「海程香川」
第171回「海程香川」句会(2026.04.11)
事前投句参加者の一句
| スカートと連翹の呼吸(いき)すれ違う | 伊藤 幸 |
| 鷹化して条理ついばむ鳩と為る | 藤川 宏樹 |
| 精霊が青をあつめて仁淀春 | 松本 勇二 |
| 入学式娘は父の恋人よ | 山本 弥生 |
| 定年しない私に戻る菜花摘み | 岡田 奈々 |
| 人類の最晩年へ花万朶 | 大西 健司 |
| 日本人桜と言う骨柔らかい | 中村 セミ |
| 麻酔の俺深く深く青さんま | 十河 宣洋 |
| 薄氷や一閃の力残しをり | 塩野 正春 |
| 素のままのこころに纏う花衣 | 植松 まめ |
| 春耕や土の饒舌問ふてみん | 末澤 等 |
| 春泥や鈍く光れる鍵の束 | 松岡 早苗 |
| 蝶の昼首里の迷路にまぎれこむ | 吉田 和恵 |
| 地に一花一顆のいのち水俣忌 | 野田 信章 |
| 春耕を小さく笑う雨後の犬 | 佐藤 詠子 |
| 奉公さん三つならべて初さくら | 福井 明子 |
| 遠い国の争い私を蝕む春 | 滝澤 泰斗 |
| この蝶のこの瑠璃色に戻らねば | 小西 瞬夏 |
| 芝居はねおぼろの橋を渡りけり | 重松 敬子 |
| 蝶肩に御朱印を待つ閻魔堂 | 河田 清峰 |
| 蟇穴を出てまた凹む 戦争 | 若森 京子 |
| 骨董市古雛ぽつんと京言葉 | 増田 暁子 |
| 麗かやのしりのしりと牛のしり | 矢野二十四 |
| はなうたのひとのみちかけ山笑ふ | 亀山祐美子 |
| 前を行く君の鼻歌 風眩し | 花舎 薫 |
| しなやかに空を拾って夕桜 | 高木 水志 |
| 吉野山水の惑星さくら色 | 三好三香穂 |
| 春愁というほどもなく日の暮れる | 榎本 祐子 |
| 薄氷やG線上にある卵 | 男波 弘志 |
| 蛇穴を出てどの本能を頼ろうか | 三好つや子 |
| 姉の背にいつまた会える桜雨 | 遠藤 和代 |
| 風光る別れからすぐ逃げる癖 | 山下 一夫 |
| 荒物屋の爺ちゃんの膝花の塵 | 荒井まり子 |
| 花満ちて躰の芯の渇きかな | 向井 桐華 |
| ひさかたの赤子の軽さ花ミモザ | 薫 香 |
| 王は要らぬと軋む鉄柵凍返る | 月野ぽぽな |
| さくら咲くまた一枚の夜が明けて | 佐孝 石画 |
| 左心室の鼓動の海を春の雨 | 松本美智子 |
| 糸綴じの絵本のほつれ春の月 | 三枝みずほ |
| 寝ころんで良きことを待つ萬愚節 | 銀 次 |
| 耕人の中に紛れるボヘミアン | 森本由美子 |
| 兄逝きて半年経って飛花落涙 | 田中 怜子 |
| そうか もうおらんのか 人生鈍行 | 田中アパート |
| 黄蝶二つ愛欲ながらはしゃぐ昼 | 豊原 清明 |
| 男と女をバンドネオンで春の宵 | 布戸 道江 |
| 下萌えを割りて貝母のうつむける | 樽谷 宗寛 |
| 日向ぼこ一切皆空うつらつら | 各務 麗至 |
| 花冷えや水の神へは灯をささげ | 津田 将也 |
| 君の名を呼べば春満月ぐにやり | 川本 一葉 |
| 桜蕊死者の時間のゆっくりと | 菅原 春み |
| 春浅し句友はひとり旅急ぎ | 出水 義弘 |
| 高楼に卑弥呼の孤愁春の月 | 岡田ミツヒロ |
| ちゅうりっぷチューと言う時ちと拗ねて | 柾木はつ子 |
| 情死考菜種梅雨など思ひゐる | 淡路 放生 |
| はぐれ方いよいよ上手しゃぼん玉 | 新野 祐子 |
| 万愚説それよりガソリンの話 | 河西 志帆 |
| 伝えてこその命は桜戦雨 | 竹本 仰 |
| たたずめば桜と私の空間 | 野口思づゑ |
| 夕闇に染まり桜の散りいそぐ | 石井 はな |
| 羊歯萌ゆる無人機飛び交う世となりぬ | 疋田恵美子 |
| 異空間ふっと息吐き花筏 | 漆原 義典 |
| 埜野路傍蒲公英名草黄々嬉花 | 時田 幻椏 |
| 一列に並んだ目刺「文句あっか」 | 綾田 節子 |
| 我儘はもう言いません豆の花 | 柴田 清子 |
| 母ひとり父の海馬にゐて菫 | 大浦ともこ |
| 戦火虚し菜の花ずっと泡立つ日 | 河野 志保 |
| また脱皮したがる街よ夕陽炎 | 和緒 玲子 |
| ときめきを未だ忘れず葱坊主 | 藤田 乙女 |
| 戦場へつづく道なり夕櫻 | 野﨑 憲子 |
句会の窓
- 小西 瞬夏
特選句「春泥や鈍く光れる鍵の束」。鍵の束の鈍いひかり、地下室か、夜の建物か、なんとなく暗い秘密の匂いもする。取り合わされている季語が「春泥」。その距離感が絶妙である。無機質過ぎず、命も感じられる。金属の固いものと、自然のどろどろしたもの、という対比も面白い。
- 松本 勇二
特選句「この蝶のこの瑠璃色に戻らねば」。瑠璃色は青春の象徴か、あるいは純情か、いずれにせよどこかでリセットしなければならない。そしてまた溌溂として生きて行く。
- 岡田 奈々
特選句「精霊が青をあつめて仁淀春」。春の清々しい空気感と仁淀川の青さが貴い物に思える。特選句「飛花落花この世の記憶剥がしゆく(柾木はつ子)」。桜の花びら一枚一枚が何故か来し方の記憶に繋がってゆく。それが飛んで行く毎に、それまでの良きことも悩みも持って行ってくれる気がする。「スカートと連翹の呼吸すれ違う」。連翹の花のひらひら感と春になって、ズボンからスカートに替わる軽やかさがリンク。「春耕や土の饒舌問うてみん」。春になって、土まで、耕されて、活き活きしている様子がよく分かる。「蝶の昼首里の迷路にまぎれこむ」。都は細道が奥まで続き、蝶を追いかけて異空間に入って行くようだ。「笹鳴きや句集の人の急ぎ逝く(出水義弘)」。まだまだ、俳句に短歌に川柳に言い足りないことだと、島田さんのご冥福お祈り申し上げます。「骨董市古雛ぽつんと京言葉」。私に買って貰ったお雛様の顔を思い出しました。小さいながらも御殿に住んでいたお雛様です。「はなうたのひとのみちかけ山笑う」。人の一生の山谷。頑張ろうと、手をこまねいていようと、結局は何事も無かったかのように過ぎていく。山はいつもおおらかに見てくれている?「たたずめば桜と私の空間」。満開の桜の木の下は何故か静寂で、私を優しく包んでくれる。桜大好き。『一列に並んだ目刺し「文句あっか」』いいね。目刺しだろうが、鯛だろうが、一匹は一匹。それが五匹もいるのだから、選ばなきゃ。
- 津田 将也
特選句「地に一花一顆のいのち水俣忌」。数多くの犠牲者を、ただの数字として見るのでなく、「一花・一顆」と具体化することによって、公害で奪われた尊い命の個々の物語を想起させます。また、季語として「水俣忌」を用いたことで、公害に対する社会的な怒り、悲しみ、その責任を問い続ける姿勢が表現されました。
- 十河 宣洋
特選句「スカートと連翹の呼吸(いき)すれ違う」。爽やかな空気を感じる。何気ない風景だが気分がいい。特選句「君の名を呼べば春満月ぐにやり」。別段朧月とか野暮なことは言わない。満月が思わず振り向いたのである。その顔が笑顔で思わずステキと叫んだ。そんな印象。
- 柴田 清子
「たたずめば桜と私の空間」。桜の空間、私の空間、その空間にあるものが、それぞれ何であるかは、言葉にしていないところが、この句に引き寄せられました。特選としました。
- 各務 麗至
特選句「桜蘂死者の時間のゆっくりと」。付き添っていたはずの肉親でも急逝と思ってしまうのは、普通で・・・・・。だけど、いくら他人でも、やはり残された方にはいつまでもその人の姿は消えず、桜蘂に、亡くなった人の・・・・、こころの芯を見せて貰っているような作者のやさしい気持ちをこの句から感じることになりました。特選句「たたずめば桜と私の空間」。「約束しない蝶と私を散歩して」もで、どちらも難しくて、どちらにしようかと迷った挙句、「桜と私の空間」の感動に共鳴することになりました。
- 樽谷 宗寛
特選句「姉の背にいつまた会える桜雨」。いつまた会えるかが永遠の別れを物語り、桜雨が作者の涙のような気がした。「兄逝きて半年経って飛花落涙」。逝きて経ってが説明?飛花落涙でいただく。
- 矢野二十四
特選句「情死考菜種梅雨など思ひゐる」。 菜種梅雨の質感が情死に呼応している。特選句「しゅくだいわすれたって金魚めく口(三枝みずほ)」。 金魚めく口が愛らしい。口語の軽みがよい。「春泥や鈍く光れる鍵の束」。春のぬかるみの柔らかさに、秘密の鍵束の硬さ。「荒物屋の爺ちゃんの膝花の塵」。やさしい爺ちゃんの存在感を感じる。「糸綴じの絵本のほつれ春の月」。母のように温かい絵本なのだろう。「春おぼろ顔を隠して眠る癖(松岡早苗)」。シャイな句。ただもっといい季語があるかも。「風船の空を遠くに置きしまま」。決して手に入らないものへの憧れを上手く詠んだ。「ちゅうりっぷチューと言う時ちと拗ねて」。「拗ねている」とは言い得て妙。「縄跳びの縄垂れている日永かな(榎本祐子)」。遊び疲れた感が季語とマッチ。『一列に並んだ目刺「文句あっか」』。文句なし。目刺の開きはないが開き直っている。
- 和緒 玲子
特選句「花満ちて躰の芯の渇きにかな」。桜が咲き満ちる頃の湿り気のある空気を感じる躰。同時に躰の内なる渇きに気付く。渇き の字を当てることで焦燥感にも寄せている繊細な感覚。
- 若森 京子
特選句「スカートと連翹の呼吸すれ違う」。鮮明な黄色い連翹の中を歩いたのであろう。自分の感動を、スカートの呼吸とすれ違うと詩的に簡明に一行に表現している。特選句「ときめきを未だ忘れず葱坊主」。幾つになってもときめきは大切。ときめきを毎日持つのも若さの秘訣。葱坊主がぴったりの一句。
- 淡路 放生
特選句「我儘はもう言いません豆の花」。豆の花畑を見ていると、幼い者でも大人でもこんな気持になりそうです。時は春、性善説もいいものです。♡野﨑さんに「海程香川」三月句会報を送っていただきました。読んでいるうちに、懐かしくなり、こころが弾みました。そこで投句だけでもとお願いをして、また仲間に加えていただいた次第です。よろしくお願いします。
- 河西 志帆
特選句「さくら咲くまた一枚の夜が明けて」。「一枚の」この感じ、この雰囲気、見た事があるような、懐かしさがあるんです。何処だったんだろう。誰だったんだろう。特選句「春おぼろ顔を隠して眠る癖(松岡早苗)」。この癖を知っています。知っていますか。この癖は遺伝性があるようなんですよ。掌で、こうして隠すんでしょ!「ひとの子は見ぬ間に育つシャボン玉(菅原春み)」。確かこんな事を言ったり、言われたりしていました。それをそのままの形で通す!そこが素敵!
- 中村 セミ
特選句「蝶の昼首里の迷路にまぎれこむ」。歩きつかれて、喉も乾き、ちょうど三叉路にでた、歩いてきて、もう三叉路は五つあった。その場所は店があり、側にドブ川がながれていた。「お客様まだ、ぬけられませんよ。うちの海底ドリンク飲んで元気を取り戻して下さい。」「まだこの迷路ね三叉路続きますか。水は、打ってませんか」「はい、まだまだ続く」というので、でも、海底ドリンクは、一本のんでも、たらないでしよ。「そこです、これをのむと、どんな物でも美味しい水になるのです。」ここを流れるこのドブ水も美味しく飲めるのです。とりあえず5万だして1つ買って飲んだそれから、ドブ水に顔を近づけると、腐った臭いがしたが、飲んでみると美味しい、ガブガブ飲んで、寝てしまった。起きると、丸裸にされて側に綺麗なかわがながれていた。真昼の蝶々が水を飲んでいたが、羽根を広げると真っ黒い羽根だった。
- 川本 一葉
特選句「精霊が青をあつめて仁淀春」。なるほど。精霊が集めたからあれほどの美しい青なのですね。気高いほどの美しさの川仁淀川もこんな風に詠んでもらえるとしあわせだと思います。特選句「ちゅうりっぷチューと言う時ちと拗ねて」。力が抜けているけれど周到な句です。はいはい勝手にやってください、とも思いました。面白い句です。
- 月野ぽぽな
特選句「水俣忌晩柑の照り孤にあらず(野田信章)」。水俣病の犠牲者を追悼し環境汚染の歴史を忘れず、命の尊さを訴える日とされる水俣忌。水俣病によって海での漁ができなくなった漁師たちが、生きる糧を求めて山を開墾したという晩柑の「照り孤にあらず」に哀悼の心が伝わります。それと同時に晩柑というみずみずしい果実の美しさがまるで祈りのようで、人々の逞しさ、絶えることのない希望を思わせて印象的です。
- 高木 水志
特選句「約束しない蝶と私を散歩して(岡田奈々)」。春の化身のような蝶の気まぐれな飛び方は、約束はしないだろうが一緒に散歩してくれているような感じがあって心地好い。
- 山本 弥生
特選句「定年しない私に戻る菜花摘み」。女性も会社で定年迄一生懸命に働いた方が、やっとこれからは定年の無い自由な毎日を過ごしたいと思う「菜花摘み」によくその気持ちが表われていて共感しました。
- 男波 弘志
「麻酔の俺深く深く青さんま」。この麻酔、はなんであろうか、実際にオペ室のベッドに仰臥しているのだろうか。おそらくそうではないであろう。自己陶酔と自己離反が相互に今を去来しているのだろう。それにしても秋刀魚がこういうふうに詠われたことは今まで無かったであろう。準特選。
島田さん、貴方が自分の心の中に住んでいることをはっきり自覚しました。ほんとうありがとうございました。
その人を容れるほど大きシャボン玉 男波 弘志
- 増田 暁子
特選句「遠い国の争い私を蝕む春」。遠い国の争い、いつの間にか近辺も蝕む戦をやめてほしいと切に願います。特選句「母ひとり父の海馬にゐて菫」。なくなったお母さんへの思いが、お父さんの海馬に花を咲かせてるのだろう。
- 藤川 宏樹
特選句「日向ぼこ一切皆空うつらつら」。昼間一人でいるとき、しばしば寝落ちします。うつらうつらがいいんです。この世におさらばするときもこうならば、と願うこの頃。
- 植松 まめ
特選句「スカートと連翹の呼吸すれ違う」。ひらひらとしたスカートと黄色の連翹の取り合わせに惹かれました。呼吸にいきのルビもよかったです。特選句「しなやかに空を拾って夕桜」。しなやかに空を拾っての表現に感動しました。「麗かやのしりのしりと牛のしり」。おおらかで楽しい句ですね。
- 大西 健司
特選句「芝居はねおぼろの橋を渡りけり」。江戸の芝居小屋を思う。芝居がはねておぼろに霞む橋を渡っていく。そんな粋な風情が心地良い。どこか芝居の一場面のようだ。
- 三枝みずほ
特選句「麻酔の俺深く深く青さんま」。麻酔針を刺して朦朧とする中に、青さんまと自分とを重ねた。身動きがとれないからこそ感覚が冴えてくる。特選句「君の名を呼べば春満月ぐにやり」。名を呼んで存在を確かめる。会えない喪失感をぐにやりと表出した。行きどころのない想いが溢れている。
- 疋田恵美子
特選句「鷹化して条理ついばむ鳩と為る」。現代社会の不条理への、警鐘と読みました。特選句「薄氷やG線上にある卵」。極限の緊張感を思いました。
- 塩野 正春
特選句「桜咲き満ちて宇宙に宇宙船(月野ぽぽな)」。ここ、2,3日前に宇宙から戻ってきた宇宙船があります。アルテミスという名で4人が乗っています。その宇宙船、月の裏側(地球から見て)を撮影し地球に戻りました! イラン革命とそれに伴う戦争のニュースに隠れていましたが、人類にとって素晴らしい進歩です。逆に地球人の夢を打ち砕いてしまいました! 月の裏側は秘密の場所で誰にも見られてはいけない、見られない場所でした。桜は普通に咲いているのに・・。この宇宙船の句、正にぴったりの情景ですね。
- 松岡 早苗
特選句「はなうたのひとのみちかけ山笑ふ」。「ひとのみちかけ」は眼前の今ではなく、永い年月繰り返されてきた人々の栄枯盛衰を表しているように感じました。春の歓喜の底にある諸行無常。ひらがな書きも効果的だと思いました。特選句「母ひとり父の海馬にゐて菫」。老いて子どもや孫の顔は分からなくなっても、妻だけは記憶の中に鮮明に残っている。長年連れ添ったご夫婦の深い絆を感じました。特に「菫」の小さな明るさが印象的で、つつましくも幸せな人生を送って来られたのだろうと想像しました。
- 布戸 道江
特選句「春浅し句友はひとり旅急ぎ」「なんでまた 生きいそぎよって アホやな(田中アパート)」。島田章平さん、昨年句会でお会いして初めての私にやさしく選いただきました。今も新聞を開くとお名前を探してしまいます。「スカートと連翹の呼吸すれ違う」。スカートの裾とすれ違った連翹の息遣い、繊細な感覚。「風光る故郷行きの連絡船」。瀬戸内海の平和な風景、揉めてる海峡、早い解決を。「戦火虚し菜の花ずっと泡立つ日」。戦早くおさまってほしい戦争、穏やかな菜の花までが怒ってる。
- 佐孝 石画
特選 なし。並選「日本人桜という骨柔らかい」。「桜」を柔らかい「骨」と喩えたのは巧い。「人」という限定が少し気にかかる。「春泥や鈍く光れる鍵の束」。色調と素材感の対比が秀逸。「春耕を小さく笑う雨後の犬」。「小さく笑う」がミステリアスで哀切あり。「しなやかに空を拾って夕桜」。「桜」はひそかに「空」を拾っているのだという発見。「風光る別れからすぐ逃げる癖」。中七下五の自虐に共鳴性あり。上五「風光る」に句柄を明るく見せる妙技を見る。「風船の空を遠くに置きしまま」。「風船」は自身ではなく「空」を置いてきているのだという発想に光あり。「また脱皮したがる街よ夕陽炎」。「陽炎」は「脱皮」の予兆のだという見立の妙。冒頭「また」が気になるところ。
- 伊藤 幸
特選句「地に一花一顆のいのち水俣忌」。「水俣忌」とは「水俣病公式発表」の日五月一日。やりたい放題の企業活動がどれほどの悲劇をもたらすか世界中の警鐘を鳴らすことになった。人間はいうまでもなく犠牲になった生きとし生けるものすべての命を悼む地球規模の季語となった。掲句はそのすべての命に捧げた句と思われる。特選句「素のままのこころに纏う花衣」。隠しきれない素のこころ。「いいのだよ、それでいいのだよ。」と花弁が包んでくれる。どことなく艶かしさを感じさせる優美な句である。
- 河田 清峰
特選句「羊歯萌ゆる無人機飛び交う世となりぬ」。地上ドローンやロボットまで戦する世となり人間の居場所は羊歯萌える森しか無くなるのか?
- 花舎 薫
特選句「地に一花一顆のいのち水俣忌」。一花一顆がいいですね。この世に一度しかない命、その尊さをあらためて考えさせられる水俣忌。最近の世界情勢に対する危惧にも通じる一句。
- 吉田 和恵
特選句「花満ちて躰の芯の渇きかな」。桜の下には鬼がいると言われますが、満開の桜には底知れぬ不安が秘められています。躰の芯の渇きとは言い得ていると思います。
- 柾木はつ子
特選句「花満ちて躰の芯の渇きかな」。桜の花はなぜか人の心をざわつかせてしまうようです。心の奥にある言いようのない渇き、それがなんであるかは人それぞれだとは思いますが、花の下に佇んでいると、本当にそんな感情が湧いて来ます。特選句「寝ころんで良きことを待つ萬愚節」。このところ、何につけてもやり切れなさが募るばかりのご時世、大嘘でもいいから、腹を抱えて笑えるような事柄が起きて欲しいですね。
- 野田 信章
特選句「スカートと連翹の呼吸(いき)すれ違う」。一読、春の大気の爽快さがある。それは単なる描写でなく「連翹の呼吸(いき)」と把握された春の生動感の確かさにあるとおもう。読み返すほどに、すれ違う「スカート」そのものの「呼吸(いき)」づかいとも覚えてしまうところがある。これは一句の映像を支える叙情の作用の確かさかともおもえる。
- 三好つや子
特選句「スカートと連翹の呼吸(いき)すれ違う」。春風にそよぐスカートの裾あたりに、まばゆく咲いた連翹の花々。春ならではの躍動感に、吸い込まれそうな句です。特選句「精霊が青をあつめて仁淀春」。精霊という言葉によって、仁淀川のブルーに奥行を与え、スピリチュアルさを不動のものにしています。「この蝶のこの瑠璃色に戻らねば」。老いるにつれ、失くすものが増えていくなか、これだけは譲れない。そんな矜持が強く感じられ、心に刺さりました。「幼な子と眠るほてりや桜貝(増田暁子)」。子育中のつかの間の安息感。「ほてり」と「桜貝」の取り合わせが快い。「母ひとり父の海馬にゐて菫」。どんなに認知症が進んでも、妻のことを忘れない父への愛おしさが、菫にあふれています。
- 漆原 義典
特選句「春浅し句友はひとり旅急ぎ」。島田さんと句会でお会いし、ご指導いただいたことを思い出し、感謝しています。島田さんありがとうございました。
- 野口思づゑ
特選句「しなやかに空を拾って夕桜」。いいですね、「空を拾って」の描写。特選句「さくら咲くまた一枚の夜が明けて」。言われてみれば、夜はめくるように明けていくように思えてくる。朝の桜でしょうか、明るさに惹かれる。「君の名を呼べば春満月ぐにやり」。よほど「君」が大好きなのですね。「逃げ惑う子どもら麦の大地痩せ(大西健司)」。ウクライナでしょうか。心が痛みます。『一列に並んだ目刺「文句あっか」』。思わず、文句ありません、と言ってしまった。
- 岡田ミツヒロ
特選句「定年しない私に戻る菜花摘み」。成果とか実績とかの世界からの解放、これからは少年の昔へのゆるやかな歩み、菜花摘みのカタルシス。特選句「伝えてこその命は桜戦雨」。戦争はいかなる言辞で飾られようと実体は醜悪な汚物。飢餓と死と恐怖の塊。その実態を伝え、子孫を平和に永らえさせること、それでこそ、その命は桜のように美しい。戦争のグロテスクと桜の華かさ、命の価値。
- 向井 桐華
特選句「桜蕊死者の時間のゆっくりと」。「生」と「死」の時間を桜蕊になぞらえたところがいい。
- 榎本 祐子
特選句「風船の空を遠くに置きしまま(小西瞬夏)」。風船の空とは郷愁、思い出だろうか。日常という実の時間の背後に風船の糸のように自身と繋がっている。
- 時田 幻椏
特選句「春愁というほどもなく日の暮れる」。力みの無い何とはない日常感と、とは言え春の軽い倦怠も感じます。特選句「母ひとり父の海馬にゐて菫」。透明な情愛、羨ましい限りです。問題句「蛇穴を出てどの本能を頼ろうか」「ちゅうりっぷチューと言う時ちと拗ねて」。本歌取りの楽しさ、これもまた面白い句になりました。
- 田中 怜子
特選句「人類の最晩年へ花万朶」。そうならないように、目をしっかり開けて、事実をよくみて、声をきちんとあげないといけませんね。地球は春になって花を咲かせて、自然に従っています(地球温暖化で狂いだしてもいますけど)。特選句「戦場へつづく道なり夕櫻」。うかうかしているとつづく道を歩き出しているかもしれませんね。
- 佐藤 詠子
特選句「また脱皮したがる街よ夕陽炎」。街を擬人化したのが面白い。仕事や買い物帰りの道で振り向けば、いつもの街が風貌を少し変えるかのように見えた。高層ビル、マンション群、全国チェーンの店舗が増える景だろう。その重苦しさに街が脱皮したがっているという作者の呟きがある。夕方の陽炎の捉えどころのない美しさに、街も人も虚脱感を覚えるのは間違いない。「また」という出だしの二語に作者の住み慣れた街への愛が見える。そして、この句からは、人もまた脱ぎ捨てたい今を生きているとも受け取れる。脱皮することがかっこいいと決めつけられないが、街を歩く人たちは変わらない日常に安堵しつつも、環境に新しさを求めてしまう。その心の揺らぎが夕陽炎に滲み出ている気がする。一日の終わりの残像が美しい。
- 三好三香穂
特選句「しなやかに空を拾って夕桜」。空を拾って、という表現に惹かれました。暮れ行く空に桜の色も変わっていく。夕桜のしっとりとした情景がよく描けていると思います。
- 出水 義弘
特選句「君の名を呼べば春満月ぐにやり」。春満月に向かって、亡き人の名を心の中で呼ぶ。自ずと涙で月の形が崩れる。大切な人を失くした寂しい気持ちが良く表現されている。仏典に「倶会一処」の言葉もある。しばらくの別れだ。特選句「ときめきを未だ忘れず葱坊主」。 平々凡々で生きてきた人生。しかし、よく生き延びたとも思う。心身の若さを保つ秘訣の一つは、「ときめき」を持って日々暮らすことだと、ベストセラー作家兼精神科医の和田秀樹氏の著書にある。その具体的な方法として、俳句を作ることもありだと思う。
- 河野 志保
特選句「風船の空を遠くに置きしまま」。まず空という視界の広がりを感じた。そして心の自由みたいなものが生まれた。最後は風船の存在感にぐっと引き込まれた。
- 竹本 仰
特選句「春耕や土の饒舌問ふてみん」:昔、九十も半ばの母が土の上にぺたんと座り、楽しそうに草抜きをしていたのを思い出す。そう、どうもそこには対話が成立しているらしいのだ。そういえば、長塚節の『土』にもそんな対話があったように思う。たしかに自身の体験でも、土がもの言うのを覚えている。耕す土を持っている人が羨ましい。何かと生きる根底なるものがそこから問われているのかと思う。土を握りたいと思わせてくれる句だ。特選句「はなうたのひとのみちかけ山笑ふ」:作る側からすれば、ひとの鼻歌になるほどになった歌は冥利に尽きる。それは、人を生かす力になっている。下手をすると、人間の生き死にを実にさらりとまとめてしまった歌がある。或る書道の先生は「一」という字がもっともむつかしいと教えてくださったが、何かそれと響きあうものがある。何か、教えられるところを感じた。特選句「母ひとり父の海馬にゐて菫」:認知症になると、女の人はすぐにご主人のことを忘れてしまうが、男となると奥さんのことだけは忘れない、と聞いたことがある。実によくわかる。残すものが違うのだ。と、反省を余儀なくさせられた。以上です。♡先日、淡路放生さん復帰のメールをいただいた夜、さっそく、淡路さんが田口さんとして夢に出てきました。私が案内して、どこかの花の咲く庭園の斜面を下ってゆくのでしたが、さて、次はどこへ案内しようかと必死で思案している最中に目がさめました。今回は夢でのお付き合いでしたが、今後ともよろしくお願いします。
- 福井 明子
特選句「のどけしや釣り人横に阿呆鳥(吉田和恵)」。阿呆鳥と聞いて、直木賞作家川﨑秋子の短編「南北海鳥異聞」を思い出した。明治期その鳥を捕獲し羽毛を外国へ売っていたという。主人公弥平はひたすらアホウドリをなぶり殺し金を稼いだ。が、やがて禁漁。阿呆鳥は国の天然記念物に。「弥平が果てた地は、もう浄もなく不浄もない」と結ぶ。この句の、釣り人の横にいる阿呆鳥はゆっくりと地を歩む。その無垢な平和的な眸が、たゆたう波に溶けて点景となる。妙に目裏に残った。戦のなき地球を希求する。
- 藤田 乙女
特選句「さくら咲くまた一枚の夜が明けて」。 「1枚の夜が明けて」の表現が「さくら咲く」と重なり合ってとても美しい句だと感じました。 特選句「やり場のない怒りにも似て春の潮(佐孝石画)」。世界情勢やもろもろの社会問題など日常生活を送る中で自分の無力さを痛感したり矛盾や疑問を感じてもそのまま流されるように日々を送らざるを得なかったりすることがあります。やり場のない怒りを多々感じます。
- 銀 次
今月の誤読●「のどけしや釣り人横に阿呆鳥(吉田和恵)」。春の海。麦わら帽をかぶった男がひとり、堤防の端に腰かけ、釣り糸を垂れている。ほかにはだれもいない。いや、そうではない。人ではないが、一羽の大ぶりな鳥が男の横にうずくまるように坐っている。男はその鳥を気にするでなく、鳥のほうもただぼんやりと海を見つめているだけだ。竿はピクリともしない。やがて男は空を見上げ「いい天気だ」とつぶやいた。「そうですね」と鳥が応えた。男は驚きもせず、ただ大きなあくびをしただけだった。風もひかりも時間も、ゆっくりと流れてゆく。昼になり、男の持つ竿が小さくゆれた。男はその竿をすぐには引かず、しばらくそのゆれを楽しんでいた。やがて引き上げると小ぶりの魚が一匹、釣り糸に引っかかっていた。「釣れましたね」と鳥が言った。男は「うん」とうなずき、釣り糸から丁寧に魚をはずし海に帰した。「いいんですか?」と鳥が問う。男は「十分だ」と言い、竿を片づけはじめた。「帰るんですか?」とふたたび鳥が問うと、男は腰を上げ「ああ」と竿を肩にかついだ。鳥も立った。男が鳥に問うた。「おまえは何しにここに来たんだ?」。鳥は少し考え「あなたを釣りに」「で、釣れたかね?」「はい十分に」。男は大きく笑い、鳥も笑ったように見えた。そして鳥は空へと飛び立ち、男は背中を見せ、歩み去る。
- 新野 祐子
特選句「地に一花一顆のいのち水俣忌」。豊饒の海にチッソがたれ流しにされ、多くの無辜なる人々が苦しめられ続けてきました。水俣病が公式に確認されたのが56年5月1日であると。世界中でのあちこちに経済発展の犠牲にされる人々、生きものの自然そのものを忘れてはなりません。そんな思いにさせる句です。特選句「遠い国の争い私を蝕む春」。春なのに、わくわくとした気分にはなれません。戦争でないが、出し抜けにイランを攻撃し人々を殺傷するイスラエル、アメリカ。何て野蛮なんでしょうか。怒りが収まらない毎日です。
- 末澤 等
特選句「花満ちて躰の芯の渇きかな」。周りは明るく艶やかななか、自分だけが身体の芯から乾ききっている。そんな情景に私も時たま遭遇します。その場面を上手く表わしていると思い、採らせて頂きました。
- 石井 はな
特選句「母ひとり父の海馬にいて菫」。海馬は記憶を司る脳の部分、お父様の海馬に残るお母様は菫のような方だったのですね。海馬に大事に保存されている菫のイメージは、連れ合いに対する深く温かい愛情が伝わります。
- 薫 香
特選句「精霊が青をあつめて仁淀春」。仁淀川の青の美しさは精霊が集めたのですね。
- 滝澤 泰斗
特選句「地に一花一顆のいのち水俣忌」特選句「水俣忌晩柑の照り孤にあらず(野田信章)」。まさか、日常的に食べていた魚や貝や海老類に猛毒の水銀が含まれていたなんて・・・水俣忌が二句。高度成長期の翳を忘れずテーマに選ぶことの重要性を痛切に感じた。共鳴句「蝶の昼首里の迷路にまぎれこむ」。火事で焼失した首里城は今どうなっているかニュースであまり取り上げられなく分からないが、何度か訪れたたこともあり、出口が分からなくなった自分はまさに迷う蝶であった。掲句に触発されて・・・そういえば、首里城の「その後」が急に気になった。「薄氷やG線上にある卵」。薄氷、G線、卵・・・ダリの絵を彷彿とするような不思議な感覚。「嘘つかぬと嘘マイニチ万愚節(野口思づゑ)」。ならず者トランプの事かと思ったが、転じて、そのトランプを「世界を平和にする人」と持ち上げるタカイチSORRY・・・その内閣を支持する70%の世論・・・この世は嘘ばかり。まさにヨロズオロカナる世界住む我らもまたマイニチ、ウソか誠かを峻別させられるマイニチではある。実につまらん輩を奉っているバカバカしい世を、師は何と言って「喝」を入れるだろうか。「逃げ惑う子どもら麦の大地痩せ」。こちらは、ウクライナ。豊穣の大地の麦は、かつてワルシャワ条約機構の国々を飢えから救った。しかし、地球的規模の気候変動は「計画経済」の根底を揺るがし、やがて、崩壊を辿った。そこに今度は戦争が、飢えに、貧困に、そして、何よりも次代を担う子供に襲い掛かっている。「高楼に卑弥呼の孤愁春の月」。しばし、古代ロマンの世界に酔わせていただきました。
- 綾田 節子
特選句「蝶の昼首里の迷路にまぎれこむ」。首里城の裏あたりは迷路ですよね、若き日を、久しぶりに思い起こさせて頂きました。 特選句「奉公さん三つならべて初さくら」。大きさの違う奉公さんを思い浮かべました。 奉公さんと桜ではなく、初さくらが良く効いています。
- 菅原 春み
特選句「蟇穴を出てまた凹む 戦争」。なんとも終わりが見えない戦争。蟇蛙だって凹んでしまいますよね。共感。特選句「春おぼろ顔を隠して眠る癖」。何気ない日常を読んだところが、季語とあっています。
- 大浦ともこ
特選句「遠い国の争い私を蝕む春」。春という季語のもつ不安定で不穏な一面をうまく捉えていると思います。そして先の見えない戦争に誰もが抱いている憂いや焦燥をストレートに詠まれていて共感しました。特選句「ひさかたの赤子の軽さ花ミモザ」。なにがあろうといくつになっても赤子を抱き上げた時の幸せと愛おしさ・・そんな感情と季語の花ミモザがとても響き合っています。ふわっと暖かい気持ちになりました。
- 森本由美子
特選句「母ひとり父の海馬にいて菫」。海馬の説明のなかに<情動の発現及びそれに伴う行動、さらに短期記憶に関係し種々の感覚入力に応じて時間空間情報を認知し・・>とある。お父様の海馬のなかに一輪の菫の如く、時にはさざなみの如く、永遠に存在するお母様のシルエットに想いを馳せたのでは。心打たれる句です。
- 松本美智子
特選句「花冷えや水の神には灯をささげ」。桜の頃の寒さは寂しさが伴います。もう暖かくなってもいいのに桜も寒さに凍え一層,寂しい思いが募ります。水辺の神様への温もりや平穏を祈って灯りをともす厳かで幻想的な春の夜の風景が思い浮かびました。
- 遠藤 和代
特選句「春耕や土の饒舌問ふてみん」。畑をたがやしているのでしょうか。土にここは何を植えたらいいのか聞いて決めるのでしょうか?土と会話している作者の姿が浮かんできます。
- 野﨑 憲子
特選句「夜櫻にろくろく首が笑い出す(淡路放生)」。夜櫻は、あまりにも美しく異界を映し出す鏡のようだ。だが、この「ろくろく首」は、妖怪の「ろくろ首」とはちがう、「ろくでなし」風のニュアンスがある。戦を止められないばかりか拡げて行く人類の暗喩のようだ。人間社会への熊の逆襲も、森の奥まで開発の手を伸ばし自然界のバランスを崩した人類に責がある。櫻の花たちは目を覚ませ人類よと言っているのだ。特選句「埜野路傍蒲公英名草黄々嬉花」。「たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ(坪内稔典)の対極のような難解さにかえって惹かれる。「のの ろぼう たんぽぽ なぐさ こうこう きか」と読むのだろうか? 漢字ばかりの重い世界の中で、小さな光を掬い上げるているような健気さをこの句から感じる。 そうきたか!と感じさせてくれる二句へ・・「たんぽぽの絮ろくろく首にかな 憲子」
袋回し句会
朝寝
- 朝寝してまどろみのなか幾多の恋
- 末澤 等
- 朝寝して出き損ないの団子虫
- 岡田 奈々
- 嗚呼一度死んで人間朝寝かな
- 各務 麗至
- そうきたかつてお日さまニコニコ大朝寝
- 野﨑 憲子
- 「頑張れ」はとても言えねぇ朝寝の吾
- 藤川 宏樹
麦
- 雨あがるとんがっている青き麦
- 銀 次
- 品書きに油埃や麦酒来る
- 和緒 玲子
- 若冲の鶏や余白に大きな麦
- 和緒 玲子
- 遮断機に貨車のえんえん麦の秋
- 藤川 宏樹
- 四つ足で歩く少年麦畠
- 野﨑 憲子
- 少年の望みますぐに麦のごと
- 三好三香穂
- 麦の空ずうつと一緒にゐたいのに
- 各務 麗至
- 麦熟れて私発酵いたします
- 末澤 等
花(は葉に)
- 犯人はきっとあの桜かもしれない
- 柴田 清子
- 今だから言はせてもらう花は葉に
- 柴田 清子
- 山に谷さくらさくらの吉野かな
- 三好三香穂
- 花の雨花の嵐や花の精
- 三好三香穂
- 花は葉になってからなの夫婦なの
- 岡田 奈々
葱坊主
- あたたかき嘘をつく人ねぎ坊主
- 銀 次
- 喪の家の灯の頼りなく葱坊主
- 和緒 玲子
- 放哉や百一回忌葱坊主
- 各務 麗至
- 葱坊主君の破顔に接吻す
- 岡田 奈々
- 貴女からの恋の無茶ぶり葱坊主
- 末澤 等
- それぞれの空をみつめて葱坊主
- 野﨑 憲子
空
- 葉桜や風のリズムで空さわぐ
- 末澤 等
- 昼の月空にまあるくやわらかく
- 銀 次
- 手を拡げのどけし抱く雲と空
- 三好三香穂
- 剣山空の青さに隙間なし
- 末澤 等
- 空を抱くうしろ姿や春の風
- 各務 麗至
- 春菜野にバク転をして俺の空
- 野﨑 憲子
- 三振四死球生殺与奪春の空
- 藤川 宏樹
- カラスノヱンドウも鳶の笛も空だ
- 野﨑 憲子
【通信欄】&【句会メモ】
「昭和101年はジャズと映画と俳句のコラボ! ~あなたの俳句をジャズに~」のお誘い・・・大西 健司●第六三回現代俳句全国大会実行委員会から、「海程香川」の皆さまへお願いです。いよいよ作品募集が始まりました。そこで野﨑憲子さんに、お願いをし「海程香川」の皆さまに応募用紙をお配りさせていただきました。この大会は協会員はもとより協会員でない方もご投句いただけます。ぜひ「海程香川」の皆さまのご投句をお待ちしています。 大会担当の東海地区一丸となって頑張っています。ぜひ熱いご支援をいただきますようよろしくお願いいたします。 そして十一月二九日の大会にはぜひお出かけ下さい。「昭和百一年はジャズと映画と俳句のコラボ!」型破りな大会を目指しています。ジャズ句会は一部二部にわかれています。 第一部は表彰の一環として行います。優秀作品それぞれを即興のジャズに、通常のイベントですと一句の背景を作者が話す、演奏者はそこからイメージを広げ演奏する。そういう流れです。 懇親会での第二部は若い人たち中心に自由にやろうと考えています。楽しいものにします。ぜひみなさんでお出かけ下さい。何とぞよろしくお願いいたします。
本年の現代俳句協会全国大会のプロデュースは、本会の仲間でもある大西健司さんです。ジャズ句会に興味があり私も初参加いたします。皆様も、奮って参加し名古屋で存分に楽しみましょう!
今回は、観音寺より各務麗至さんが、美しい手作りの冊子本『島田章平 遺稿句抄』を、句会へ持ってきてくださいました。限定本なので、今回の句会へご参加の方々に配らせていただき、章平さんの義兄様にもお渡しいたしました。ありがとうございました。そして久しくお休みされていた淡路放生さんが、またご参加くださいました。とても励みになります。この句会の盛会が、兜太先生を始め、他界された方々への何よりのご供養と信じています。今後ともよろしくお願いいたします。
Posted at 2026年4月27日 午前 02:25 by noriko in 今月の作品集 | 投稿されたコメント [0]