヤドーボクシング
野﨑 憲子
句会は楽しいですね兜太の忌
漆原 義典
笑ふたな風船とばすたねをの忌
島田 章平
雪だるま誰も通らぬ通学路
島田 章平
能登晴れて涙の顔の雪だるま
島田 章平
「がんばろう」鉢巻まいた雪だるま
島田 章平
接吻のシヅ子アイスケ雪が降る
島田 章平
雪花やシェパードは耳ピンと立て
植松 まめ
初スキーパウダースノウまきあげて
三好三香穂
農夫あり草履をなうや雪静か
銀   次
春雪が甘酸っぱいねべそをかく
藤川 宏樹
早春
早春は裸の馬に乗って来る
銀   次
早春や足指さえも待ち焦がれ
末澤  等
早春賦口ずさみつゝ軒に干す
三好三香穂
早春やいかなご待ちし瀬戸の海
漆原 義典
早春ほろり粘菌が入れ替はる
野﨑 憲子
空耳が落つる椿の繰り言か
和緒 玲子
灯台の灯に水仙の浮かぶ島
島田 章平
花の雨逢瀬の宿の夕しづか
和緒 玲子
お騒がせな人と言はれて花ミモザ
野﨑 憲子
川風に初花ふるへゐてひとつ
和緒 玲子
平気で嘘をついては風花
野﨑 憲子
フリージアの花を束ねて君の手へ
植松 まめ
男木島のかおりを纏う花水仙
末澤  等
いい匂ひ踵をあげて幼なの梅
三好三香穂
早春や手紙は明日の自分宛
和緒 玲子
早春のゆりかご光に包まれて
薫   香
春早しいつもの席を退かぬ猫
島田 章平
祭壇に早春のこゑ集まれり
渡辺 貞子

【通信欄】&【句会メモ】

2月20日は金子兜太先生のご命日でした。あっという間に6年が経ちました。師は、「平和」を何より願われていました。不穏な空気の満ちてゆく世界へ 、これからも多様性と愛に溢れた「平和の俳句」を、ご参加の方々と共に熱く発信してまいりたいと念じています。

今回は、岡山から小西瞬夏さんとお母様の渡辺貞子さんがご参加くださり、いつにも増して楽しく豊かな句会になりました。袋回し句会の最高点句は、渡辺さんの作品でした。 今後ともよろしくお願いいたします。

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